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王子暗殺
お菓子
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「あら、目が覚めたみたいね」
少女の寝顔を眺めていると、その眼がゆっくりと開く。
その瞳の色も、髪と同じく鮮やかな緑色をしていた。
少女は上半身を起こし、眠気眼で当たりを見回す。
頭がまだぼーっとしているのか、時々瞼を手でこすったりしてその仕草が可愛らしい。
「!?」
私少女の目が合う。
突如彼女の翠色の目が大きく見開かれた。
どうやら寝起きに不細工はきつかった様だ。
次からは同じような事があったら仮面でも被っておくとしよう。
……まあそれはそれでショッキングな気もするが。
不細工と仮面じゃどっちがいいのだろうか?
どっちもどっち?
「驚かしちゃってごめんね。私は怖くないから安心して」
私は顔を伏せつつ少女に優しく声を掛けた。
だが返事は返って置ない。
どうやら相当ショックを与えてしまった様で、優しく声を掛けた程度では挽回は出来なかった様だ。
醜く生まれた自分が恨めしい。
「初めまして。私はハム・サラダよ。貴方の名前を教えてくれる? 」
苦戦する私を見かねてかハム子が助け舟を出してくれる。
彼女は可愛らしい顔をしているので、きっと少女も心を開いてくれるの違いないだろう。
お口直しって奴だ。
「……」
だが何故かハム子に話しかけられても、少女は答えない。
だんまりと口を噤んだままだ。
気になったので少しだけ顔を上げて彼女の表情を伺ってみた。
その顔は不安げで、少し怯えている感じがする。
何をそんなに怯えているのだろうか?
いや、考えるまでも無いか。
家の庭で裸で倒れていたのだ。
何か事情があるに違いない。
しかも気づいたら見知らぬ場所で大人に囲まれているのだ(この部屋には私と侍女が3人程いる)。
パニックになって怯えてしまっても仕方ないだろう。
しかも私の顔を、寝起きで見ちゃったしね……
「ちょっと怯えちゃってるみたいですね」
「ええ、そうみたい」
「あ!そうだ!私お菓子を持ってるんですよ!」
ハム子がパンと胸元で手を叩き、メイド服のポケットからクッキーの包み紙を取り出してみせる。
正直、子供=お菓子と言うのは安易な発想だとは思うが。
彼女は長く眠っていたのでお腹もすいているだろうし、まあ丁度いいだろう。
「どうぞ 」
ハム子が包みを剥いて、笑顔でお菓子を差し出した。
少女はそれに恐る恐る手を伸ばし、両手で掴んで匂いを嗅ぎだした。
何だか子犬みたい。
「クッキーって言うんだけど。知らない?」
ハム子の言葉に少女は首を縦に振って答える。
クッキーは貴族平民問わず人気のお菓子なのだが、どうやら彼女は見た事も無かったらしい。
家が貧しかったのだろうか。
だから裸で……って流石にそれはないわね。
いくら貧しいからって、裸で暮らすなど聞いた事も無い。
それではもう原始人だ。
「美味しいわよ」
そういってハム子はポケットからもう一枚クッキーを出し、それを自分で頬張った。
それを見た少女も真似してクッキーに噛り付く。
途端少女の表情が、まるで花が咲いたかのように可愛らしい笑顔に変わる。
どうやらお気に召した様だ。
「「きゃー!かわいい!」」
侍女達が声をそろえて黄色い声を上げた。
まあ気持ちは分かる。
実際超かわいかったし。
でも急に大声を出すから、女の子が驚いてしまってクッキーをベッドの下へ落としてしまった。
「驚かしちゃってごめんね。はい、これ」
ハム子が落ちたクッキーを素早く広い、ポケットからもう一枚クッキーを取り出して少女へと手渡した。
ないすハム子。
こいつ一体何枚クッキーをポケットに仕込んでるんだって気はするが、今回はいい仕事したから野暮な突っ込みは止めておいてあげよう。
少女は渡されたクッキーを今度は一気に口に含む。
落としたのがショックだったのだろう。
両手でほっぺを押さえてもしゃもしゃする姿は――
「「きゃー!かわいいー!」」
だから大声出すなっての。
とは言え、今度は口の中にしっかりと仕舞い込んである。
ちょっとビックリしたような表情をしつつも、もしゃもしゃと最後まで食べきった。
そして上目遣いでハム子を見つめる。
どうやらまだ欲しい様だ。
「カルボ様!私お菓子取ってきますね!」
「私も私も!」
「あっ、ずるーい。私だってお菓子あげたいんだから~」
「私の事は気にしないで3人とも彼女のためにお菓子を取ってきてあげて」
良い流れだ。
そう思い私はにっこりと微笑んで彼女達にお菓子を取って来る様指示する。
「はーい!じゃあ行ってきます!」
そうハム子が元気よく返事して部屋から出て行くと、他の2人も負けじと部屋から駆け出していく。
はしたない事この上なしだが、普段娯楽の少ない彼女達からすれば可愛い少女は格好のおも……興味の対象なのだろう。
私は開けっ放しの扉から少し顔を出して外の様子を覗いた。
誰もいない事を確認し、そっと扉を閉じる。
さて、誰もいなくなったことだし――
さあ魔法のお時間だ。
少女の寝顔を眺めていると、その眼がゆっくりと開く。
その瞳の色も、髪と同じく鮮やかな緑色をしていた。
少女は上半身を起こし、眠気眼で当たりを見回す。
頭がまだぼーっとしているのか、時々瞼を手でこすったりしてその仕草が可愛らしい。
「!?」
私少女の目が合う。
突如彼女の翠色の目が大きく見開かれた。
どうやら寝起きに不細工はきつかった様だ。
次からは同じような事があったら仮面でも被っておくとしよう。
……まあそれはそれでショッキングな気もするが。
不細工と仮面じゃどっちがいいのだろうか?
どっちもどっち?
「驚かしちゃってごめんね。私は怖くないから安心して」
私は顔を伏せつつ少女に優しく声を掛けた。
だが返事は返って置ない。
どうやら相当ショックを与えてしまった様で、優しく声を掛けた程度では挽回は出来なかった様だ。
醜く生まれた自分が恨めしい。
「初めまして。私はハム・サラダよ。貴方の名前を教えてくれる? 」
苦戦する私を見かねてかハム子が助け舟を出してくれる。
彼女は可愛らしい顔をしているので、きっと少女も心を開いてくれるの違いないだろう。
お口直しって奴だ。
「……」
だが何故かハム子に話しかけられても、少女は答えない。
だんまりと口を噤んだままだ。
気になったので少しだけ顔を上げて彼女の表情を伺ってみた。
その顔は不安げで、少し怯えている感じがする。
何をそんなに怯えているのだろうか?
いや、考えるまでも無いか。
家の庭で裸で倒れていたのだ。
何か事情があるに違いない。
しかも気づいたら見知らぬ場所で大人に囲まれているのだ(この部屋には私と侍女が3人程いる)。
パニックになって怯えてしまっても仕方ないだろう。
しかも私の顔を、寝起きで見ちゃったしね……
「ちょっと怯えちゃってるみたいですね」
「ええ、そうみたい」
「あ!そうだ!私お菓子を持ってるんですよ!」
ハム子がパンと胸元で手を叩き、メイド服のポケットからクッキーの包み紙を取り出してみせる。
正直、子供=お菓子と言うのは安易な発想だとは思うが。
彼女は長く眠っていたのでお腹もすいているだろうし、まあ丁度いいだろう。
「どうぞ 」
ハム子が包みを剥いて、笑顔でお菓子を差し出した。
少女はそれに恐る恐る手を伸ばし、両手で掴んで匂いを嗅ぎだした。
何だか子犬みたい。
「クッキーって言うんだけど。知らない?」
ハム子の言葉に少女は首を縦に振って答える。
クッキーは貴族平民問わず人気のお菓子なのだが、どうやら彼女は見た事も無かったらしい。
家が貧しかったのだろうか。
だから裸で……って流石にそれはないわね。
いくら貧しいからって、裸で暮らすなど聞いた事も無い。
それではもう原始人だ。
「美味しいわよ」
そういってハム子はポケットからもう一枚クッキーを出し、それを自分で頬張った。
それを見た少女も真似してクッキーに噛り付く。
途端少女の表情が、まるで花が咲いたかのように可愛らしい笑顔に変わる。
どうやらお気に召した様だ。
「「きゃー!かわいい!」」
侍女達が声をそろえて黄色い声を上げた。
まあ気持ちは分かる。
実際超かわいかったし。
でも急に大声を出すから、女の子が驚いてしまってクッキーをベッドの下へ落としてしまった。
「驚かしちゃってごめんね。はい、これ」
ハム子が落ちたクッキーを素早く広い、ポケットからもう一枚クッキーを取り出して少女へと手渡した。
ないすハム子。
こいつ一体何枚クッキーをポケットに仕込んでるんだって気はするが、今回はいい仕事したから野暮な突っ込みは止めておいてあげよう。
少女は渡されたクッキーを今度は一気に口に含む。
落としたのがショックだったのだろう。
両手でほっぺを押さえてもしゃもしゃする姿は――
「「きゃー!かわいいー!」」
だから大声出すなっての。
とは言え、今度は口の中にしっかりと仕舞い込んである。
ちょっとビックリしたような表情をしつつも、もしゃもしゃと最後まで食べきった。
そして上目遣いでハム子を見つめる。
どうやらまだ欲しい様だ。
「カルボ様!私お菓子取ってきますね!」
「私も私も!」
「あっ、ずるーい。私だってお菓子あげたいんだから~」
「私の事は気にしないで3人とも彼女のためにお菓子を取ってきてあげて」
良い流れだ。
そう思い私はにっこりと微笑んで彼女達にお菓子を取って来る様指示する。
「はーい!じゃあ行ってきます!」
そうハム子が元気よく返事して部屋から出て行くと、他の2人も負けじと部屋から駆け出していく。
はしたない事この上なしだが、普段娯楽の少ない彼女達からすれば可愛い少女は格好のおも……興味の対象なのだろう。
私は開けっ放しの扉から少し顔を出して外の様子を覗いた。
誰もいない事を確認し、そっと扉を閉じる。
さて、誰もいなくなったことだし――
さあ魔法のお時間だ。
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