元黒聖女シャーロットはもう祈らない

くま

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復讐の決意をするガイア王子

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シャーロットとアドルフはその場で気絶をし、部屋で休んでいた時だった。

地震の混乱が、ようやく王都に落ち着きを取り戻し始めた頃王城から、一つの公式発表が出された。

【地震発生直後、混乱に乗じて王太子ウィリアム殿下の暗殺を企てた罪により、メアリ王妃、並びにラージル神官はその場で命を落とした】

広場に集められた民衆が、どよめく。

「王妃様が……?」

「神官様が……そんな……まさか」

だが、その翌日――教会は即座に反旗を翻した。教会だけではない、王妃側の貴族達も加わっていた。亡くなった二人の味方はとても多かったのだ。

「それは、教会への明確な濡れ衣である!」

白い法衣に身を包んだ神官たちが、王城前で声を張り上げる。

「ラージル神官は、教会に尽くした忠実なる者だぞ!?
その死を王家の都合で利用するなど、断じて許されない!」

さらに追い打ちをかけるように、彼らは続けた。

「あぁ、そうだ、ラージル神官亡き今、その意志と聖力を継ぐ者は――ただ一人」

「オフィーリア様しか、おりません!!」

その名に、民衆の視線が集まる。地震でみんなを治療していたのは、【オフィーリア】だと。

白く清らかな微笑みを浮かべる、次期聖女と噂され、
教会は、彼女を“旗印”にしようとしていた。

「王家が教会を貶めるならば、我々は我々の正義を貫くまで!」

国王陛下がそんな教会達や貴族の反発に、対応をしているその光景を、少し離れた廊下の影から、ガイア王子は見ていた。

「……ふざけるな!」

歯を食いしばり、彼は踵を返す。

「くそ!!母上が、そんなことをするはずがない!!」

国王とウィリアム王太子は、重苦しい沈黙の中にいた。

「……葬儀は、簡素に済ませる」

国王の低い声とウィリアムも、静かに頷くだけだった。

そんな二人を見たガイアは声を出した。

「……それだけ!?母上だぞ!?
あなたの妻で……俺の、俺の母親なんだぞ!」

声が震え、次第に怒りへと変わる。

「泣きもしないで!弔いも、形だけで!!
それで“終わり”なのか!?」


「ガイア……」

「兄上もだ!」

ウィリアムを睨みつける。

「母上が死んだのに、どうしてそんなに冷静でいられる!?母上はいつも優しくしてたじゃないか!!」

ウィリアムは、ゆっくりと目を伏せながらガイアに話す。

「……それはお前からみた王妃だろうね」

「‥っぐす‥もういい……!
あなたたちは、王と王太子でいればいい!」

扉を乱暴に開け、走り去る足音が、廊下に響いた。
残された二人の間に、重たい沈黙。
国王は、机に手をつき、深く息を吐く。

「……はあー、ガイアをどうするか、だな」

「もう甘い気持ちは捨てるべきですよ」

「……ウィリアム、お前、俺を殴りたいという顔してるぞ」

「そりゃ、そうですよ。亡くなった母にも悪いですが、
あなたも、母も、王妃も、あの実父だというアドルフさんも、教会の者も、全員殴りたいですね」

ウィリアムは、そう静かに容赦なく答える。

「お前に早く王位を譲らないとな、教会に牽制せねば。はあ、、、さて、、姉上の愛する人が目を覚めたのか、まずは話し合いをしないとなー」


窓の外では、教会の鐘が鳴り響いていた。

それは祈りの音ではなく、これから始まる“対立”を告げる、警鐘のようだった。

夜の礼拝堂は、ひどく静かで、揺れる蝋燭の光の中、ガイア王子は女神像の前に膝をついていた。



祈りの言葉は、もう出てこない。

母を失い、父も兄も冷たい人、自分だけが取り残された気がしていたガイア王子に柔らかな声が、背後から響く。

「……お一人ですの?」

振り返ると、そこに立っていたのはオフィーリアだった。
白い法衣に身を包み、哀しげに目を伏せている。

「無礼をお許しください。でも……ガイア王子のお顔が、あまりにもお辛そうで」

「……放っておいてくれ」

刺々しい言葉にも、彼女は微笑みを崩さなかった。
「お母上を失われたのですもの。
涙も流せないほど、深く傷ついているのだと……わかります。私も尊敬している叔父、ラージルが亡くなりました、、、しかも罪人だと言われ、、、ぐすっ‥‥」

「……オフィーリア嬢も、、大変だな」

「ええ。誰も、私のお気持ちを見ようとしないわ。お母様は今教会の運営を任せられてるみたいだけど、、
国王陛下も、ウィリアム王太子殿下も……私達を追い出そうとしてるわ」

「‥‥オフィーリア嬢が追い出される必要はない!」

オフィーリアは、そっと隣に膝をつく。

「ふふ、ありがとうございます。‥‥‥でも、本当におかしいと思いませんか?」

ガイアは、わずかに顔を上げた。

「……何がだ?」

「すべてです。地震や王妃の死。教会と王家の対立だなんて、、仲は悪かったかもしれませんが、こんな形になるだなんて、、これもシャーロット様が現れてからだもの」

ガイアの指が、ぴくりと動き、オフィーリアの話を聞く。
彼女は、女神像を見上げながら話す。

「“黒の一族”神に選ばれなかった、異端者。
存在するだけで、周囲の運命を狂わせる――魔女なんですって。叔父が私に教えてくれました。私の聖力を奪っていく、、そんな人です。
国王陛下も、ウィリアム殿下も……惑わされているのです」

オフィーリアの声は、確信に満ちていた。

「情に流され、真に守るべきものを見失っています。神様はきちんと見ていられるのです。
王国は混乱し、尊い命が失われた」


それでも、彼女は続ける。

「本来、王となるべきは――ガイア王子、あなたです」

「俺は……王になど……母上は多分そう願っていたけど、、優秀な兄上がーー」

「ガイア王子は選ばれた側ですわ」

彼女は、そっと彼の手に優しく触れた。

「真実を見る目を持つ者として。
歪められた秩序を、正す者として」

静寂の中、ガイアの心で何かが音を立てて崩れた。
――母を失った。
――父は、見てくれなかった。
――兄は、守ってくれなかった。
そして――
「……そうだ!あの黒髪の女が、現れてからだ」

低く、噛みしめるような声。
オフィーリアは、満足そうに微笑む。

「ええ。そうです」

ガイアは、ゆっくりと立ち上がり、女神像を見据えた。

「……もし、あいつがいなければ。母上は、生きていたかもしれないな。
王国は、こんなことにはならなかったかもしれない」

「ふん!、兄上が次期国王?ふざけるな、全部奪ってやる!!」

オフィーリアが、一歩下がり、満足そうな顔をする。

「ふふ、そのお心こそ、王の器です」

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