3 / 14
Act.2-02
しおりを挟む
「夏目さんと、夜のデートがしたいです」
カップに口を付けていた夏目は、危うくコーヒーを噴き出しそうになった。それをどうにかすんでのところで留めたものの、結局、ゲホゲホとむせてしまった。
「大丈夫、ですか?」
心配そうに顔を覗き込んでくる萌恵に、「大丈夫」と笑顔を取り繕って返す。
「ちょっと、君のお願いにビックリしただけだから。気にしないで」
夏目が言い終えたタイミングで、注文していた料理が運ばれてきた。
そこで会話は一旦中断された。
従業員は、夏目の前にミックスフライ御膳を、萌恵の前にチキンドリアとサラダを置くと、「ご注文の品は以上でよろしかったでしょうか?」と訊ねてくる。
夏目と萌恵は同時に頷いた。
「では、ごゆっくりどうぞ」
ふたりの返答を見届けてから、従業員は一礼してその場を去る。
従業員がだいぶ離れて行ってから、萌恵が、「あの」と夏目を覗ってきた。
「やっぱり、ダメですか……?」
どうやら、萌恵のお願いを却下されたと思い込んだらしい。心なしか、哀しげに顔が歪んでいる。
「いや、そんなことはないけど」
夏目はフライにソースをかけながら言った。
「ただ、夜に出歩いたりしたら君の親御さんが心配するんじゃない? 君は自宅通勤組だろ? しかも女の子だ。俺が君の親だったら、四十過ぎのオヤジと夜のデートなんて快く思わないな」
「どうしてですか?」
「どうして、って……、今言った通りだけど?」
「そんなの偏見です」
夏目の精いっぱいの配慮に対し、萌恵は真顔でキッパリと言い返す。
「だって、私はもう未成年じゃなくなるんです。確かに実家暮らしですけど、少しでも家にお金を入れてます。ちょっとずつでも貯金もしてますし、ある程度は自立しているつもりです。それなのに、どうしていちいち干渉されないといけないんですか? 恋をするのに年齢差はそんなに障害になるものですか?」
マシンガンを撃ち込むように、萌恵が夏目を容赦なく攻撃してくる。そもそも、ここでは夏目が責められる立場じゃないのだが、うっかり親になった気分で説教じみたことを口にしてしまったから、萌恵に火を点けてしまったらしい。
「君の主張は分かったよ。だからちょっと落ち着いて」
すっかり辟易してしまった夏目は、降参とばかりに両手を肩の辺りまで上げた。
「俺はただ、君のことが心配だったから例え話をしただけだ。俺は君の親御さんを説得出来るだけの力がないから……、正直、ちょっと怖いというか……」
カップに口を付けていた夏目は、危うくコーヒーを噴き出しそうになった。それをどうにかすんでのところで留めたものの、結局、ゲホゲホとむせてしまった。
「大丈夫、ですか?」
心配そうに顔を覗き込んでくる萌恵に、「大丈夫」と笑顔を取り繕って返す。
「ちょっと、君のお願いにビックリしただけだから。気にしないで」
夏目が言い終えたタイミングで、注文していた料理が運ばれてきた。
そこで会話は一旦中断された。
従業員は、夏目の前にミックスフライ御膳を、萌恵の前にチキンドリアとサラダを置くと、「ご注文の品は以上でよろしかったでしょうか?」と訊ねてくる。
夏目と萌恵は同時に頷いた。
「では、ごゆっくりどうぞ」
ふたりの返答を見届けてから、従業員は一礼してその場を去る。
従業員がだいぶ離れて行ってから、萌恵が、「あの」と夏目を覗ってきた。
「やっぱり、ダメですか……?」
どうやら、萌恵のお願いを却下されたと思い込んだらしい。心なしか、哀しげに顔が歪んでいる。
「いや、そんなことはないけど」
夏目はフライにソースをかけながら言った。
「ただ、夜に出歩いたりしたら君の親御さんが心配するんじゃない? 君は自宅通勤組だろ? しかも女の子だ。俺が君の親だったら、四十過ぎのオヤジと夜のデートなんて快く思わないな」
「どうしてですか?」
「どうして、って……、今言った通りだけど?」
「そんなの偏見です」
夏目の精いっぱいの配慮に対し、萌恵は真顔でキッパリと言い返す。
「だって、私はもう未成年じゃなくなるんです。確かに実家暮らしですけど、少しでも家にお金を入れてます。ちょっとずつでも貯金もしてますし、ある程度は自立しているつもりです。それなのに、どうしていちいち干渉されないといけないんですか? 恋をするのに年齢差はそんなに障害になるものですか?」
マシンガンを撃ち込むように、萌恵が夏目を容赦なく攻撃してくる。そもそも、ここでは夏目が責められる立場じゃないのだが、うっかり親になった気分で説教じみたことを口にしてしまったから、萌恵に火を点けてしまったらしい。
「君の主張は分かったよ。だからちょっと落ち着いて」
すっかり辟易してしまった夏目は、降参とばかりに両手を肩の辺りまで上げた。
「俺はただ、君のことが心配だったから例え話をしただけだ。俺は君の親御さんを説得出来るだけの力がないから……、正直、ちょっと怖いというか……」
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる