麗しの殺し屋御殿

妃月未符

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第4幕 ~愚かな天使~

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 郊外の大型ショッピングモールの家具コーナー。
 寝具の取り揃えてある一角に、パーカーにスラックス姿の凪と、秋用の長袖トップスとボトムス姿の華の姿はあった。

 御殿で入用な買い物要員である。
 冬用の模様替えに必要なものを、碧から色々と頼まれている。

「よし。あとは枕カバーですね」
 スマホにメモしたデータを確認しながら頷く華の一歩先で、
「それなら、これはどうかな」
 凪が手招いている。
「なにかいいのがありました――って」

 凪の愛し気な視線のさきにある枕たちを見て、華は固まった。

 そこにかけられているカバーはみな、大口をあけた動物の顔が描かれたものだ。
 シロクマ、パンダ、ライオン、オットセイ……。

「路空くんはライオンさんがいいかも。シロクマさんの包容力のある感じは、澄春先生にぴったりだね。湊さんは……意表をついてカエルさんとか」
「あの。凪くん。このデザインはちょっと」
 凪が首を傾げながら振り返る。
「そう? 仲良しらしくていいなーと思ったんだけど……」
 うーんと、華は考え込む。
 碧のようにセンスが残念というわけではないのだが。
 凪の発想は少し独特すぎて時々ついていけない。
 どう説明したものか考えていると。

「——あれ」

 どこからか子どもの泣き声が聞こえてきて、華はその出どころを探し数歩歩いた。
 角でうずくまり泣いている、幼い女の子を発見する。
 五、六歳だろうか?

 声をかけようとすると、それより先に、女の子の頭を撫でる手があった。

「よしよし。寂しくなっちゃったんだね。もうだいじょうぶ。かわいい顔が、あんまり泣いているとライオンさんに食べられてしまうよ」
 凪がそんなふうにあやすと、人見知りらしい女の子は、けたけたと笑い出す。

「へぇ~」

 思わず呟いてしまう。
 彼は意外と、子どもの扱いがうまいようだ。

「迷子センターに行けば、お父さんとお母さんと会えるからね」
 凪に手をつながれながら、頷く女の子は、すっかり気を許しているようだ。

「お名前は?」
「夏花」
「夏花ちゃんは、この中ではどの動物さんが好き?」
「ライオンさんー」

 というわけで、妙に女の子が凪になついてしまい、迷子センターで両親が来るまで側でつきそうことになった。

 女の子と手遊びしながら凪とセンター外のベンチに並んで待っていると、ほどなくして若い父親らしき人が姿を現した。

「こら、夏花。一人でさきにいっちゃダメだっていっただろ。——すみません、娘が大変お世話になりました」

 通った鼻筋に、きりりとした目元。
 そして――あまり聞かないような類の、珍しい澄んだ声音。

「——あっ」
「ん。――え。三月さん?」

 知り合い――どころではない彼に、華は頭を下げた。

「皆川先輩……お久しぶりです」
「なんだ。三月さんが保護してくれたんだ……!」

 再会を喜ぶ華の耳元で、凪が囁く。
「お知り合いなの?」
「う、うんまぁ。大学に通いながらいった、声優養成学校の先輩」

「懐かしいな。元気? って。元気に決まってるか。活躍は聞き及んでるよ? ラブリー戦士として日々戦ってるんでしょ? 大変だ」
 からかうような口調すらさわやかで。
 あの頃から全然変わってない、と思う。
「はは。まぁそうですね。先輩こそ――今や声優界のプリンスとか言われてて……いつもすごいなって、思ってました」
「あはは。所帯じみたプリンスになっちゃったもんだよ」
 そうこうしているうちに、皆川のパートナーらしき女性が後ろからやってきた。
「主人がお世話になったようで。娘のことも。ほんとうにありがとうございました」
「いえいえ……」
「ママ―。このお兄ちゃんとお姉ちゃんに遊んでもらったー」
「よかったわね、夏花。お兄さんお姉さんに、ちゃんとありがと言った?」
 という具合に、事態は一件落着。
 したのだが。
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