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Act.2-03
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「そんなの心配無用です」
消極的な夏目を前に、萌恵は強気な姿勢を見せた。
「だって、全然悪いことなんてしてないじゃないですか。それに、好きになったのは私ですから、私が夏目さんを唆したことになると思いますけど?」
「唆かした、って……。自分で言うような台詞じゃないだろ……」
「そんなことはどうでもいいんです」
夏目の突っ込みをものともせず、萌恵はさらに続ける。
「とにかく、私のお願いを聴いてくれるかどうか。今はそれを知りたいんです。ダメなら諦めます。――自信ないですけど……」
そこまで言われてしまうと、夏目も折れるしかない。
夏目はミックスフライ御膳に視線を落としながら考える仕草を見せ、やがて、「分かった」と頷いた。
「確かに、『わがままを言ってくれ』と君に言ったのは俺だしね。ここで君のお願いを却下してしまったら嘘吐きになってしまう」
「それじゃ……!」
「君のお願い、叶えるよ」
夏目が言うと、萌恵はみるみるうちに表情を輝かせた。そこまで嬉しいものなのかと驚く半面、喜びも覚えた。
「嬉しい! 私、ハタチの誕生日は夏目さんと一緒に過ごしたいって思ってたんです! お酒も飲めるようになるから、一緒に飲んでみたいな、って!」
「そんなに俺と酒が飲みたいと思ったの?」
「はい!」
先ほどまでの控えめな萌恵からは信じられないほど、今の萌恵は生き生きとしている。
「夏目さん、凄くお酒が強いって話をよく耳にしてましたから。美味しい飲み方とか知ってるんじゃないかな、って。だから、教えてくれたらとっても嬉しい!」
「――強い方だとは自分でも思ってるけど、美味しい飲み方を教えられるかどうかは別だよ? とりあえず君は酒は初体験だから、初心者向けなのからいった方がいいかな?」
「何でもいいです。夏目さんが勧めてくれるなら、どんなお酒でも喜んで飲みます!」
「――いやいや、さすがに無闇に勧めたりしないから」
夏目は微苦笑を浮かべながら肩を竦めた。
「とにかく、今は目の前のメシだ。冷めないうちに食おう」
「はい!」
夏目に促され、萌恵は意気揚々とスプーンを手に取る。
熱そうにドリアを口に運んでいる萌恵をチラリと見ると、夏目も白身魚フライに齧り付いた。
(さて、来週のために飲み屋探しか……)
そんなことを考えながら、夏目はひたすら食事に専念する。
萌恵もまた、ドリアと格闘しつつ、美味しそうに噛み締めていた。
消極的な夏目を前に、萌恵は強気な姿勢を見せた。
「だって、全然悪いことなんてしてないじゃないですか。それに、好きになったのは私ですから、私が夏目さんを唆したことになると思いますけど?」
「唆かした、って……。自分で言うような台詞じゃないだろ……」
「そんなことはどうでもいいんです」
夏目の突っ込みをものともせず、萌恵はさらに続ける。
「とにかく、私のお願いを聴いてくれるかどうか。今はそれを知りたいんです。ダメなら諦めます。――自信ないですけど……」
そこまで言われてしまうと、夏目も折れるしかない。
夏目はミックスフライ御膳に視線を落としながら考える仕草を見せ、やがて、「分かった」と頷いた。
「確かに、『わがままを言ってくれ』と君に言ったのは俺だしね。ここで君のお願いを却下してしまったら嘘吐きになってしまう」
「それじゃ……!」
「君のお願い、叶えるよ」
夏目が言うと、萌恵はみるみるうちに表情を輝かせた。そこまで嬉しいものなのかと驚く半面、喜びも覚えた。
「嬉しい! 私、ハタチの誕生日は夏目さんと一緒に過ごしたいって思ってたんです! お酒も飲めるようになるから、一緒に飲んでみたいな、って!」
「そんなに俺と酒が飲みたいと思ったの?」
「はい!」
先ほどまでの控えめな萌恵からは信じられないほど、今の萌恵は生き生きとしている。
「夏目さん、凄くお酒が強いって話をよく耳にしてましたから。美味しい飲み方とか知ってるんじゃないかな、って。だから、教えてくれたらとっても嬉しい!」
「――強い方だとは自分でも思ってるけど、美味しい飲み方を教えられるかどうかは別だよ? とりあえず君は酒は初体験だから、初心者向けなのからいった方がいいかな?」
「何でもいいです。夏目さんが勧めてくれるなら、どんなお酒でも喜んで飲みます!」
「――いやいや、さすがに無闇に勧めたりしないから」
夏目は微苦笑を浮かべながら肩を竦めた。
「とにかく、今は目の前のメシだ。冷めないうちに食おう」
「はい!」
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