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第2幕 ~盗んだのは禁忌の香り~
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決戦の初日は案外すぐに訪れる。
華は都心のとあるカフェにいた。
向かいの席には、洗練されたアイラインとシャドウ。
長髪に清楚な服装でまとめた同年代の女性がいる。
「愛ちゃん。久しぶり」
呼びかけた妹は小さく頷くと、海外ブランドのバッグを隣の席に預けた。
「パパとママからきいたわよ。お姉ちゃんが逃走したって。今どこにいるの?」
「みんな心配してる。帰ってきてほしいって言ってるけど」
——旅行先で心配していたというのか。
華は一呼吸置く。
感情にとらわれてはいけない。
質問には答えずに、要件を端的に。
事前に何度も復唱した作戦だ。
「以前わたしの口座から盗んだお金を返してほしいの」
しんと、テーブルが静まり返る。
「ふーん、そういうこと。仕事うまくいかなくなったから、たかろうっていうんだ」
じとり、と据えられた、マスカラに縁どられた瞳には穏やかならぬものが宿る。
「え?」
「あのね、パパとママにもお姉ちゃんには返す必要ないって言われてるの、あたし」
ひっと、華は小さく気をのむ。
それは、知っている。
両親から面と向かって、妹を追求するなと言われてもいる。
「お姉ちゃん、大学在学中病気になって、色々お金がかかったでしょ。ずっと実家暮らしだったし。そういうの全部親に負担してもらっておいて、偉そうなことが言える立場なの?
あたしはあの頃から一人でやってたの。生活費だって、なにもかもぜんぶ自分よ」
「……」
無意識に額に手をあてがう。
混乱してくる。
彼らと話すといつもなる感覚。
――自分が、自分のほうが、間違っている?
「ママもはっきり言ってた。だからお姉ちゃんがお金に関してあたしに何か言う権利はないって」
「……」
呆然とする。
なにか言わなければと思うが、思考停止して、
なにも言えない。
気付いたら、荷物を持った妹がすぐ近くにきていた。
満面の笑顔で。
「そういうことだから。じゃあね」
「……」
「あんまり勝手なことばかりして、あたしたちを困らせないでね」
不自然なほどに、接近されて。
毒をあてられたように華は静止し。
気がついたら妹の姿が見えなくなるまで、惚けたように突っ立っていた。
こぎみよく、カフェのベルが鳴る音がする。
「あ……!」
ふいにいやな予感がして、華は布製のバッグを漁る。
――お財布もスマホも大丈夫。
——でも、なにか。なにか足りない?
一つ、なくなっているものがある。
そのことに気づいたときには手遅れだった。
「そんな……」
体力気力もろとも吸いぬかれるように、華は座り込む。
湊がくれた香水だった。
華は都心のとあるカフェにいた。
向かいの席には、洗練されたアイラインとシャドウ。
長髪に清楚な服装でまとめた同年代の女性がいる。
「愛ちゃん。久しぶり」
呼びかけた妹は小さく頷くと、海外ブランドのバッグを隣の席に預けた。
「パパとママからきいたわよ。お姉ちゃんが逃走したって。今どこにいるの?」
「みんな心配してる。帰ってきてほしいって言ってるけど」
——旅行先で心配していたというのか。
華は一呼吸置く。
感情にとらわれてはいけない。
質問には答えずに、要件を端的に。
事前に何度も復唱した作戦だ。
「以前わたしの口座から盗んだお金を返してほしいの」
しんと、テーブルが静まり返る。
「ふーん、そういうこと。仕事うまくいかなくなったから、たかろうっていうんだ」
じとり、と据えられた、マスカラに縁どられた瞳には穏やかならぬものが宿る。
「え?」
「あのね、パパとママにもお姉ちゃんには返す必要ないって言われてるの、あたし」
ひっと、華は小さく気をのむ。
それは、知っている。
両親から面と向かって、妹を追求するなと言われてもいる。
「お姉ちゃん、大学在学中病気になって、色々お金がかかったでしょ。ずっと実家暮らしだったし。そういうの全部親に負担してもらっておいて、偉そうなことが言える立場なの?
あたしはあの頃から一人でやってたの。生活費だって、なにもかもぜんぶ自分よ」
「……」
無意識に額に手をあてがう。
混乱してくる。
彼らと話すといつもなる感覚。
――自分が、自分のほうが、間違っている?
「ママもはっきり言ってた。だからお姉ちゃんがお金に関してあたしに何か言う権利はないって」
「……」
呆然とする。
なにか言わなければと思うが、思考停止して、
なにも言えない。
気付いたら、荷物を持った妹がすぐ近くにきていた。
満面の笑顔で。
「そういうことだから。じゃあね」
「……」
「あんまり勝手なことばかりして、あたしたちを困らせないでね」
不自然なほどに、接近されて。
毒をあてられたように華は静止し。
気がついたら妹の姿が見えなくなるまで、惚けたように突っ立っていた。
こぎみよく、カフェのベルが鳴る音がする。
「あ……!」
ふいにいやな予感がして、華は布製のバッグを漁る。
――お財布もスマホも大丈夫。
——でも、なにか。なにか足りない?
一つ、なくなっているものがある。
そのことに気づいたときには手遅れだった。
「そんな……」
体力気力もろとも吸いぬかれるように、華は座り込む。
湊がくれた香水だった。
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