4 / 14
Act.2-03
「そんなの心配無用です」
消極的な夏目を前に、萌恵は強気な姿勢を見せた。
「だって、全然悪いことなんてしてないじゃないですか。それに、好きになったのは私ですから、私が夏目さんを唆したことになると思いますけど?」
「唆かした、って……。自分で言うような台詞じゃないだろ……」
「そんなことはどうでもいいんです」
夏目の突っ込みをものともせず、萌恵はさらに続ける。
「とにかく、私のお願いを聴いてくれるかどうか。今はそれを知りたいんです。ダメなら諦めます。――自信ないですけど……」
そこまで言われてしまうと、夏目も折れるしかない。
夏目はミックスフライ御膳に視線を落としながら考える仕草を見せ、やがて、「分かった」と頷いた。
「確かに、『わがままを言ってくれ』と君に言ったのは俺だしね。ここで君のお願いを却下してしまったら嘘吐きになってしまう」
「それじゃ……!」
「君のお願い、叶えるよ」
夏目が言うと、萌恵はみるみるうちに表情を輝かせた。そこまで嬉しいものなのかと驚く半面、喜びも覚えた。
「嬉しい! 私、ハタチの誕生日は夏目さんと一緒に過ごしたいって思ってたんです! お酒も飲めるようになるから、一緒に飲んでみたいな、って!」
「そんなに俺と酒が飲みたいと思ったの?」
「はい!」
先ほどまでの控えめな萌恵からは信じられないほど、今の萌恵は生き生きとしている。
「夏目さん、凄くお酒が強いって話をよく耳にしてましたから。美味しい飲み方とか知ってるんじゃないかな、って。だから、教えてくれたらとっても嬉しい!」
「――強い方だとは自分でも思ってるけど、美味しい飲み方を教えられるかどうかは別だよ? とりあえず君は酒は初体験だから、初心者向けなのからいった方がいいかな?」
「何でもいいです。夏目さんが勧めてくれるなら、どんなお酒でも喜んで飲みます!」
「――いやいや、さすがに無闇に勧めたりしないから」
夏目は微苦笑を浮かべながら肩を竦めた。
「とにかく、今は目の前のメシだ。冷めないうちに食おう」
「はい!」
夏目に促され、萌恵は意気揚々とスプーンを手に取る。
熱そうにドリアを口に運んでいる萌恵をチラリと見ると、夏目も白身魚フライに齧り付いた。
(さて、来週のために飲み屋探しか……)
そんなことを考えながら、夏目はひたすら食事に専念する。
萌恵もまた、ドリアと格闘しつつ、美味しそうに噛み締めていた。
消極的な夏目を前に、萌恵は強気な姿勢を見せた。
「だって、全然悪いことなんてしてないじゃないですか。それに、好きになったのは私ですから、私が夏目さんを唆したことになると思いますけど?」
「唆かした、って……。自分で言うような台詞じゃないだろ……」
「そんなことはどうでもいいんです」
夏目の突っ込みをものともせず、萌恵はさらに続ける。
「とにかく、私のお願いを聴いてくれるかどうか。今はそれを知りたいんです。ダメなら諦めます。――自信ないですけど……」
そこまで言われてしまうと、夏目も折れるしかない。
夏目はミックスフライ御膳に視線を落としながら考える仕草を見せ、やがて、「分かった」と頷いた。
「確かに、『わがままを言ってくれ』と君に言ったのは俺だしね。ここで君のお願いを却下してしまったら嘘吐きになってしまう」
「それじゃ……!」
「君のお願い、叶えるよ」
夏目が言うと、萌恵はみるみるうちに表情を輝かせた。そこまで嬉しいものなのかと驚く半面、喜びも覚えた。
「嬉しい! 私、ハタチの誕生日は夏目さんと一緒に過ごしたいって思ってたんです! お酒も飲めるようになるから、一緒に飲んでみたいな、って!」
「そんなに俺と酒が飲みたいと思ったの?」
「はい!」
先ほどまでの控えめな萌恵からは信じられないほど、今の萌恵は生き生きとしている。
「夏目さん、凄くお酒が強いって話をよく耳にしてましたから。美味しい飲み方とか知ってるんじゃないかな、って。だから、教えてくれたらとっても嬉しい!」
「――強い方だとは自分でも思ってるけど、美味しい飲み方を教えられるかどうかは別だよ? とりあえず君は酒は初体験だから、初心者向けなのからいった方がいいかな?」
「何でもいいです。夏目さんが勧めてくれるなら、どんなお酒でも喜んで飲みます!」
「――いやいや、さすがに無闇に勧めたりしないから」
夏目は微苦笑を浮かべながら肩を竦めた。
「とにかく、今は目の前のメシだ。冷めないうちに食おう」
「はい!」
夏目に促され、萌恵は意気揚々とスプーンを手に取る。
熱そうにドリアを口に運んでいる萌恵をチラリと見ると、夏目も白身魚フライに齧り付いた。
(さて、来週のために飲み屋探しか……)
そんなことを考えながら、夏目はひたすら食事に専念する。
萌恵もまた、ドリアと格闘しつつ、美味しそうに噛み締めていた。
あなたにおすすめの小説
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
密会~合コン相手はドS社長~
日下奈緒
恋愛
デザイナーとして働く冬佳は、社長である綾斗にこっぴどくしばかれる毎日。そんな中、合コンに行った冬佳の前の席に座ったのは、誰でもない綾斗。誰かどうにかして。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
上手に騙してくださらなかった伯爵様へ
しきど
恋愛
アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。
文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。
彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。
貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。
メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。