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1巻
1-3
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✿親子クッキング!
「レピドライト……息子と娘達は……何が好きだろうか」
その日。ピーター国王に話しかけられたレピドライトは、バサバサと資料を落として口を開ける。更に咽せて国王の顔を二度見した。
「ゲホゲホ! えーと……それはどういうことでしょうか?」
「…………ふむ。この前、他国の王達と子供の話をした時に、彼らが自分の子供を自慢してきたのだ。一緒にお菓子作りをしたと」
「おや、羨ましかったのですか?」
ピーター国王は書類を机に置き溜め息をついた後、少し首を傾げながら宰相であるレピドライトに尋ねる。
「…………私は……父として失格なのだろうか?」
「え? 当たり前ですよ? 何を今更言ってるのですか。散々、子供達との交流を避けて仕事ばかりしておいて。え、何ですか、そのショックの顔」
「………………キッパリ言うのだな」
「今のは友人として注意しただけですよ。まあ……最近の貴方は少し変わられたかもしれませんね。そうですねえ……一番貴方が話し合わなきゃいけないのは、ガーネット王子ではありませんか? 王子は貴方に対して冷めております。ハウライト王子は、貴方と色々と話したそうですし。エメラルド姫様は、可愛らしいですね! 天使ですね!」
「……ふむ……なるほど」
――次の日。私は今、寝起きにドッキリなのかというくらいビックリしていた。
パパに呼ばれて部屋へ入ったら、何故かエプロン姿のパパ……
え? ごめん、本当どうしたの? 頭おかしくなった!? 後ろにいるレピさんは大爆笑しているし、私も正直笑いたい! 笑いたいよ!
「えへへ! パパ! エプロンすがた、わら……とてもすてき!」
すると、あの無表情だったパパが少しだけ笑った!! 笑いながら私の頭を撫でる! 貴重だね! エプロン姿もだけど!
コンコン。
「父上、お呼びでしょう……」
「あ、ハウアイト兄たま」
ちょうど部屋に来たハウライト兄様も、案の定固まっている。うん、汗を垂らしているね。何て言えば良いか迷っているわ!
「ち、父上の……その……ピンク色のエプロン、お似合いです」
コクンと頷くパパ。え、それ、気に入ったわけ? そして更にレピさん大爆笑。
そこへ、再びノックの音がする。
コンコン。
「失礼しま………………」
「ガーネ兄たまっ!」
ガーネット兄様はフリーズしている、しかも無表情のまま。……あ、少し引いている顔だわ。
そんな状況にもかかわらず、パパは私を抱っこして、真剣な眼差しで私達を見つめてから歩き始める。
「さあ…………作るぞ」
《え? 何を?》
――そう三人の子供達の心の声が揃った瞬間だった。
私達は王宮のキッチンへ向かった。
どうやらクッキー作りをしようとしているみたい! パパからそんなお誘いがあるなんて凄い! しかも、親子揃ってエプロン姿で……三人共イケメンすぎる! ピンク色のエプロン姿だけどね!
「エメうれしい! みんなでクッキー!」
「……エメラルドはまだ小さいから、ここに大人しく座れ」
「あいっ!」
ハウライト兄様は何だか嬉しそー、パパと交流するのがとても楽しいんだね!
それにしても流石ヒーローね、エプロン姿も輝いているわ! ガーネット兄様は…………明らかに不機嫌!! ピンク色のエプロンを何度も見ては舌打ちしている。可愛らしい姿だから大丈夫よ!
パパは小麦粉を取り出して丸々とボウルに入れた。
「あとは砂糖だな。ガーネット砂糖を入れてくれ」
ガーネット兄様は無言で砂糖を取り出し……いや、それ塩じゃないかな!?
「ガーネット、それは塩だよ。砂糖はそっちで……」
おぉ! ナイスフォロー! ハウライト兄様!
ガーネット兄様がハウライト兄様を睨んでいる。
「次は卵だな」
いや! パパ!? 卵を殻ごと入れてどうするの!?
何このハラハラする親子クッキング!!
「あ、あの……父上……卵は割ってからでないと」
いやもう完全にハウライト兄様しかクッキー作れない感じじゃないかな!? 完璧にこなすハウライト兄様に闘争心燃やしてムキになってるガーネット兄様を止めて!! 形なんて丸でいいんだよ!? 職人目指してる感じよ! パパは何で魚をもってきたああ!! え? 大丈夫!?
「えと……エメもてちゅだいますかー?」
ガーネット兄様は私の頭を撫でる。
「………………大丈夫だ。楽しみにしてろ」
いや、凄い不安だよ!
「あれ? かまどが壊れてます」
ハウライト兄様がかまどを準備しようとしていたが、何やら壊れていて使えないらしい。パパは少し考えこんだ。
「ふむ……ならば魔力で焼くか」
「「……え?」」
ガーネット兄様とハウライト兄様がそう声を出した瞬間、パパはクッキー生地めがけて炎を出した。……うん、とても強い炎をね。
キッチンの半分が真っ黒状態……レピさんや兄様達、パパも、炎がかからないよう保護魔法をかけてくれたみたいで私は大丈夫だった。
いや、それよりも何故かパパが誇らしげな顔をしてる。
「……お前達と作ったクッキーだ」
涼しげな顔で言うが、約四枚しかクッキーが残されなかったのを、出来たというべきか? ともかく、私達に一枚ずつ渡してくれた。ハウライト兄様は今まで堪えていたのか笑い出す。
「ぷっ……もう駄目ですっ……父上はクッキー作りには向いてないかと思います」
頬を赤らめつつも嬉しそうにクッキーを食べるハウライト兄様。私も恐る恐る食べた。
「はわ! おいちぃ!! ガーネ兄たま! おいちいよ!」
「……別に私はいらなー」
「ガーネ兄たま! はい! あーんっ」
「………………今回だけだぞ」
少し頬を赤くして照れながらもクッキーを食べてくれたガーネット兄様は、やっぱり可愛い!
その後、乳母のアンがやってきて、「王はキッチン出禁!!」と言われていた。
でも…………私からじゃなくてパパから誘ってくれて何か作るって嬉しいね!!
「へへ、エメ、パパ達がちゅくってくれたクッキーすきよ」
その後、少しだけパパはまた笑いかけてくれ、ハウライト兄様も嬉しそうに笑った。ガーネット兄様も少しだけ口元が緩んでいる。
うん、何だかこの瞬間が幸せだなあと感じた。
✿悪役配下と友達になりました
あれから数日後。今日はとても天気が良くて気持ちが良いので、私はお散歩中である。
ガーネット兄様やハウライト兄様は忙しいようで、パパも相変わらず仕事人間。でもまあ、王様だしね! なんでも最近盗賊が出たり子供達の人身売買がされていたりと事件が多いみたい。これって、もしかしてもしかして、私が事件に巻き込まれる予兆じゃないよね?
「あはははっ、まちゃかね! そんなちゅごうの良い、てんかいないないない! マシュマロたべておちつこ」
モグモグと大好きなマシュマロを食べていると、少し古ぼけた塔を見つけた。
「アン、ここはどんなとこなのー?」
後ろに控えていたアンに聞いてみる。
「あぁ、ここは魔術師様達の研究場所ですよ。さあ冷えてきましたので帰りましょう」
この国の繁栄を願い、力がもっと強くなるよう研究している者達の塔とか何とからしい。
「ふぅーん……」
チラッと窓側を見ると、顔の片方だけ包帯をしている黒髪で瞳の色が紫の小さな男の子と目が合った。
わわ、綺麗な子。兄様達並に綺麗だなあー。なんか見たことあるような。
「アン、男の子がいる!」
「あら、あの子は確かモリオン家の養子に入ったばかりのブラッドストーン様ですわね」
「ブリャットスチョーン! モモモリオン家!!」
アンの言葉に私は一気に青ざめる。何故なら、モリオン家の養子であるブラッドストーンといえば、髪が黒く瞳は紫色のそれは妖艶な姿であり、小説ではヒーローであるハウライトの次に人気だった人物! 魔力がとてつもなく強く、そして……ガーネットの闇の力に惹かれて配下となる人物だ。
《私の下で働き、私のために死ね》
《ガーネット王子のご命令であるのならば喜んで》
彼のガーネットへの忠誠心に腐女子達が騒いでいたわ。カップリングまでされてたっけなあ。
そのブラッドストーンはガーネット王子のためにハウライト王子の命を何度も狙い、最後には……ヒーローであるハウライトに殺される人だ!!
「…………これはちょっと……にゃんとか……しないと!」
ようやく最近家族の時間が増えてきたのに、彼が近づくことで、ガーネット兄様を破滅の王にされたくないない! いや、変な目でガーネット兄様に近づかないでほしい! あとハウライト兄様の命とかも狙わないでほしい!
よし! ここはガツンと私がマシュマロ攻撃してやるわ!
私は一人になれる時間まで待ち、コソッと部屋を抜け出して、塔に向かう。すると、何だか怖い顔のおじさんがブラッドストーンと思われる子の腕を掴みながら顔を叩いていた!
「この愚か者めが! これしきのことで何も力を出せなくなるとは! くずが!」
怖いおじさんは鞭を取り出して数回ふるう。
え、これって……虐待…………だよね? ちょっぴり怖い……いや、かなり怖いけど……これは駄目だ!
私は咄嗟に走り、前に出た。
「こっ! こあー! だめ! マシュマロこうげき! てい!」
沢山あったマシュマロを怖いおじさんに投げつける。おじさんはジロッとこちらを睨んだが、私が誰だが気づいたようで先程の怖い表情から一変して笑顔で私に挨拶をしてきた。
「おやおや、お会いできて光栄です。エメラルド姫様」
「お、おぢたん! バシバシしたらこの子痛いよ!?」
「い、いや、これはしつけでしてね」
「にゃら、あたちもおぢたんを、しちゅけするから! マシュマロこうげき! はっしん! てい!!」
再びマシュマロをおじさんに投げつける。おじさんは少し困った顔をしているけど、虐待だからね! 許せないよ!
「わ、私の義理の息子ブラッドを気に入ったようですな。ブラッド、今日はもういい。姫様の相手をしてやれ」
「かしこまりました」
おじさんはそそくさと立ち去り、ブラッドストーンがくるりと私のほうへ振り向く。傷だらけの包帯姿が生々しい。
痛そうだよ……泣くかな? 泣いちゃうよね。手当てしたほうが良いかなあ。
「ふぅ。お前さ、凄いな」
「へ?」
「あの阿呆にマシュマロって!」
彼はお腹を押さえて笑い出した。
えーと、原作のブラッドストーンってクールで忠実な感じなのだけど……今笑っている彼は普通の少年だ。兄様達より一つ下だった気がする?
「あ、姫様なんだっけ。失礼……助けていただきありがとうございます」
そして急にかしこまり、私の手の甲にチュッとキスをしてお礼をするブラッドストーン。
こやつも、やはり美形キャラ故、女子に人気なんだよなあ……。まだ小さいから今のうちから仲良くすれば、闇の力に魅了されず真っ当な子になるかも!
「あたち……エメラルド! あとね、エメの前でけいごいらないよー」
私がそう言うと、キョトンとしたブラッドストーンはすぐに笑ってくれた。
「ははっ、了解! 俺のことはブラッドって呼んでくれな」
「あいっ! とりあえずマシュマロたべゆ?」
何はともあれ、悪役配下であるブラッドと、とりあえずお友達になりました!!
「――エメ、お前この本も全部読んだのか?」
「うん! おちゅちゅめあるよーこんどかすねー」
「お、助かる。ありがとな」
あの日以来、原作では悪役配下であるブラッドストーン・モリオンとよく会うようになった。
あの意地悪な義理の父親であるモリオン家当主からの虐待をなるべく避けたいし、真っ当な少年になってほしいからね! いい子みたいだし!
「エメラルド……?」
二人で遊んでいるところに声をかけられ、振り向くと、ハウライト兄様が立っている。ハウライト兄様はチラッとブラッドを見て笑顔になった。
「……君は誰かな」
え、何だろ? ハウライト兄様、目が笑っていない気がする。
あ、あれかい!? ヒーローは将来の自分の敵だと察したのかな!? まだ悪役じゃないよ!? ハウライト兄様! だ、駄目よ! 殺しちゃ!
更に少し離れている先にはガーネット兄様が歩いていて、こちらに気づき、向かってきた!
え? 向かってきた!? ハウライト兄様とあまり顔を合わせたくないとか昨日言っていたのに。
「ハッ!!」
私は思わずブラッドを見る。
ガーネット兄様と出会ったらあれかな!? ガーネット兄様の魅力に気づいてしまい、《ガーネット王子に忠誠を》とか何とか、配下になろうとするのでは……?
ヤバイ! 汗ダラダラになってきた。二人共、悪の道へ走らないよう、もう寝ている隙にお口にマシュマロを入れようかな。
「これは国の若き栄光、ガーネット王子とハウライト王子。初めてお会いいたします。〝私〟はブラッドストーン・モリオンです」
「へ……?」
ブラッド君よ、君は二重人格か何かかい? なんちゅー切り替えの早さよ?
ボケーとしている私をブラッドがクスッと笑う。
何と言うか……八歳、九歳は基本まだ虫を追いかけて鼻水を垂らし、ひゃほーい! のはずなのに……。今目の前にいる少年達は何者よ! しかも美形ショタ三人衆だわ!
「…………モリオン家……あぁ……あの狸親父のとこか」
「なるほどね、僕もモリオン家のことは聞いてるけど」
悪い顔をしているガーネット兄様と、笑顔のハウライト兄様。いやだから目が笑ってないよ。そう思うのは私だけかな……この状況、心臓に悪い! 駄目だ、マシュマロ食べて落ちつこう。いや、胃がもたれてきたかも。食べすぎかな。
「……お前は私達に忠誠心があるのか」
「っぶはっ!! ゲホゲホ!!」
私はガーネット兄様が原作の台詞を言っていることに驚いてしまい、マシュマロを喉に詰まらせる。咳こんでいると、ハウライト兄様が「エメラルド大丈夫かい?」と背中をさすってくれた。
ありがとーハウライト兄様よ。それにしても、うぉーい! ガーネット兄様よ! ブラッドに、そ、それ聞くの!? 悪の道には走らないでよ!?
ガーネット兄様とブラッドは見つめ合っちゃってるうぅぅぅ!? まだ二人が会うのは当分先だったのに、どうなるの!? 対策を、対策を立てねば!! 仲良し作戦を!! み、み、みんな、落ちつこう!
「……忠誠心……ですか」
「そうだ。お前はモリオン家の者だろう。我ら王家に対する忠誠心はあるのかを聞いている」
ブラッドはチラッと私を見てクスッと笑った。
どうして笑ったの!? 何とかしてみんな仲良く! 仲良くせねばならない!
「そうですね。敢えて言うならば、小さなお姫様への忠誠心はありますよ。お守りしたいと思っています」
「………………ふん、胡散臭い奴だな」
「おそばにいても?」
「ブラッド君だっけ、君まだ僕達ほど力が強くないよね? エメラルドのそばにいて良いのは彼女を守れる強い者じゃないとー」
「あいっ! よち! みんな! しゅーごー! エメのとこにしゅーごー!」
「「「………………」」」
私が手招きすると、三人の少年は黙ってこちらへ集まった。
へへ、ガーネット兄様は何やかんや言って、私のわがままにも付き合ってくれる優しいお兄ちゃんなんだよ!
これはね、兄弟仲良し作戦でもあるし、悪の道には走らず、ヒーローとも仲良く! みんな仲良く作戦よ!
「エメとままごとしましょ! そうちましょ!」
「…………では、私はしつれ――」
「ガーネ兄たまは、エメとままごとちらい?」
はい! 逃がさんよ! ガーネット兄様よ!
私はニッコリ微笑んで、みんな仲良く遊ぼうと宣言する。
どうにかままごとを始め、無事、少しは親睦を深められたかな?
ガーネット兄様はずっと固まっていた。一応台詞が少ない役にしたんだけどなあ。
――その頃、少し遠く離れていたところでピーター国王は、ままごとをしている子供達の様子をジッと見ていた。
そばにいたレピドライトがそんな国王の様子を見て呆れる。
「おや、何羨ましそうにしてるんですか! 仕事してください、仕事を!」
そうつっこんでたのは、誰も知らない。
✿お披露目パーティーで家族仲良しアピール!
今日のお城は何だか慌ただしかった。
私はまだ眠い。どうしようもなく眠い。
ふふふ、大好きなマシュマロのベッドにマシュマロだらけの素敵な夢……。あぁ、マシュマロよ、どうしてマシュマロなんだい?
「さあさあさあ! エメラルド姫様! 今日はお忙しいですよ!」
突然、誰かがベッドの布団をガバッと持ち、半分寝ていた私を起こした。
「ふぁ!? なんで? エメはね、マシュマロの夢みてたのに!」
クスクス笑うメイド達と乳母のアンは何故かハリきっている。
「今日はエメラルド姫様のお披露目パーティーですよ」
周りを見渡すと、メイド達は準備でパタパタと忙しそうにしていた。
お披露目パーティーかあ。あれ、公の場って初めてじゃないかな?
「さあ! まずはお風呂に行って身を清め、おめかしですわ!」
「ドレスの靴はどこ!?」
「ティアラは!?」
「あぁ! もう! 薔薇の飾りが見つからないわよっ!? あとクリームも! 早く持ってきてえええ!」
…………女の子ってオシャレする生き物だっていうのは私にもわかるわ。でも、ここは今、戦場のよう。
「アン、あたち……マシュマロたべ――」
「今日の主人公はエメラルド姫様ですからね! ふふ、良い殿方と出会えるかもしれませんわ」
「えと、マシュマロ……」
「エメラルド姫様にはまだ婚約者など早いですわ」
「でも男の子より女の子のほうが婚約者を早く決めるのがこの国の習わしだし。やはり候補としては宰相のレピドライト・ペリドット様のお子様でしょうか。とても優秀なご子息らしいわ。ハウライト王子様のご友人でもありますから、婚約者として申し分ないわ!」
「エメね、マシュマロ……」
「ふふ、でも王子様達が許さなそうよね。あ、姫様動かないでください」
「……エメ、マシュマロ……」
「あら、私はモリオン家のご養子が気になりますわ。モリオン家は家柄もよし! なんでもハウライト王子やガーネット王子並に優れた魔力をお持ちで見た目も可愛らしく、将来が期待できますわね! 最近、姫様とよくご一緒におられますし、お似合いですもの!」
そんなことよりマーシューマーロォォォォォォォォォォォ!!
数時間の地獄を、私はなんとか耐えた。メイド達がキラキラした眼差しで褒めてくれる。
いや、みんな褒めすぎよ。
「エメラルド姫様、可愛らしい!」
「天使だわ!」
「最高ですわ! みんなメロメロで間違いなしです!」
褒めてくれるなら、マシュマロ一つで良いから食べさせてほしいよ。
チラッと全身鏡を見るとそこには、可愛らしい白いレースのドレスとピンクの薔薇の飾りリボンを身につけている薄い茶色の髪の毛で白い肌の……私ね!
私はモブ以下だから、あんまり目立つ顔立ちではないと思うけどなあー。パパ似でないことは確かだね。
それにしてもドレス凄いなあ。日本なら、コスプレだと言われそう。でも、へへ、今は子供だし結構似合ってるかもしれないわね!
「さあ、姫様準備が整いましたよ。国王様と王子様達が待っておりますわ」
そう言ってつれていかれたパーティーホール前の大きな扉前に、パパとガーネット兄様、ハウライト兄様が待ってくれていた。周りにいた騎士達はパパ達が並んで待っていることに驚きを隠せていないみたい。
「レピドライト……息子と娘達は……何が好きだろうか」
その日。ピーター国王に話しかけられたレピドライトは、バサバサと資料を落として口を開ける。更に咽せて国王の顔を二度見した。
「ゲホゲホ! えーと……それはどういうことでしょうか?」
「…………ふむ。この前、他国の王達と子供の話をした時に、彼らが自分の子供を自慢してきたのだ。一緒にお菓子作りをしたと」
「おや、羨ましかったのですか?」
ピーター国王は書類を机に置き溜め息をついた後、少し首を傾げながら宰相であるレピドライトに尋ねる。
「…………私は……父として失格なのだろうか?」
「え? 当たり前ですよ? 何を今更言ってるのですか。散々、子供達との交流を避けて仕事ばかりしておいて。え、何ですか、そのショックの顔」
「………………キッパリ言うのだな」
「今のは友人として注意しただけですよ。まあ……最近の貴方は少し変わられたかもしれませんね。そうですねえ……一番貴方が話し合わなきゃいけないのは、ガーネット王子ではありませんか? 王子は貴方に対して冷めております。ハウライト王子は、貴方と色々と話したそうですし。エメラルド姫様は、可愛らしいですね! 天使ですね!」
「……ふむ……なるほど」
――次の日。私は今、寝起きにドッキリなのかというくらいビックリしていた。
パパに呼ばれて部屋へ入ったら、何故かエプロン姿のパパ……
え? ごめん、本当どうしたの? 頭おかしくなった!? 後ろにいるレピさんは大爆笑しているし、私も正直笑いたい! 笑いたいよ!
「えへへ! パパ! エプロンすがた、わら……とてもすてき!」
すると、あの無表情だったパパが少しだけ笑った!! 笑いながら私の頭を撫でる! 貴重だね! エプロン姿もだけど!
コンコン。
「父上、お呼びでしょう……」
「あ、ハウアイト兄たま」
ちょうど部屋に来たハウライト兄様も、案の定固まっている。うん、汗を垂らしているね。何て言えば良いか迷っているわ!
「ち、父上の……その……ピンク色のエプロン、お似合いです」
コクンと頷くパパ。え、それ、気に入ったわけ? そして更にレピさん大爆笑。
そこへ、再びノックの音がする。
コンコン。
「失礼しま………………」
「ガーネ兄たまっ!」
ガーネット兄様はフリーズしている、しかも無表情のまま。……あ、少し引いている顔だわ。
そんな状況にもかかわらず、パパは私を抱っこして、真剣な眼差しで私達を見つめてから歩き始める。
「さあ…………作るぞ」
《え? 何を?》
――そう三人の子供達の心の声が揃った瞬間だった。
私達は王宮のキッチンへ向かった。
どうやらクッキー作りをしようとしているみたい! パパからそんなお誘いがあるなんて凄い! しかも、親子揃ってエプロン姿で……三人共イケメンすぎる! ピンク色のエプロン姿だけどね!
「エメうれしい! みんなでクッキー!」
「……エメラルドはまだ小さいから、ここに大人しく座れ」
「あいっ!」
ハウライト兄様は何だか嬉しそー、パパと交流するのがとても楽しいんだね!
それにしても流石ヒーローね、エプロン姿も輝いているわ! ガーネット兄様は…………明らかに不機嫌!! ピンク色のエプロンを何度も見ては舌打ちしている。可愛らしい姿だから大丈夫よ!
パパは小麦粉を取り出して丸々とボウルに入れた。
「あとは砂糖だな。ガーネット砂糖を入れてくれ」
ガーネット兄様は無言で砂糖を取り出し……いや、それ塩じゃないかな!?
「ガーネット、それは塩だよ。砂糖はそっちで……」
おぉ! ナイスフォロー! ハウライト兄様!
ガーネット兄様がハウライト兄様を睨んでいる。
「次は卵だな」
いや! パパ!? 卵を殻ごと入れてどうするの!?
何このハラハラする親子クッキング!!
「あ、あの……父上……卵は割ってからでないと」
いやもう完全にハウライト兄様しかクッキー作れない感じじゃないかな!? 完璧にこなすハウライト兄様に闘争心燃やしてムキになってるガーネット兄様を止めて!! 形なんて丸でいいんだよ!? 職人目指してる感じよ! パパは何で魚をもってきたああ!! え? 大丈夫!?
「えと……エメもてちゅだいますかー?」
ガーネット兄様は私の頭を撫でる。
「………………大丈夫だ。楽しみにしてろ」
いや、凄い不安だよ!
「あれ? かまどが壊れてます」
ハウライト兄様がかまどを準備しようとしていたが、何やら壊れていて使えないらしい。パパは少し考えこんだ。
「ふむ……ならば魔力で焼くか」
「「……え?」」
ガーネット兄様とハウライト兄様がそう声を出した瞬間、パパはクッキー生地めがけて炎を出した。……うん、とても強い炎をね。
キッチンの半分が真っ黒状態……レピさんや兄様達、パパも、炎がかからないよう保護魔法をかけてくれたみたいで私は大丈夫だった。
いや、それよりも何故かパパが誇らしげな顔をしてる。
「……お前達と作ったクッキーだ」
涼しげな顔で言うが、約四枚しかクッキーが残されなかったのを、出来たというべきか? ともかく、私達に一枚ずつ渡してくれた。ハウライト兄様は今まで堪えていたのか笑い出す。
「ぷっ……もう駄目ですっ……父上はクッキー作りには向いてないかと思います」
頬を赤らめつつも嬉しそうにクッキーを食べるハウライト兄様。私も恐る恐る食べた。
「はわ! おいちぃ!! ガーネ兄たま! おいちいよ!」
「……別に私はいらなー」
「ガーネ兄たま! はい! あーんっ」
「………………今回だけだぞ」
少し頬を赤くして照れながらもクッキーを食べてくれたガーネット兄様は、やっぱり可愛い!
その後、乳母のアンがやってきて、「王はキッチン出禁!!」と言われていた。
でも…………私からじゃなくてパパから誘ってくれて何か作るって嬉しいね!!
「へへ、エメ、パパ達がちゅくってくれたクッキーすきよ」
その後、少しだけパパはまた笑いかけてくれ、ハウライト兄様も嬉しそうに笑った。ガーネット兄様も少しだけ口元が緩んでいる。
うん、何だかこの瞬間が幸せだなあと感じた。
✿悪役配下と友達になりました
あれから数日後。今日はとても天気が良くて気持ちが良いので、私はお散歩中である。
ガーネット兄様やハウライト兄様は忙しいようで、パパも相変わらず仕事人間。でもまあ、王様だしね! なんでも最近盗賊が出たり子供達の人身売買がされていたりと事件が多いみたい。これって、もしかしてもしかして、私が事件に巻き込まれる予兆じゃないよね?
「あはははっ、まちゃかね! そんなちゅごうの良い、てんかいないないない! マシュマロたべておちつこ」
モグモグと大好きなマシュマロを食べていると、少し古ぼけた塔を見つけた。
「アン、ここはどんなとこなのー?」
後ろに控えていたアンに聞いてみる。
「あぁ、ここは魔術師様達の研究場所ですよ。さあ冷えてきましたので帰りましょう」
この国の繁栄を願い、力がもっと強くなるよう研究している者達の塔とか何とからしい。
「ふぅーん……」
チラッと窓側を見ると、顔の片方だけ包帯をしている黒髪で瞳の色が紫の小さな男の子と目が合った。
わわ、綺麗な子。兄様達並に綺麗だなあー。なんか見たことあるような。
「アン、男の子がいる!」
「あら、あの子は確かモリオン家の養子に入ったばかりのブラッドストーン様ですわね」
「ブリャットスチョーン! モモモリオン家!!」
アンの言葉に私は一気に青ざめる。何故なら、モリオン家の養子であるブラッドストーンといえば、髪が黒く瞳は紫色のそれは妖艶な姿であり、小説ではヒーローであるハウライトの次に人気だった人物! 魔力がとてつもなく強く、そして……ガーネットの闇の力に惹かれて配下となる人物だ。
《私の下で働き、私のために死ね》
《ガーネット王子のご命令であるのならば喜んで》
彼のガーネットへの忠誠心に腐女子達が騒いでいたわ。カップリングまでされてたっけなあ。
そのブラッドストーンはガーネット王子のためにハウライト王子の命を何度も狙い、最後には……ヒーローであるハウライトに殺される人だ!!
「…………これはちょっと……にゃんとか……しないと!」
ようやく最近家族の時間が増えてきたのに、彼が近づくことで、ガーネット兄様を破滅の王にされたくないない! いや、変な目でガーネット兄様に近づかないでほしい! あとハウライト兄様の命とかも狙わないでほしい!
よし! ここはガツンと私がマシュマロ攻撃してやるわ!
私は一人になれる時間まで待ち、コソッと部屋を抜け出して、塔に向かう。すると、何だか怖い顔のおじさんがブラッドストーンと思われる子の腕を掴みながら顔を叩いていた!
「この愚か者めが! これしきのことで何も力を出せなくなるとは! くずが!」
怖いおじさんは鞭を取り出して数回ふるう。
え、これって……虐待…………だよね? ちょっぴり怖い……いや、かなり怖いけど……これは駄目だ!
私は咄嗟に走り、前に出た。
「こっ! こあー! だめ! マシュマロこうげき! てい!」
沢山あったマシュマロを怖いおじさんに投げつける。おじさんはジロッとこちらを睨んだが、私が誰だが気づいたようで先程の怖い表情から一変して笑顔で私に挨拶をしてきた。
「おやおや、お会いできて光栄です。エメラルド姫様」
「お、おぢたん! バシバシしたらこの子痛いよ!?」
「い、いや、これはしつけでしてね」
「にゃら、あたちもおぢたんを、しちゅけするから! マシュマロこうげき! はっしん! てい!!」
再びマシュマロをおじさんに投げつける。おじさんは少し困った顔をしているけど、虐待だからね! 許せないよ!
「わ、私の義理の息子ブラッドを気に入ったようですな。ブラッド、今日はもういい。姫様の相手をしてやれ」
「かしこまりました」
おじさんはそそくさと立ち去り、ブラッドストーンがくるりと私のほうへ振り向く。傷だらけの包帯姿が生々しい。
痛そうだよ……泣くかな? 泣いちゃうよね。手当てしたほうが良いかなあ。
「ふぅ。お前さ、凄いな」
「へ?」
「あの阿呆にマシュマロって!」
彼はお腹を押さえて笑い出した。
えーと、原作のブラッドストーンってクールで忠実な感じなのだけど……今笑っている彼は普通の少年だ。兄様達より一つ下だった気がする?
「あ、姫様なんだっけ。失礼……助けていただきありがとうございます」
そして急にかしこまり、私の手の甲にチュッとキスをしてお礼をするブラッドストーン。
こやつも、やはり美形キャラ故、女子に人気なんだよなあ……。まだ小さいから今のうちから仲良くすれば、闇の力に魅了されず真っ当な子になるかも!
「あたち……エメラルド! あとね、エメの前でけいごいらないよー」
私がそう言うと、キョトンとしたブラッドストーンはすぐに笑ってくれた。
「ははっ、了解! 俺のことはブラッドって呼んでくれな」
「あいっ! とりあえずマシュマロたべゆ?」
何はともあれ、悪役配下であるブラッドと、とりあえずお友達になりました!!
「――エメ、お前この本も全部読んだのか?」
「うん! おちゅちゅめあるよーこんどかすねー」
「お、助かる。ありがとな」
あの日以来、原作では悪役配下であるブラッドストーン・モリオンとよく会うようになった。
あの意地悪な義理の父親であるモリオン家当主からの虐待をなるべく避けたいし、真っ当な少年になってほしいからね! いい子みたいだし!
「エメラルド……?」
二人で遊んでいるところに声をかけられ、振り向くと、ハウライト兄様が立っている。ハウライト兄様はチラッとブラッドを見て笑顔になった。
「……君は誰かな」
え、何だろ? ハウライト兄様、目が笑っていない気がする。
あ、あれかい!? ヒーローは将来の自分の敵だと察したのかな!? まだ悪役じゃないよ!? ハウライト兄様! だ、駄目よ! 殺しちゃ!
更に少し離れている先にはガーネット兄様が歩いていて、こちらに気づき、向かってきた!
え? 向かってきた!? ハウライト兄様とあまり顔を合わせたくないとか昨日言っていたのに。
「ハッ!!」
私は思わずブラッドを見る。
ガーネット兄様と出会ったらあれかな!? ガーネット兄様の魅力に気づいてしまい、《ガーネット王子に忠誠を》とか何とか、配下になろうとするのでは……?
ヤバイ! 汗ダラダラになってきた。二人共、悪の道へ走らないよう、もう寝ている隙にお口にマシュマロを入れようかな。
「これは国の若き栄光、ガーネット王子とハウライト王子。初めてお会いいたします。〝私〟はブラッドストーン・モリオンです」
「へ……?」
ブラッド君よ、君は二重人格か何かかい? なんちゅー切り替えの早さよ?
ボケーとしている私をブラッドがクスッと笑う。
何と言うか……八歳、九歳は基本まだ虫を追いかけて鼻水を垂らし、ひゃほーい! のはずなのに……。今目の前にいる少年達は何者よ! しかも美形ショタ三人衆だわ!
「…………モリオン家……あぁ……あの狸親父のとこか」
「なるほどね、僕もモリオン家のことは聞いてるけど」
悪い顔をしているガーネット兄様と、笑顔のハウライト兄様。いやだから目が笑ってないよ。そう思うのは私だけかな……この状況、心臓に悪い! 駄目だ、マシュマロ食べて落ちつこう。いや、胃がもたれてきたかも。食べすぎかな。
「……お前は私達に忠誠心があるのか」
「っぶはっ!! ゲホゲホ!!」
私はガーネット兄様が原作の台詞を言っていることに驚いてしまい、マシュマロを喉に詰まらせる。咳こんでいると、ハウライト兄様が「エメラルド大丈夫かい?」と背中をさすってくれた。
ありがとーハウライト兄様よ。それにしても、うぉーい! ガーネット兄様よ! ブラッドに、そ、それ聞くの!? 悪の道には走らないでよ!?
ガーネット兄様とブラッドは見つめ合っちゃってるうぅぅぅ!? まだ二人が会うのは当分先だったのに、どうなるの!? 対策を、対策を立てねば!! 仲良し作戦を!! み、み、みんな、落ちつこう!
「……忠誠心……ですか」
「そうだ。お前はモリオン家の者だろう。我ら王家に対する忠誠心はあるのかを聞いている」
ブラッドはチラッと私を見てクスッと笑った。
どうして笑ったの!? 何とかしてみんな仲良く! 仲良くせねばならない!
「そうですね。敢えて言うならば、小さなお姫様への忠誠心はありますよ。お守りしたいと思っています」
「………………ふん、胡散臭い奴だな」
「おそばにいても?」
「ブラッド君だっけ、君まだ僕達ほど力が強くないよね? エメラルドのそばにいて良いのは彼女を守れる強い者じゃないとー」
「あいっ! よち! みんな! しゅーごー! エメのとこにしゅーごー!」
「「「………………」」」
私が手招きすると、三人の少年は黙ってこちらへ集まった。
へへ、ガーネット兄様は何やかんや言って、私のわがままにも付き合ってくれる優しいお兄ちゃんなんだよ!
これはね、兄弟仲良し作戦でもあるし、悪の道には走らず、ヒーローとも仲良く! みんな仲良く作戦よ!
「エメとままごとしましょ! そうちましょ!」
「…………では、私はしつれ――」
「ガーネ兄たまは、エメとままごとちらい?」
はい! 逃がさんよ! ガーネット兄様よ!
私はニッコリ微笑んで、みんな仲良く遊ぼうと宣言する。
どうにかままごとを始め、無事、少しは親睦を深められたかな?
ガーネット兄様はずっと固まっていた。一応台詞が少ない役にしたんだけどなあ。
――その頃、少し遠く離れていたところでピーター国王は、ままごとをしている子供達の様子をジッと見ていた。
そばにいたレピドライトがそんな国王の様子を見て呆れる。
「おや、何羨ましそうにしてるんですか! 仕事してください、仕事を!」
そうつっこんでたのは、誰も知らない。
✿お披露目パーティーで家族仲良しアピール!
今日のお城は何だか慌ただしかった。
私はまだ眠い。どうしようもなく眠い。
ふふふ、大好きなマシュマロのベッドにマシュマロだらけの素敵な夢……。あぁ、マシュマロよ、どうしてマシュマロなんだい?
「さあさあさあ! エメラルド姫様! 今日はお忙しいですよ!」
突然、誰かがベッドの布団をガバッと持ち、半分寝ていた私を起こした。
「ふぁ!? なんで? エメはね、マシュマロの夢みてたのに!」
クスクス笑うメイド達と乳母のアンは何故かハリきっている。
「今日はエメラルド姫様のお披露目パーティーですよ」
周りを見渡すと、メイド達は準備でパタパタと忙しそうにしていた。
お披露目パーティーかあ。あれ、公の場って初めてじゃないかな?
「さあ! まずはお風呂に行って身を清め、おめかしですわ!」
「ドレスの靴はどこ!?」
「ティアラは!?」
「あぁ! もう! 薔薇の飾りが見つからないわよっ!? あとクリームも! 早く持ってきてえええ!」
…………女の子ってオシャレする生き物だっていうのは私にもわかるわ。でも、ここは今、戦場のよう。
「アン、あたち……マシュマロたべ――」
「今日の主人公はエメラルド姫様ですからね! ふふ、良い殿方と出会えるかもしれませんわ」
「えと、マシュマロ……」
「エメラルド姫様にはまだ婚約者など早いですわ」
「でも男の子より女の子のほうが婚約者を早く決めるのがこの国の習わしだし。やはり候補としては宰相のレピドライト・ペリドット様のお子様でしょうか。とても優秀なご子息らしいわ。ハウライト王子様のご友人でもありますから、婚約者として申し分ないわ!」
「エメね、マシュマロ……」
「ふふ、でも王子様達が許さなそうよね。あ、姫様動かないでください」
「……エメ、マシュマロ……」
「あら、私はモリオン家のご養子が気になりますわ。モリオン家は家柄もよし! なんでもハウライト王子やガーネット王子並に優れた魔力をお持ちで見た目も可愛らしく、将来が期待できますわね! 最近、姫様とよくご一緒におられますし、お似合いですもの!」
そんなことよりマーシューマーロォォォォォォォォォォォ!!
数時間の地獄を、私はなんとか耐えた。メイド達がキラキラした眼差しで褒めてくれる。
いや、みんな褒めすぎよ。
「エメラルド姫様、可愛らしい!」
「天使だわ!」
「最高ですわ! みんなメロメロで間違いなしです!」
褒めてくれるなら、マシュマロ一つで良いから食べさせてほしいよ。
チラッと全身鏡を見るとそこには、可愛らしい白いレースのドレスとピンクの薔薇の飾りリボンを身につけている薄い茶色の髪の毛で白い肌の……私ね!
私はモブ以下だから、あんまり目立つ顔立ちではないと思うけどなあー。パパ似でないことは確かだね。
それにしてもドレス凄いなあ。日本なら、コスプレだと言われそう。でも、へへ、今は子供だし結構似合ってるかもしれないわね!
「さあ、姫様準備が整いましたよ。国王様と王子様達が待っておりますわ」
そう言ってつれていかれたパーティーホール前の大きな扉前に、パパとガーネット兄様、ハウライト兄様が待ってくれていた。周りにいた騎士達はパパ達が並んで待っていることに驚きを隠せていないみたい。
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