騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第3節 過去編 マリスミゼルとエリシア①

第59話 その人は

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それからしばらく抱き合ったままでいると、だんだん瞼が重くなってきて、眠たげな表情を浮かべ始め


マリスミゼル「ふぁ....いけない、いけない。このままでは寝てしまいそうです。
名残惜しいですが....よいしょっ....ん~♪ほら、エリシアも」

気だるそうな様子で立ち上がり、背伸びをすると今度はこちらからエリシアに手を差し出し


マリスミゼル「さて....そろそろ、夕闇が降りる頃です。

私はそこそこ強いですけど、夜道は危険ですし、帰ります。エリシアはどうしますか?」

足元やローブに着いた草を払いながらエリシアに問いかけ

ーーーー

エリシア「……んっ…ああ そうだな…確かに君の腕の中でなら安心して眠れそうだ…♪
ん…ふふっ…ありがと マリス…♪」

最初はどきどきしてたけど、だんだんとその温もりが心地よくて…
このまま抱き合ったまま二人一緒に寝ちゃいそうで、だから穏やかで優しい微笑みを浮かべて私もだと答え。

名残惜しそうな表情と気持ちを少し見せるが、差し出されたマリスの手をぎゅっと握りって、私はお礼を言いながら立ち上がる。


エリシア「ん? そうだな……最近 お願いされた任務で盗賊団を潰して恨まれてるみたいだし、私も今日はおとなしくこのまま寮へと帰ることにするよ。」

私はこのままマリスと一緒に帰ると答え。

家を継ぐための修行の一環として、学生の身でありながら騎士の仕事をしている私…
そのことは騎士学生たちの間でも少し話題になっていて。

ーーーー

マリスミゼル「ふむ、盗賊団を....まあ、貴女が強いのは認めますが、せめて誰か伴っていってほしいですねぇ。....友人の一人として、貴女が心配になってしまいます。

連れていくのは私でなくても、騎士の方でも構いませんし」

エリシアの言葉に、彼女を称賛しつつも少しだけ忠告をし


マリスミゼル「まぁ、昨今は王国騎士団も名ばかりで平和ボケしちゃって頼りにならないのはわかりますが。

ギランバルト団長と違って、副団長はとても聡明で腕も立つので、頼りになると聞きます。

彼女に人材を紹介してもらうよう、私が取り計らいましょうか?
....あぁ、すみません。つい、私のおせっかいなとこが..聞き流して下さい♪」

あまり勝手にしすぎると、おせっかいになると考えて途中で会話を切り上げ

ーーーー

エリシア「それがな…騎士団も人手不足みたいでお願いされてな、どうしてもって言われて断りきれなかったんだ。
ん? んー…さすがに私の都合で君を危険な目に合わせるのはね…いや いいさ…ありがと マリス…♪」

心配してくれるマリス…
私は家を継ぐために今から騎士の任務にも混ざらせてもらってる…という理由があるからいいけど、それに関係なく、しかも大事な友達であるマリスを危険な目に合わせるのは嫌で、私は少し困った表情を見せて…
でも色々と提案してくれたマリスに私はお礼を言って。


エリシア「あっ…忘れ物をしたみたいだ…すまない マリス、先に帰っててくれるか?
君の実力は知っているけど、もう暗くなりそうだから気をつけて帰ってくれ…それじゃあ また明日だ。」

帰り道 私とマリスは二人並んで帰っていて。

そこで私は忘れ物をしたことに気づき、そのまま軽く手をあげ、私はまた明日と言って学園への道を戻っていく。


エリシア「っと…学園が見えてきたな…ん? おっと 危ないぞっーーぐぅ!?」

辺りが暗くなった頃、学園が見えてきたところまでやってきて。

すると前から走ってくる男が私と当たりそうになり、私が危ないぞと言った直後…
身体に電流が走り、私はそのまま意識を失って…。

ーーーー

マリスミゼル「えぇ、それはいいですけど...あ、エリシアっ......まぁ、彼女は強いですし、大丈夫ですね」

盗賊の件もあり自分も行こうかどうか考えているうちに、エリシアがいってしまい自分も帰路につくが


マリスミゼル「あぁ、そういえば....」

少しして彼女に伝え忘れたことを思い出し、エリシアを追うと男三人組と、ぐったりした彼女を発見し状況を察し


マリスミゼル「くっ!貴方たち、その女性を離しなさい!っ!」

咄嗟に魔方陣を展開し、無詠唱で簡易の炎熱魔方弾を放つが距離があり、男たちには命中せず威嚇をするだけに留まり

ーーーー

エリシア「………ん…っ!? んっんん!?
(な、何…なんで私 手錠されて…こんな格好にさせられて…!?
この男たちは…っ…そうだ…確か身体に痺れが走ったのと同時に意識がなくなって…つまり私…こいつらに攫われて…。)」

私が気が付くと両腕は頭の上で手錠されていて、その手錠は頑丈な鎖で繋がれていて…
口には口枷を咥えさせられ、騎士服のレオタードは脱がされ裸にされていて。

その目の前には三人の男がいて、よく見ると盗賊団メンバーの顔で、自分が気絶させられたことを思い出して。


「おっ 起きたみたいだぞ…さっき誰かに見られたし、早くこいつにお礼をしようぜ?」

「まあ ここはすぐにはバレないだろ…だからゆっくりと騎士様の恥ずかしい姿を撮ってやろう。」

「正式な騎士じゃなくて、騎士学生だけどな…はーい こっち向いてね?」

エリシア「っ!? んっん! んっ~んん!
(なっ…しゃ、写真…!? と、撮るな…! いや…やめ…やめ…て…!)」

三人の盗賊たちは会話をしながら、カメラで裸の私の写真を撮っていき。

先程の電流の影響なのか、まだ身体が痺れていてうまく力が入らなく抵抗できなくて…
涙目で身体をくねらせて、私は顔を力なくふるふる振るくらいしか出来なく。


「くくっ…騎士様のこの写真や恥ずかしい写真をばら撒いてやるかな?」

エリシア「っ…んっん…っ……。
(い、いや…怖い…これが怖いってことなの…か…? こんな感情 私…知らな…い…誰…か…誰か…マリス…助け…て…!)」

盗賊の一人に顎をくいっと持ち上げられ、他の二人の手が身体に触れて…びくんと全身震わせ、私は初めての恐怖で震えていて。

強がって誰にも頼ることが出来なかった私…
そんな私が助けを祈った相手は、初めてできた友達で…。

ーーーー

盗賊たちの手がエリシアにかかったその時、強烈な風が唸る音とともに、突然 盗賊たちが衝撃波を受けて吹き飛び


マリスミゼル「ふ~....いやぁ、やってくれましたねぇ。敵ながら油断ならない人たちです。あんなにトラップをしかけているとは..」

カツカツ..と音を立ててゆっくりマリスミゼルが現れるも、その頬には切り傷や、いつも見に纏うローブはところどころ裂け少しボロボロになっていて


マリスミゼル「ですが、トラップに頼るということは弱い証拠。その人は私の女...ゴホン。大切な友人です。調子に乗りすぎましたね。」

あらかじめ詠唱していたのか人差し指を動かすと、植物の蔦が気絶している彼らを強烈に縛り上げて動きを拘束する。

それを見るとエリシアに駆け寄り、自分のローブを彼女に羽織らせてあげ


マリスミゼル「..すみません、遅れてしまいましたね。まぁ、大丈夫ではないでしょうけど..ケガはありませんか?」

しゃがみこみながら、エリシアに視線を合わせると申し訳なさそうな表情を浮かべ外傷の確認を

ーーーー

エリシア(ーーえっ…あっ…なん…で…。)

私がマリスのことを想った瞬間、本当に彼女が助けに来てくれて…
私は一瞬思考が止まって、涙目でマリスを見つめていて。


エリシア「……マリ…ス…っ…マリスッ…!
怖かっ…た…あれが恐怖…なんだ…な……っ…マリス…ごめ…ん…少しだけ…このままで…いさせ…て…。」

口枷や拘束を解いてもらってから、優しくローブを羽織らせてもらえ…
私は涙を見せてぎゅっと力強くマリスへと抱きつく。

恐怖から少しだけまだ震えていて…ぎゅっとマリスに抱きつきながら、私は初めて弱い姿を見せて。


エリシア「…あっ…マリス…その傷…私のせいで……ご、ごめんな…さい…私が捕まったばかりに…危険な目に合わせて…君の顔に傷…を…本当に…ごめんなさ…い…。」

マリスの温もりで少しだけ落ち着けると、彼女が少し傷を負っていることに気づき…
私は彼女のことを心配しながら申し訳なさそうにして。

自分のせいでマリスを巻き込んだこと、そして傷を負わせたことに責任を感じ…
すっかりと凛々しくて強気なところはなくなり、力なくマリスの手を握る弱々しい姿を見せて。

ーーーー

マリスミゼル「おっとと....怖かったですね。よしよし....♪」

エリシアが抱きついてきて、バランスを崩しそうになりながらも、彼女を抱き締めかえしてあげゆっくり優しく背中をポンポンと叩き


マリスミゼル「ん?..あぁ、これですか。何も謝ることはないでしょう。自分の油断が招いた傷ですし..何より」

穏やかに微笑みながら手を優しく握りかえしてあげ


マリスミゼル「友人を助けるのに感謝や謝罪なんて要りません。

友として当然のことをしただけです。立場が逆だったら、きっと貴方だって同じことをしたはず。違いますか?」 

ーーーー

エリシア「んっ…怖かった……マリ…ス…もっとぎゅっと…お願い…。」

マリスに抱きしめられて背中をぽんぽんと優しく叩かれ、抱きついてる私は少しずつ気持ちが落ち着いてきて。

私は抱きつきながら素直に怖かったとつぶやき、マリスにもっとぎゅってして欲しいと甘える声でお願いし。


エリシア「あっ……う、うん…私もきっとマリスと同じことをする…絶対…!
…マリス…その…ありが…とう…友達として助けに来てくれ…て…//」

手を握り返して微笑みながらマリスは言ってくれて…
私もマリスが同じようなことになったら、絶対に友として助けに行ったと、ぎゅっと握る手に力を入れて答え。

私は涙を手で拭ってから、嬉しそうに微笑みながらお礼を言う…でも少しだけ恥ずかしそうにして。


エリシア「………んっ…もう大丈夫…だ…♪ さて…こいつらをどうしようか マリス?
私が取り逃がしていた盗賊団の残党みたいだから、私が騎士団に引き渡した方がいいんだろうけど…さすがに裸のままでは誰とも会えないし…。

それにこれはマリスのお手柄だ、騎士団からいろいろと貰えると思うぞ。
あと…私からも何かお礼をさせてくれ…友であり恩人である君には感謝しきれない、私に出来ることならなんでも言ってくれ。」

マリスのおかげで元気になり立ち上がり、私は拘束された男たちをどうするかを考えて。

ローブをマリスに借りてるとはいえその下は裸で、それにマリスが捕まえたのだからその手柄などは全て君のだと伝えて…
感謝はいらないと言われても、やっぱり助けてくれたお礼はしたく、私の性格上そこは譲れなくて。

ーーーー

マリスミゼル「はいはい....♪えぇ、貴女の思いはわかってますよ♪」

何も言わずにギュッと抱き締めて、彼女の震えが収まるまで、しばらくそのままの態勢でいて


マリスミゼル「うーん..私は賞金も要らないですし、何よりあまり関わりたくないですね。

....一応こんなこともあろうかと、王国騎士団に小隊の援軍を要請してました。

ギランバルト団長派の騎士たちですから、あまり気が進まなかったのですが....まあ、後のことは彼らに任せましょう」

『私が壊した罠を追ってるはずだから、そろそろ来るでしょうし..』と小さく呟き、何かに気がついた表情をすると


マリスミゼル「それに、彼らにその魅力的な姿を見せるわけにはいきませんね。お礼とかは後回しにして...とりあえず、出ましょうか。

この辺りだと....確か、小さな山小屋がありましたね。そこで休みますか?

それとも、少し遠くはなりますが私のお家で休んでいきますか?」

ポンポンと足元の土を払い立ち上がると、2つの選択肢を提示して、エリシアの反応を伺い  

ーーーー

エリシア「んっ…抱きしめてくれてありがと…もう…大丈夫だ…。
そうか…マリスがそう言うならそれで構わないが…ふふっ…しかし本当に君は私より優秀だよ…マリスは私より良い騎士になれそうだ…♪」

優しく抱きしめてくれたマリスにお礼を言って、少し名残惜しそうに私は離れて。

関わりたくないと言う彼女に無理じいはさせないことにして…でも自分より手際のよい様を見て、私はマリスに優しく微笑みかけ。


エリシア「っ…か、からかうな…//
しかしすまないな…さすがに今君以外の人にはこの姿を見られたくないからな…その…マリスになら構わない…が…//」

マリスに魅力的なと言われ、私は頬を赤くして少しだけ元気を取り戻して。

さっき辱められそうになったばかりだから、男の人とは今はあまり会いたくなくて…
無意識にだけどマリスにならとつぶやき、すっかりとマリスを信用していて。


エリシア「……マリスの部屋がいい…そっちの方が…安心する…から…//
君の…マリスの側はすごく安心する…だから今だけは…その…あ、甘えさせてくれない…か…?」

きゅっとマリスの手を握りながら、恥ずかしそうに私はつぶやいて。

初めての恐怖を味わったからか、少しでも安心できる場所に行きたいと思っていて…
だから一番安心できるマリスのところへ行きたいと赤くなりながら伝えて。

ーーーー

マリスミゼル「いえいえ..私には剣は向いてないのでしがない魔導師で充分ですよ」

軽く笑いながら彼女に言葉を返して


マリスミゼル「ふふ♪...まぁ、いいでしょう♪....それではお家にいきますか。
そこで、私に甘えるなり、ゆっくり休むなりしてくださいね♪」

彼女の手に、もう片方の自分の手を重ねて楽しげに微笑み彼女の変化する表情を見つめ


マリスミゼル「さて....そうなると、ここからしばらく歩かなくては。まぁ、ローブ1枚でちょっとした刺激のある散歩になりそうですねぇ♪さ、いきましょうか♪」

ニコニコと微笑み、彼女の手のひらを引いて進み、その場を後にし

ーーーー

エリシア「ふふっ…そうか…だけどマリスは私より強くて…私にはないものを持っているよ…♪」

しがない魔導師で…とマリスが言ったので、私も軽く微笑んで。

今回の一件で同じ主席だけどマリスとのいろいろな差が分かって…
少しだけマリスには敵わないなと思いながらも、マリスの友達として隣に並べるように頑張ろうと思ったりもし。


エリシア「あっ…// あ、ああ…なんだかすごく恥ずかしい気がするが…今日だけは甘えさせてもらう…//」

マリスの手が私の手に重なって…
私は恥ずかしそうに視線を少し逸らし、甘い声で小さくつぶやいて。

マリスの強さや優しさにすっかりと心を許していて…マリスに対するどきどきする気持ちがどんどん膨らんでいて。


エリシア「うっ…だ、大丈夫だ…恥ずかしいけど…その…マリスが一緒だから…//」

ローブ一枚だけで歩くことになるのは恥ずかしかったが、マリスが手を握って一緒にいてくれるから安心できていて。

でも終始真っ赤でマリスにくっつきながら離れないように歩いて……。
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