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7. 噂ではそう言っている
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独身三十路超えの女二人が揃って力無く、はははと笑う。
「そう言えば結婚式に出席したのに、肝心の独身交流はどうだったの、真紀ちゃん」
つい心配になって突っ込みを入れてしまった。おひとりさまを決意した私と違い、真紀ちゃんはちゃんと結婚願望のある人だ。御祝儀なんて高い金払っているんだし、コース料理と引き出物もらって帰るだけじゃなく、出会いの場としても活用しなければ。
「いいのがいたら、こんな話で盛り上がるわけ無いでしょ」
「真紀ちゃん……」
「大丈夫。ショータ君の職場のイケメン紹介してもらう約束したから」
「なら良し」
もはや本来の目的をすっかり忘れ、真紀ちゃんとの世間話ですっかり満足してしまっていた。まあこれはこれで楽しいから、ありかな。
「そうだ。イケメンで思い出したわ、最後の報告。アヤ、大浦君って覚えている? 二年の一学期の終わりに転校しちゃった子」
すっかり油断したところに不意打ちで瑛士の名前が出てきて、ビクッとしてしまった。
「……うん。覚えているよ」
「大人しそうな優等生って印象だったけど、すんごいイケメンに育ったんだって。で、なおかつ独身」
「あー」
うん。知ってる。
とはなぜか言えずに、曖昧な相槌を打ってしまった。そのお陰で、すっかり相談するタイミングを逃してしまう。
「ショータ君に紹介してよって言ったけど、駄目だった。なんか近々結婚するらしくて」
「はい?」
ガシャンと音を立てて、コーヒーカップを下ろした。
「アヤ、驚きすぎ」
「あ、えっと、力の加減間違えちゃって」
結婚? え? 誰と? 誰が?
「なんかずっと付き合っている人? あれ、好きだった人? とようやく目処立ったとかって話で。紹介してもらう前だったからいいけどね。これ、下手に仲良くなってからイケメンかっ攫われたら、絶対にダメージ大きかったよね」
「……そうだね」
へらっと笑ってコーヒーカップに口付けて、もうとっくに飲み干していることに気が付いた。真紀ちゃんもさっきからお冷を飲んでいて、そろそろ店を変えるタイミングなのを知る。
「アヤ、この後どうする?」
「ごめん。今日は家で夕飯食べなくちゃなんだ。最近、まともに親とご飯食べていなくて」
「同居していると、それがあるよね」
「まあね」
お互いに実家住まいということであっさりと納得してもらい、また今度会おうねと口約束をして別れた。そのまままっすぐ家に帰る。
「あら、おかえりー。早かったわね」
「……ただいま」
「どうしたのよ? 死にそうな顔して」
「……なんでもない」
「そう言えば結婚式に出席したのに、肝心の独身交流はどうだったの、真紀ちゃん」
つい心配になって突っ込みを入れてしまった。おひとりさまを決意した私と違い、真紀ちゃんはちゃんと結婚願望のある人だ。御祝儀なんて高い金払っているんだし、コース料理と引き出物もらって帰るだけじゃなく、出会いの場としても活用しなければ。
「いいのがいたら、こんな話で盛り上がるわけ無いでしょ」
「真紀ちゃん……」
「大丈夫。ショータ君の職場のイケメン紹介してもらう約束したから」
「なら良し」
もはや本来の目的をすっかり忘れ、真紀ちゃんとの世間話ですっかり満足してしまっていた。まあこれはこれで楽しいから、ありかな。
「そうだ。イケメンで思い出したわ、最後の報告。アヤ、大浦君って覚えている? 二年の一学期の終わりに転校しちゃった子」
すっかり油断したところに不意打ちで瑛士の名前が出てきて、ビクッとしてしまった。
「……うん。覚えているよ」
「大人しそうな優等生って印象だったけど、すんごいイケメンに育ったんだって。で、なおかつ独身」
「あー」
うん。知ってる。
とはなぜか言えずに、曖昧な相槌を打ってしまった。そのお陰で、すっかり相談するタイミングを逃してしまう。
「ショータ君に紹介してよって言ったけど、駄目だった。なんか近々結婚するらしくて」
「はい?」
ガシャンと音を立てて、コーヒーカップを下ろした。
「アヤ、驚きすぎ」
「あ、えっと、力の加減間違えちゃって」
結婚? え? 誰と? 誰が?
「なんかずっと付き合っている人? あれ、好きだった人? とようやく目処立ったとかって話で。紹介してもらう前だったからいいけどね。これ、下手に仲良くなってからイケメンかっ攫われたら、絶対にダメージ大きかったよね」
「……そうだね」
へらっと笑ってコーヒーカップに口付けて、もうとっくに飲み干していることに気が付いた。真紀ちゃんもさっきからお冷を飲んでいて、そろそろ店を変えるタイミングなのを知る。
「アヤ、この後どうする?」
「ごめん。今日は家で夕飯食べなくちゃなんだ。最近、まともに親とご飯食べていなくて」
「同居していると、それがあるよね」
「まあね」
お互いに実家住まいということであっさりと納得してもらい、また今度会おうねと口約束をして別れた。そのまままっすぐ家に帰る。
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「……ただいま」
「どうしたのよ? 死にそうな顔して」
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