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仮初めの解放は青年を更なる敗北に導く
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今日一日だけ人間に戻してやる。そんな一方的な言葉と共に街へと仮初めの解放を行われた青年は、久しぶりに着用を許された衣服の感触と自由な時間を味わいながら、悔しさに染まった絶望を噛み締めていた。
自身の主に君臨した憎き男が肉体に仕込んだ残酷なナノマシンの影響下に何もかもを置かれている以上、自分の現状を誰かに伝えて助けを請う行動は取れない。隣街への脱出をナノマシンの力を用いて禁じられている以上、自分は遠くに逃げて男の手から離れようと試みることさえ叶わない。
その事実を耐えず思い知らされている青年は、男が迎えに来ると口にしていた午後十時が訪れるまで可能な限りに人間であることを楽しもうと、男から与えられた金で豪遊をしていた。
だが、幾ら金を湯水のように使っても、自らの敗北を常に再認識させる感覚は決して和らがない。自分は人間なんだ。何時か必ず今日のような一日だけの戯れではない形で元の生活へと戻るんだ。そう言い聞かせながら楽しいを追求しても、青年は嫌でも自分が元には戻れない破滅に至らされた現実を周りの誰にも伝えられぬ苦悶の中で思い知らされていく。
そうして無駄に誤魔化そうと頑張りながらとうとう午後十時を迎え思わず街を行く者達が視線を送る程の高級車へと観念の感情を抱きつつ乗り込んだ青年は、広く取られた後部座席の部分に設置されたソファーに腰掛けてくつろいでいる男に、殺したい程憎んでいた男に、恥と誇りを捨てた土下座を交えての懇願を寄せ始めた。
「○○、様……っ! 申し訳ございません、私はもう二度と不躾な態度など取ったりしません! ですから、お願いします。この愚かなペットに、快楽をお恵みくださいませ……っ!!」
かつて男が率いる組織と敵対し、気高きヒーローとして日々戦っていた青年が、最後に残っていた反抗心を自らかなぐり捨てた言葉で淫らな悦びを希求する。ナノマシンの力で男根を刺激ことはもちろん、尻穴を弄って雌の快感を手に入れることも却下されていた青年が、悪を束ねる総帥の男に飼われ始めた日から当たり前とされていた悦楽が無い状況に今日一日賑わう街で苦しみ抜いた身体を走り出した車の中で土下座させながら、自分をこんな身体にした張本人である悪の総帥に救いをねだる。
だが、冷酷な男はそのなりふり構わない願いを愉しげに嘲笑いながら、更なる生殺しの継続を意味する言葉をかつてヒーローだった青年に浴びせてしまった。
「こらこら、今日一日は人間に戻してやるって言っただろう? 君はあと二時間人間なんだからそれらしく振る舞いなさい。ほら、拠点に着くまで、君が帰るお家に着くまでしっかり人間を楽しみなさい。おつまみもお酒もあるから、私の隣で好きなだけ食べて飲みなさい」
「あ、あぁ……っ」
まだ二時間は疼きに疼いている尻穴を慰めては貰えない。自身の手で男根を摩擦し射精の至福に溺れることもさせては貰えない。
上乗せでもたらされた絶望に打ちひしがれながら、青年は男からナノマシンを通して下された命令に従って動き男の左隣へと座り酒とつまみを口に運びつつ、それらが運んでくれる美味の感覚が霞む程の恐怖と屈服を、人間としてヒーローとしての生活への帰還を諦めた心に膨らませていくのだった。
自身の主に君臨した憎き男が肉体に仕込んだ残酷なナノマシンの影響下に何もかもを置かれている以上、自分の現状を誰かに伝えて助けを請う行動は取れない。隣街への脱出をナノマシンの力を用いて禁じられている以上、自分は遠くに逃げて男の手から離れようと試みることさえ叶わない。
その事実を耐えず思い知らされている青年は、男が迎えに来ると口にしていた午後十時が訪れるまで可能な限りに人間であることを楽しもうと、男から与えられた金で豪遊をしていた。
だが、幾ら金を湯水のように使っても、自らの敗北を常に再認識させる感覚は決して和らがない。自分は人間なんだ。何時か必ず今日のような一日だけの戯れではない形で元の生活へと戻るんだ。そう言い聞かせながら楽しいを追求しても、青年は嫌でも自分が元には戻れない破滅に至らされた現実を周りの誰にも伝えられぬ苦悶の中で思い知らされていく。
そうして無駄に誤魔化そうと頑張りながらとうとう午後十時を迎え思わず街を行く者達が視線を送る程の高級車へと観念の感情を抱きつつ乗り込んだ青年は、広く取られた後部座席の部分に設置されたソファーに腰掛けてくつろいでいる男に、殺したい程憎んでいた男に、恥と誇りを捨てた土下座を交えての懇願を寄せ始めた。
「○○、様……っ! 申し訳ございません、私はもう二度と不躾な態度など取ったりしません! ですから、お願いします。この愚かなペットに、快楽をお恵みくださいませ……っ!!」
かつて男が率いる組織と敵対し、気高きヒーローとして日々戦っていた青年が、最後に残っていた反抗心を自らかなぐり捨てた言葉で淫らな悦びを希求する。ナノマシンの力で男根を刺激ことはもちろん、尻穴を弄って雌の快感を手に入れることも却下されていた青年が、悪を束ねる総帥の男に飼われ始めた日から当たり前とされていた悦楽が無い状況に今日一日賑わう街で苦しみ抜いた身体を走り出した車の中で土下座させながら、自分をこんな身体にした張本人である悪の総帥に救いをねだる。
だが、冷酷な男はそのなりふり構わない願いを愉しげに嘲笑いながら、更なる生殺しの継続を意味する言葉をかつてヒーローだった青年に浴びせてしまった。
「こらこら、今日一日は人間に戻してやるって言っただろう? 君はあと二時間人間なんだからそれらしく振る舞いなさい。ほら、拠点に着くまで、君が帰るお家に着くまでしっかり人間を楽しみなさい。おつまみもお酒もあるから、私の隣で好きなだけ食べて飲みなさい」
「あ、あぁ……っ」
まだ二時間は疼きに疼いている尻穴を慰めては貰えない。自身の手で男根を摩擦し射精の至福に溺れることもさせては貰えない。
上乗せでもたらされた絶望に打ちひしがれながら、青年は男からナノマシンを通して下された命令に従って動き男の左隣へと座り酒とつまみを口に運びつつ、それらが運んでくれる美味の感覚が霞む程の恐怖と屈服を、人間としてヒーローとしての生活への帰還を諦めた心に膨らませていくのだった。
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