【BL】腐れ縁の幼馴染と、キスから始まる恋もある?【幼馴染同士・隠れ執着攻×鈍感受】

彩華

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40】【番外編:Side・K】やっぱり胃袋は掴んでおいた方が良い

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40】【番外編:Side・K】やっぱり胃袋は掴んでおいた方が良い

 「遠野さん、もうそろそろ上がりそう?」

「圭介。お前、いつも定時頃に戻って来るよな」

「まぁ、仕事が出来るってことで」

自分でいうのも何だが、実際そうだ。今のご時世、出来るだけ残業をしないようにという風潮。俺たちにとっても有難い風潮だ。自分の仕事をきっちりこなしつつ、出来るだけ会社に戻るようにしているのは、葵と一緒に帰りたいから。おまけに花金で、明日から休み。俺だけじゃなく、皆休みだという気持ちで定時近くは、ソワソワした雰囲気だった。

「皆は、どうだ?」

「大丈夫です。私たちも今から帰ります」

「そうか」

「皆、有難う。じゃあ、遠野さん帰ろうか」

「「お疲れ様でした」」

殊更、山下さんの登場に俺は内心焦っていた。こうなれば、葵が口説かれる隙を与えないようにしなくては。

「……圭介?」

会社を出て、少し歩き。もうそろそろ葵と呼んでも大丈夫だろうと思っていると、葵が俺の顔を覗き見た。葵の方が少し高いのに、小首を傾げる仕草は、いつ見ても可愛い。

「ぐぅっ……!」

(不意打ち可愛い)

「大丈夫か?」

初恋を拗らせると、こうなるのかと自分を冷静に思いつつ。呆れた様子の葵に、答える。

「うん、ちょっと葵が可愛くてビックリしただけ」

「はぁ? 可愛くないだろ」

俺からしたら、葵は綺麗で可愛いんだ。

「葵。今日、うちにご飯食べに来ない? 今日唐揚げなんだけど」

「良いのか?」

パッと表情が明るくなる葵。やっぱり唐揚げが嫌いな人はいないな。

「うん。俺一人で大量に食べたら太るし」

「嬉しい。着替えたらすぐ行く」

「ははっ。楽しみにしてくれて俺も嬉しい。今日、泊る?」

「んー……最近泊まってばっかだったしな。どうするかな」

「俺は気にしないけど。ていうか、週末くらいじゃん」

「そうか?」

「うん」

「じゃあ、泊るわ」

「やった!」

(俺が料理とか頑張ってるの、葵の胃袋を掴もうとしてるからなんだけどな)

(葵は知らないだろうけど)

そんな話しをしていれば、もう俺たちが住んでいるマンション近く。これで今日はこのまま、葵は俺が独り占めだと思っていたのに。

「ん?」

葵の携帯が鳴ったのか、葵が取り出した携帯の画面を見る。そのまま呟いた名前に、浮かれていた俺の心はピクリと緊張状態になった。

「珍しい。山下さんからだ」

「山下さん?」

「ああ。丁度週末だし、どこかに飲みに行きませんかって。もう俺たち会社出てるからな。圭介、返信するから少し待っててくれ」

(葵を飲みに誘ってるって、やっぱり山下さん。葵のこと好きなんじゃないか?)

「荷物持っとくよ」

「悪い」

葵にはいつものような素振りをしながら、内心穏やかじゃない。もしだ。葵が急に、飲みに行くか? と言ったら、俺は多分行った先で不機嫌を隠せないかもしれない。子供っぽいかもしれないが、そんなの気にしてはいられない。

「……」

黙って返信を打ち終わるのを待った。

「よし、じゃあ帰るか。荷物、有難うな」

「え?」

「何だよ。驚いた顔して。山下さんには、もう会社出たって返信したし、機会なんていくらでもあるしな」

「そう……?」

葵が特に気にする様子も無いことに、少し驚いた。

(これって、俺のことを優先してくれたんだよな……?)

都合よく解釈していると分かっている。葵からしたら、一度帰って出るのが嫌だとか。そういうのもあるかもしれないけど。それでも、山下さんの誘いより、これからの時間を選んでくれたのが嬉しいわけで。

(やばい。顔がニヤけそう)

思わず唇を噛んで、誤魔化しつつ。

「葵。唐揚げ、沢山作るから」

「おぅ」

もっと葵の胃袋を掴んでおこうと思った。

(あと山下さんは、油断ならないな)

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