5 / 52
第5話 オーラ
しおりを挟む
どうもこの世界。少なくともこの辺りでは、朝飯抜きが一般的な様だ。なので成長期の子供以外は基本朝ご飯を食べない。そして宿に泊まる人間の大半は昼食を外で済ます。
「食事オプションが夕飯だけなのは、そのためみたいだな」
情報源は宿屋のおかみさんとの世間話。
宿を出た俺は、昨日爺さんの居た場所——公園へと向かう。覚えた魔法を試してみる為に。広い場所だったので、火はともかく、水風土の魔法を試すのには打ってこいの場所と言えるだろう。
「ん?」
公園には爺さんがいた。のはまあ別にいい。どう考えても無職住所不定だしな。俺が引っかかったのは、ベンチに座る爺さんの前に三人の子供達の姿があったからだ。そしてそのうち一人は見覚えのある子だった。
「あ、お客さん!おはようございます!」
昨日宿で部屋まで案内してくれた少女が、近づく俺に気付いて笑顔で挨拶して来る。
「君は確か宿屋の……」
「はい!娘のコニーです」
「おはようコニー。君は一体ここで何をしてるんだい?」
ホームレス間違いなしの爺さんの前に、子供が三人並んで立っている姿は少々シュールだ。気になったので俺は彼女に尋ねる。
因みに残りの二人は片方がコニーと同年代の少年で、もう一人はそれより歳がいくつか上の少年だ。年上の少年の方は何と言うか……まあ一言で言うと、格好が酷く小汚い。その姿は爺さん寄り。つまり、浮浪児の様な見た目をしていた。
「私、将来は冒険者になりたいんです。だからベゼルお爺さんに色々と教えて貰ってて」
業突く張りっぷりを昨日見せられているので、コニーの言葉に俺は胡乱な目を爺さんへと向ける。
「おいおい、そんな目で人を見るなよ。別にいたいけな少年少女から金をむしり取っっちゃ……まあもちろん少しは頂いてるが、そこはちゃんとお子様価格にしてあるからな。大人相手みたいにボッタくったりはしてねぇよ。だいたい、子供の払える額なんてたかが知れてるだろうが」
大人相手でもボッタ来るなよと思わなくもないが、爺さんの経済状況ならその辺は仕方ないか。まあ浮浪児みたいな少年でも払える範囲な訳だし、破格のお子様価格というのは嘘ではないのだろう。
尤も、安いだけでそれが正当な授業とは限らないが……
「なるほど……それで、どんな内容なんだ?」
「そこは企業秘密よ……ま、地獄の沙汰も金次第ではあるがな」
爺さんがそう言って掌を上に向けた手を俺に差し出す。
「やれやれ」
俺はその掌に100ボル――1000円相当を置く。
この世界の訓練方法には俺も興味があるからな。まあもしそれがあからさまにいい加減な物だったなら、俺の方から子供達に、もう爺さんにはかかわらない方がいいと忠告させて貰う。
「訓練方法だが……お前さんワシの事を疑ってるみたいだから、まずはガキンチョ共の訓練の成果を見せてやるとしよう」
「コニー」
「はい!」
宿屋の娘であるコニーが元気よく右手を上げる。
「ダリム」
「は、はい……」
ダリムと呼ばれた少年は、少しオドオドした感じである。どうやら大人しい、もしくは臆病な性格をしている様だ。
「ベッチ」
「はい」
身なりのあれな少年が、ぼりぼりと頭を掻きながら答えた。その際、視認できる程のふけが豪快に飛ぶ。俺の方にまで。他の子らは気にしていないみたいだが、俺の方に飛ばすのは勘弁して欲しい。
「お前らのオーラを見せてやりな」
「オーラ?」
「ん?なんだ、お前さんオーラも知らないのか?」
俺の疑問の言葉に、爺さんが不思議そうに眉根を寄せる。どうやら知っていて当たり前レベルの常識だった様だ。
「いくら田舎の出でも、オーラは流石に知ってそうなもんだがな?」
「ああいや……まあ多分、呼び方が違うんじゃないかな?うちド田舎だから」
「ああ、成程な。確かに田舎ってのは、独特の方言使ったりするからな。まあいい。じゃ改めて、訓練の成果を見せて見ろ」
若干苦しい言い訳だったが気もしなくもないが、爺さんは特に気にしている様子もないのでまあ結果オーライである。
「「「はい」」」
三人が目を瞑る。その瞬間、俺の背中に悪寒が走った。
これは……
「——っ!?」
……オーラとやらが、あの時感じた物の正体だった訳か。
目を凝らすと、三人の体が薄っすらと光っているのが分かる。そして三人から放たれるちょっとした圧迫感の様な物は、俺が召喚された時に周囲の兵士やローブ姿の人間から感じた物とよく似て――いや、ほぼ同じだった。
但し、明らかに見た目に変化がある彼女達の方が、その圧が弱く感じる。そう考えると、俺の捉えた感覚は同じでも、実際は少し違っているのだろうと思われる。
「どうでい。この年でオーラを生み出せるのは、正に俺の指導の賜物だ。そう、この赤鬼ベゼル様のな!」
爺さんが誇らしげに胸を張る。オーラの事はよく分からないので凄いのか凄くないのか分からないが、これだけは言える。
——払った100ボル分は余裕で回収できそうだ、と。
「食事オプションが夕飯だけなのは、そのためみたいだな」
情報源は宿屋のおかみさんとの世間話。
宿を出た俺は、昨日爺さんの居た場所——公園へと向かう。覚えた魔法を試してみる為に。広い場所だったので、火はともかく、水風土の魔法を試すのには打ってこいの場所と言えるだろう。
「ん?」
公園には爺さんがいた。のはまあ別にいい。どう考えても無職住所不定だしな。俺が引っかかったのは、ベンチに座る爺さんの前に三人の子供達の姿があったからだ。そしてそのうち一人は見覚えのある子だった。
「あ、お客さん!おはようございます!」
昨日宿で部屋まで案内してくれた少女が、近づく俺に気付いて笑顔で挨拶して来る。
「君は確か宿屋の……」
「はい!娘のコニーです」
「おはようコニー。君は一体ここで何をしてるんだい?」
ホームレス間違いなしの爺さんの前に、子供が三人並んで立っている姿は少々シュールだ。気になったので俺は彼女に尋ねる。
因みに残りの二人は片方がコニーと同年代の少年で、もう一人はそれより歳がいくつか上の少年だ。年上の少年の方は何と言うか……まあ一言で言うと、格好が酷く小汚い。その姿は爺さん寄り。つまり、浮浪児の様な見た目をしていた。
「私、将来は冒険者になりたいんです。だからベゼルお爺さんに色々と教えて貰ってて」
業突く張りっぷりを昨日見せられているので、コニーの言葉に俺は胡乱な目を爺さんへと向ける。
「おいおい、そんな目で人を見るなよ。別にいたいけな少年少女から金をむしり取っっちゃ……まあもちろん少しは頂いてるが、そこはちゃんとお子様価格にしてあるからな。大人相手みたいにボッタくったりはしてねぇよ。だいたい、子供の払える額なんてたかが知れてるだろうが」
大人相手でもボッタ来るなよと思わなくもないが、爺さんの経済状況ならその辺は仕方ないか。まあ浮浪児みたいな少年でも払える範囲な訳だし、破格のお子様価格というのは嘘ではないのだろう。
尤も、安いだけでそれが正当な授業とは限らないが……
「なるほど……それで、どんな内容なんだ?」
「そこは企業秘密よ……ま、地獄の沙汰も金次第ではあるがな」
爺さんがそう言って掌を上に向けた手を俺に差し出す。
「やれやれ」
俺はその掌に100ボル――1000円相当を置く。
この世界の訓練方法には俺も興味があるからな。まあもしそれがあからさまにいい加減な物だったなら、俺の方から子供達に、もう爺さんにはかかわらない方がいいと忠告させて貰う。
「訓練方法だが……お前さんワシの事を疑ってるみたいだから、まずはガキンチョ共の訓練の成果を見せてやるとしよう」
「コニー」
「はい!」
宿屋の娘であるコニーが元気よく右手を上げる。
「ダリム」
「は、はい……」
ダリムと呼ばれた少年は、少しオドオドした感じである。どうやら大人しい、もしくは臆病な性格をしている様だ。
「ベッチ」
「はい」
身なりのあれな少年が、ぼりぼりと頭を掻きながら答えた。その際、視認できる程のふけが豪快に飛ぶ。俺の方にまで。他の子らは気にしていないみたいだが、俺の方に飛ばすのは勘弁して欲しい。
「お前らのオーラを見せてやりな」
「オーラ?」
「ん?なんだ、お前さんオーラも知らないのか?」
俺の疑問の言葉に、爺さんが不思議そうに眉根を寄せる。どうやら知っていて当たり前レベルの常識だった様だ。
「いくら田舎の出でも、オーラは流石に知ってそうなもんだがな?」
「ああいや……まあ多分、呼び方が違うんじゃないかな?うちド田舎だから」
「ああ、成程な。確かに田舎ってのは、独特の方言使ったりするからな。まあいい。じゃ改めて、訓練の成果を見せて見ろ」
若干苦しい言い訳だったが気もしなくもないが、爺さんは特に気にしている様子もないのでまあ結果オーライである。
「「「はい」」」
三人が目を瞑る。その瞬間、俺の背中に悪寒が走った。
これは……
「——っ!?」
……オーラとやらが、あの時感じた物の正体だった訳か。
目を凝らすと、三人の体が薄っすらと光っているのが分かる。そして三人から放たれるちょっとした圧迫感の様な物は、俺が召喚された時に周囲の兵士やローブ姿の人間から感じた物とよく似て――いや、ほぼ同じだった。
但し、明らかに見た目に変化がある彼女達の方が、その圧が弱く感じる。そう考えると、俺の捉えた感覚は同じでも、実際は少し違っているのだろうと思われる。
「どうでい。この年でオーラを生み出せるのは、正に俺の指導の賜物だ。そう、この赤鬼ベゼル様のな!」
爺さんが誇らしげに胸を張る。オーラの事はよく分からないので凄いのか凄くないのか分からないが、これだけは言える。
——払った100ボル分は余裕で回収できそうだ、と。
451
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる