元黒聖女シャーロットはもう祈らない

くま

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気まずいお茶会と三人

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目を覚ました瞬間、がばっと身を乗り出してきたユリウスの顔が視界いっぱいに飛び込んできた。

「……姉上……っ」

「……近いわ、ユリウス」

今にも泣き出しそうな表情をした彼は、はっとして距離を取り、ひとつ深く息を整えてから椅子に腰を下ろした。

「……三日です。三日も眠り続けていたんです。地震の直後に気を失ってから……」

目の下には、うっすらと隈が浮かんでいる。
――まともに眠っていなかったのね‥。
じっと私を見つめるユリウスのその視線に含まれた不安と安堵が混ざったような感情に、どう声をかけるべきか迷った、その時だった。

【ぐきゅるる~】

静まり返った室内に、容赦なく響く音。

「…………」

「……とにかく、軽い物を用意します」

「はい、、」

即答だった。私のほうが年上なのに、相変わらず彼のほうがよほどしっかりしている。
その後、メイドや義母たちが駆けつけ、体を温める卵粥を口にしていると、ばたばたと足音を立てて飛び込んできたのは、ソラだった。

「起きたって聞いた!!」

彼の手には、不穏な色合いの液体が入ったグラス。

「……ねえ、ソラ。それは?」

「特製だ。薬草ジュース」

「……色が、沼みたいだけど」

「おう!効くから飲んでな」

有無を言わせぬ口調のソラといつもなら真っ先に止めに入るユリウスも、今日は珍しく頷いている。

「姉上……」

「飲んで」

全員の真剣な視線に、私は観念して口をつけた。

「……っ、にっが……!!!」

しばらくして体調も落ち着き始めた頃、義母が少し言いづらそうに切り出す。

「あのね、シャーロットちゃん。客人が来ているの。とても大事な……」

「客人?」

「――ウィリアム王太子殿下よ」

一瞬、空気が凍りついた。

「……お忍びでね。シャーロットちゃんのお見舞いに来てくださったの」

「…………」

胸の奥が、わずかにざわつく。
――実の兄だと知ったのは、つい最近のことだし、前前前では関わりもなかった、、。

居間へ向かう途中、廊下の奥からやけに騒がしい声が聞こえてきた。

「なあ!なんで酒をどれだけ飲んでも、お前は平気なんだよ!?」

「……早く王位をウィリアム殿下に譲れ、阿保が」

「聞いたか!?アドルフよ!カイロスは、これが王に対する態度なんだぞ!?」

扉の隙間から覗いた先に広がっていたのは、正座でぷるぷる震える黒髪の男性、アドルフさん。え、なんで、正座なの?あの二人の圧が怖いようで、下を俯いて時を過ぎるのをまっているわね、、、
腕を組み、無言で睨み続ける義父カイロスに、身振り手振りを交えて騒ぎ続ける国王陛下だった。陛下も‥‥いつも通りだわ。それにしても、、、

「……なに、これ。ビール飲んでて羨まし……いえ、違うわね」

思わず漏れた呟きのすぐ後ろに

「あ………ごきげんよう」

「うん、ごきげんよう」

振り返ると、そこにいたのは柔らかく微笑むウィリアム王太子殿下だった。その顔をみた途端に、どう接すればいいのか分からず、胸の内が妙に落ち着かない。

――気まずい。とても気まずい!



そんな気持ちのまま、実父であるアドルフ、ウィリアム王太子、そして私の三人でお茶をする流れになった。
いや、みんな気を使ってくれているのはわかるわ。でも、正直どうしたらよいか、、、

湯気の立つカップを前に、沈黙が落ちる。


先に口を開いたのは、ウィリアム王太子だった。

「元気そうでしたね」

「‥…、あの、、ウィリアム王太子、アドルフさん、、助けてくれてありがとうございます」

そう私は立ち上がり、二人に深くお礼を言うと、ずっと黙っていたアドルフさんは口を開く。


「あの僕は、、君達の父です」

「「、、え?あ、はい」」


ウィリアム王太子は複雑な顔をしていた、彼を責めたい気持ちと、それでも実父がいた喜びなのか、、


「正直…父と名乗られても実感が湧きません。僕の父は、
あの馬鹿な国王陛下一人ですから…」

「‥うん、そうだな、陛下から君の幼少期を自慢げに話しをしていのを聞いた、、二人に父と呼んで欲しいとは贅沢な事は言わない。ただ、、、君達には聖力がある。

今、教会は静かだが、いずれ対立する流れになる。いや、もうなっている……。それと、僕はもう自由になった」

「あ。あの、奴隷印は?」

「陛下とカイロス様が助けてくれた……この恩に僕は森深いところの精霊達がいる場所で、浄化をしに行こうと思う。今森だけではなく、街もまた汚れている。本来黒の一族は森達と共に住んでいたからね」

「森って、、、あの、以前私は夢で小さな光を見た事があります。あの森に似た場所で、でも違う場所です」

アドルフさんは私のほを見て微笑みかける。

「君は本当に僕にそっくりだな、黒の一族を濃く受け継いでいる。それと、、、ウィリアム殿下は……アンナそっくりだ」

そう呟いて涙を流しながら、アドルフさんは話し続けていく。

「本当はね、君達と森深いあの場所で住みたいというのが本音だ。精霊達の世界との狭間だから、人間達ははいれない聖域‥」

そう話すアドルフさんに、ウィリアム王太子は断った。

「アドルフさん、すいません……僕は、、、この国を愛してます。次期国王として離れるわけにはいきません」

「私も…以前なら飛びついていたかもしれないです。今教会がどのような動きをしてくるかわからないし、その……あ、あ、あ兄のウィリアム殿下の助けになれたら、、、いいな、と」

我ながら何を言っているのかわからず、顔を真っ赤にしていると、隣にいたウィリアム王太子は照れて笑っていた。そんな私達を見て「優しいこたちに育ってる」とまたアドルフさんは泣いていた。



教会では国から、捜索をされていたがなかなか悪事の証拠が出なく教会派と更に仲が悪くなる。


「オフィーリア様ももう少しで11歳ですね。今は王家から厳しい目はありますが、、、」

「大丈夫よ、王家といっても、みんな私の味方だわ。陛下とウィリアム王太子殿下だけ誤解されてるだけよ。みんな祈りましょう」

そう天使のように微笑むオフィーリアに周りのものは、笑顔になる。

教会の地下の壁に隠し扉がある。

ラージル神官がオフィーリアに渡した鍵を、彼女は使い部屋へはいると、ガイア王子もそこでオフィーリアをまっていた。

「またここにきてたんですか?」

「城は窮屈だし、嫌いな父上達がいる‥しかも、、、あの魔女が王族の血筋だと!?発表するらしい、俺はどうなるんだ!腹が立ってしょうがない!」

そう苛々するガイア王子に、オフィーリアは無視をして
沢山の聖力がこもっている石が山ほどあるのを数えていた。
ガイア王子の癇癪に慣れたのか、オフィーリアは愚痴を聞き自分の、屋敷へ足を運ぶ。

屋敷の奥に住んでいるある人物に会いにきていた。

「アルタス、いる?」

オフィーリアに似たピンク色の髪の少年は体中、あざだらけだった。オフィーリアを見てニッコリと微笑む。

「オフィーリア、外の世界はどう?」

「……汚い場所よ」

そうオフィーリアは、そっと少年の肩に寄りかかり眠っていった。







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