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4. ここからがリスタート
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翌週九月の第四土曜日は、秋晴れの爽やかな天気になった。
昼過ぎに映画館のある駅の待ち合わせ場所に着くと、すでに瑛士が待っていた。VネックのTシャツにスリムパンツ、そして秋らしくジャケットを羽織るという至ってラフな格好なのに、お洒落感が漂う。そして眼鏡。格好いいのに昔の大浦君の面影もあって、ちょっと懐かしいのと安心感が浮上した。会社帰りに飲みに行くだけならいいんだけれど、やっぱりお日様の下でいい男ときちんと出会うとなると、私だってそれなりに身構えるものはある。
「お待たせ。今日は眼鏡なんだね」
「眼鏡だと、度を変えられるからね。映画観るときはいつも眼鏡なんだ」
そういうものなのか。ほう、とうなずいていると、瑛士が目を細めて私を見つめた。
「彩乃は今日はワンピースなんだね。可愛いしよく似合ってる」
「あ、ありがとう」
会って直ぐに女性を褒めるって、イタリア男か? やっぱり人とのコミュニケーション能力が、昔に比べて遥かにUPしている。
──人に関わってみようって思うようになった。同じ後悔するなら、人任せではなく自分でやって後悔した方がいいと思って。
先週の懺悔大会で言っていた、瑛士の言葉を思い出す。やらかしちゃった後に前向きに考えられるのって偉い。そしてその結果が現在のイケメンかと思うと尊敬してしまう。私なんて思ったことが、
人に無闇になにかを強請ってはいけないし、そう思わせるような言動もしてはいけない。
だけだもんなぁ。うーん、性格。
「じゃあ行こうか」
「うん」
気持ちを切り替えるようにうなずくと、私たちは歩き出した。
映画館に着くと、いったん二手に分かれた。私は予約していた座席の発券を、瑛士は飲み物を買ってくるそうだ。発券してグッズショップの前で待っていると、しばらくしてドリンクとポップコーンを抱えた彼が現れた。
「ポップコーン!」
しかもキャラメル味!
わぁっと子供みたいに目を輝かせたら、吹き出されてしまった。
「そこまで喜んでもらえたなら、買った甲斐があったよ」
「だって滅多に食べないじゃない? 映画館来たーって感じがするよね」
すっかりテンション上がってしまったが、今度はこちらの番だ。場内アナウンスが流れ、各シアターが開場したので、誘導するように先に歩く。通常のシアターを通過し、私は大きく施設名の表示された一角に向かった。
「え? これって」
戸惑う瑛士を安心させるように、私がうなずく。
「うん、体感型シアター。椅子が動いたり、風が吹いたりするの。今まで話聞くだけで体験したことなかったから、ちょっと興味あって」
追加料金でもう一回分映画観られそうって、正直思った。でもまあそれは十七年分の利息だ。そう考えてつい奮発したのだけれど、これって自己満足だったかな。
「出過ぎた?」
不安になって聞いたら、不思議そうな顔で聞き返されてしまった。
「なんで? 俺もこれで観たことなかったから、すごい嬉しい」
素直に喜んでくれる人でよかった。ほっとしながらシアターに入る。
そして二時間後──。
昼過ぎに映画館のある駅の待ち合わせ場所に着くと、すでに瑛士が待っていた。VネックのTシャツにスリムパンツ、そして秋らしくジャケットを羽織るという至ってラフな格好なのに、お洒落感が漂う。そして眼鏡。格好いいのに昔の大浦君の面影もあって、ちょっと懐かしいのと安心感が浮上した。会社帰りに飲みに行くだけならいいんだけれど、やっぱりお日様の下でいい男ときちんと出会うとなると、私だってそれなりに身構えるものはある。
「お待たせ。今日は眼鏡なんだね」
「眼鏡だと、度を変えられるからね。映画観るときはいつも眼鏡なんだ」
そういうものなのか。ほう、とうなずいていると、瑛士が目を細めて私を見つめた。
「彩乃は今日はワンピースなんだね。可愛いしよく似合ってる」
「あ、ありがとう」
会って直ぐに女性を褒めるって、イタリア男か? やっぱり人とのコミュニケーション能力が、昔に比べて遥かにUPしている。
──人に関わってみようって思うようになった。同じ後悔するなら、人任せではなく自分でやって後悔した方がいいと思って。
先週の懺悔大会で言っていた、瑛士の言葉を思い出す。やらかしちゃった後に前向きに考えられるのって偉い。そしてその結果が現在のイケメンかと思うと尊敬してしまう。私なんて思ったことが、
人に無闇になにかを強請ってはいけないし、そう思わせるような言動もしてはいけない。
だけだもんなぁ。うーん、性格。
「じゃあ行こうか」
「うん」
気持ちを切り替えるようにうなずくと、私たちは歩き出した。
映画館に着くと、いったん二手に分かれた。私は予約していた座席の発券を、瑛士は飲み物を買ってくるそうだ。発券してグッズショップの前で待っていると、しばらくしてドリンクとポップコーンを抱えた彼が現れた。
「ポップコーン!」
しかもキャラメル味!
わぁっと子供みたいに目を輝かせたら、吹き出されてしまった。
「そこまで喜んでもらえたなら、買った甲斐があったよ」
「だって滅多に食べないじゃない? 映画館来たーって感じがするよね」
すっかりテンション上がってしまったが、今度はこちらの番だ。場内アナウンスが流れ、各シアターが開場したので、誘導するように先に歩く。通常のシアターを通過し、私は大きく施設名の表示された一角に向かった。
「え? これって」
戸惑う瑛士を安心させるように、私がうなずく。
「うん、体感型シアター。椅子が動いたり、風が吹いたりするの。今まで話聞くだけで体験したことなかったから、ちょっと興味あって」
追加料金でもう一回分映画観られそうって、正直思った。でもまあそれは十七年分の利息だ。そう考えてつい奮発したのだけれど、これって自己満足だったかな。
「出過ぎた?」
不安になって聞いたら、不思議そうな顔で聞き返されてしまった。
「なんで? 俺もこれで観たことなかったから、すごい嬉しい」
素直に喜んでくれる人でよかった。ほっとしながらシアターに入る。
そして二時間後──。
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