元黒聖女シャーロットはもう祈らない

くま

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好きの気持ち

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深夜の密談から数日後――

フィナンシェ家の屋敷は、これまでにないほどの賑わいに包まれていた。

「おめでとうございます、奥様!」

「お身体を大切に……!」

執事や侍女たちの弾んだ声と厨房からは甘い香りが漂い、庭師ですらどこか浮き足立っている。

その理由はただひとつだった。
――お義母様に、新たな命が宿ったのだ。前々世では、ユリウスひとりだけだった。

だからこそ、、、私は知っているはずの未来が、確実に変わっているのだと痛感する。

嬉しいはずなのに、胸の奥に、じわりと広がるのは――不安だった。

もし、また何かあれば?フィナンシェ家に不幸が訪れたら、、、。


祝福の空気に包まれながら、私だけがどこか取り残されたようだった。嬉しいはずなのに、、失うことが、怖い。
大切なものが増えるほど、守りきれなかったときの痛みを想像してしまう。

「……また、そんな顔をしていますね」

低く、落ち着いた声、振り返れば、銀髪が揺れた。
ユリウスだった。

紫の瞳が、まっすぐに私を射抜く。

「どんな顔かしら」

「‥‥泣くのを我慢している顔です」

即答だった。

「私、泣いてなんかいないわよ?」

「そうですか」

淡々と返すくせに、彼は私の隣に並び、甘いチョコの匂いをするユリウスは離れなかった。
ただ、そこに立ち、それだけで、胸が少し軽くなるのだから不思議だわ。
 
「……姉上は」

ユリウスが静かに言う。

「昔から、無理をしていますね」

「してないわよ」

「しています」

‥‥また即答。思わず睨むと、彼は微動だにしない。

「何か達成した時や、病院ができたとき、皆が喜んでいる時ほど、姉上は静かになる」

胸が、ひくりと震えた。どうしてこの人は、こんなところばかり見ているのだろう。
 
「……嬉しいわよ。ただ、、その、、」

言葉が続かない。
ユリウスは急かさない。
ただ、黙って待っている。
 
「大切なものが増えると、怖くなるの」

ぽつりと零れた本音。

「守りきれなかったらどうしようって」

風が、回廊を吹き抜ける。
しばしの沈黙のあと、ユリウスはゆっくりと口を開いた。

「なら、私が守ります」

「……え?」

「母上も、父上も、生まれてくる子も‥」

そして、ほんのわずか間を置いて私を見つめて、ユリウスはまた話す。

「姉上も」

心臓が跳ねた。胸の奥が、熱くなる、、。変な感じだわ。
前は怖かった。
無愛想で、何を考えているのか分からなくて。
でも今は違う、この人は不器用なだけだったかもしれない。本当は誰よりも家族を思い、己の信念を貫いていただけだわ。

言葉が少ない代わりに、覚悟が深いというか‥‥なんだか、、
 
「……ずるいわね」

「‥何がです?」

「そんな真っ直ぐなこと言われたら、弱くなれないじゃない」

「弱くていいと思いますよ。私の前では」


息が止まった。
 
ユリウスはそっと、自分の外套を私の肩にかける。

「冷えています」

「……あ、ありがとう」

指先がかすかに触れただけなのに、鼓動がうるさい。
どうしてだろう。
こんなにも、安心する。隣に立つだけで。
何も特別なことをしていないのに。
 
そっか、気づいてしまった。

私は――
この人のそばにいたいのね。

 
「ユリウス」

「はい」

「……少しだけ、ここにいて」

ほんの一瞬、彼の目が柔らぐ。

「はい」
 
回廊に並んで立つ。祝福のざわめきが遠くから聞こえる。
その中で、私はそっと自分の胸に手を当てた。



はっきりと分かる。これは家族への情ではない。
 
――好きなんだわ。
 
口には出せない。でも、確かに芽生えた想いが、静かに胸の奥で息づいていた。
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感想 11

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みんなの感想(11件)

zeze
2026.01.24 zeze

無料は…他の病人やらも来ますがな…

解除
hiyo
2026.01.22 hiyo

続きが気になります、お待ちしています。
素敵な物語を読ませて頂いて有難うございます。

解除
babochan
2026.01.20 babochan

前世で罠に嵌められたと言うのに、警戒をする程度(・。・) 何も起こらないから気のせいかも?(・。・)

黒髪と言う理由で皆から距離を置かれていて、オフィーリアは白の聖女として大人気。
前世と同じ状況なのに、前世よりマシで安心をしているの(・。・)

相手側にスパイを送り込むとか、黒色のイメージアップをするとか、やる事はいっぱいあると思います。

学園に行って、前世と同じ状況になって、その時に「まさか!?」とか言われても、読者からしたら「そうでしょうね〜」と言う気持ちなので、シャーロットにはもう少し頑張って欲しいです。

解除

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