BLエロ小説短編集

五月雨時雨

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黒に覆われ足掻く青年

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「うぅっ、ふっ! ぐ、ひゅっ……おぉ、あぅぅぅ……っ!!」

窓が無く、扉がある壁以外は全て白色に囲まれた部屋の中に苦しげな唸り声が聞こえている。その唸りを発しているのは、一人の青年。人間の男を商品にする非道な組織を調査する中で目障りだと判断されて罠にかけられ、まんまと敵の計画通りに捕らえられてしまった捜査員の青年だ。
待ち構えていた組織の者達に組み伏せられた青年は、助けを求める為の道具や戦う為の道具を衣服ごと一つ残らず奪われ、後ろに回された手首と靴を脱がされた足首に自らの持ち物である手錠を施されてしまった。
敵の手に落ちただけでなく、悪を捕らえる為にと所持していた手錠で自由を取り上げられ、勝ち誇る敵達の前で床に転がされた青年は自身の不甲斐無さと屈辱を嫌という程に感じさせられた。だが、組織の者達は手錠だけでは満足せず、捜査員の青年に特別製の服を与えた。それは、組織の男達が人間の男を商品へと作り変える時に用いる黒い革で出来た服。一般的な服に存在する袖などが無く、頭部に被せるマスクと結合する為の金具が首の辺りに付いており、まるで全身をケースにでもしまうかの如く黒革で包み込んで閉じ込める、拘束の事だけを考えて製造された衣服だ。

青年の体形に合わせて選ばれた拘束服は肌にほぼぴったりと吸い付き、伸縮性の無い革の性質も相まって青年に身体を曲げる事すら、拘束された手足をもがかせる事すら困難な状態に追いやっている。しかも頭部に被せられたマスクは青年の視界と鼻での呼吸を封じ、マスクの内部に突き出した突起を噛まされた青年は言葉を発せないだけでなく突起に開けられた小さな穴でしか呼吸を行えなくされていて、密閉されている拘束服の構造もあり青年は常に暑さと息苦しさに襲われ、何も見えず言えもせず、芋虫のように床の上で身をよじる事以外出来なくされていた。

「ふーぅっ! ぐ、ふっ……うぐっ、むふっ」

背中で閉じられたファスナーをどうにかして下ろそうと暴れても、当然内側からでは触れられない上にファスナーには小さな鍵も掛けられており、仰向けになってうなじ近くのファスナーを床に擦り付けても閉じきった位置から全く移動しない。大声を出して助けを求めようと考えても大声を出したくらいで助けが来るような場所に一人きりで放置されているとは思えず、それ以前に口を塞ぐ突起と制限された呼吸のせいで大声は出したくても出せない。
文字通り手も足も出せず、言葉も視界も封じられ、青年捜査員は誰が見ても、青年自身から見ても八方塞がりの絶望的な状況だ。

けれど、青年に残った捜査員の誇りが大人しく屈服する道を許さず、敵の組織の男達が去る前に口にしていた処刑を諦めて受け入れる選択肢を捨てさせ、最後の最後まで足掻く行動を取らせていた。

「ふっ、ぐぅぅ……っ! も、ほぉっ……おぅぅぅ!」

度々酸欠に陥りながら、青年は自分を包む黒革の拘束服と一緒にじたばたと身悶える。可能性は低くとも、組織の男が言っていた処刑を避けられるかも知れないならばとわずかな希望に縋り、拘束からの解放を望んで青年はもがき続ける。
しかし、青年のそんな希望はすでに砕けている。無慈悲で、残酷で、淫らな処刑はとっくに始まっているのだ。
今はまだ、青年には何の変化も起きていない。けれど、部屋の端に設置されている細いパイプから流し込まれているガスが、空気よりも重い強力な媚薬入りのガスが青年の唯一の呼吸口である小さな穴の高さまで到達したら、嫌でも変化は起き始める。
一呼吸ごとに発情を促され、裸体が革の中で淫らに火照り、抑えようの無い熱と興奮に苛まれる。
無理矢理に高められた男根を鎮めたいと願っても男根には触れず、床に擦り付けて鎮めようとすれば息苦しさで悶絶し、結果として青年は組織の者達によって商品に変えられた男達と同じように募る一方の淫欲を身をくねらせてただただ耐え、快楽への渇望で理性を叩きのめされながら甘い肉欲のみを欲しがる存在に自らの意志で陥落していくしか無い。

「うーぅっ……ふぅ、ふもぉぉ……っ!」

心と身体が跡形も無く蕩け落ち、淫猥な刺激に従順となるまで続けられる処刑と称した一方的な媚薬調教。それに自分がもう蝕まれ出している無情な事実を知らず、青年捜査員は必死になって媚薬ガスが浅く溜まった床の上で黒に覆われたその身をのたうたせていた。
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