ハーレム学園に勇者として召喚されたけど、Eランク判定で見事にボッチです~なんか色々絡まれるけど、揉め事は全て暴力で解決~

榊与一

文字の大きさ
42 / 65

第42話 うわごと

しおりを挟む
「ぐぅ……が、ああ……」

「?」

突然ビートが苦しみだす。
何か悪い物でも食ったのかな?

いや、冗談は置いておいて。
タイミング的に考えて、どう考えても俺が施した覚醒が原因だろう。
もしそれ以外だったら逆にびっくりだ。

「ビート!?」

ビートは顔に脂汗を浮かべ、そのまま机に突っ伏してしまう。
その姿に、バハムトが驚いて声をかけたが反応は帰って来ない。

……一体どうなってるんだ?

爺さんモルモットにかけた時は、苦しむどころか、むしろ絶好調って感じだった。
だから害はないと判断していたので、ビートの反応は正直想定外だ。

覚醒が失敗したのだろうか?
そう思って戦闘力を確認してみると、その数値は3億を超えていた。

覚醒自体は成功している。
まあ数値は思ったほど高くはないが……ん?
まだ数字が上がって言ってるな。

どうやら潜在能力が高すぎて、一気に覚醒出来なかった様だ。
ビートが苦しんでいるのは、残りの力をひり出すために、体に大きな負荷がかかっているためだろうと予想する。
便秘を踏ん張ってる感じと言えば、分かりやすいか。

「ビート!しっかりしなさい!」

「ちょっといいか」

慌てるバハムトを制し、俺はビートに回復魔法をかけた。
肉体のダメージだけではなく、消耗も同時に回復する類のスーパー魔法だ。
ビート如きに使ってやるのは癪な高位魔法だが、原因が俺だし仕方ない。

魔法は一瞬でビートを癒し、藻掻き苦しんでいた奴の荒い呼吸が穏やかになる。

「凄い!こんな魔法見た事ないよ!ボッチン!」

そんな俺の魔法を見て、トラミが席から立ち上がって叫ぶ。
どうやら彼女には、俺が使った魔法がどういった物か理解できた様だ。
アホっぽいガキの癖に、無駄に優秀だなおい。

「ボッチンは超強いだけじゃなくって!魔法も天才級なんだね!」

「ほう……それは興味深いな……」

トラミの言葉に、リヴァイも興味深げに目を輝かせる。
ビートを強化してデコイに使う作戦だったのに、逆に注目を強めるとか、藪蛇も良い所だ。

失敗した。
いや、まだそうとは限らないか。
要はそんな事など気にならないくらい、ビートが強くなればいいのだ。

再度戦闘力を確認すると、その数値は3億5千万にまであがっており、まだその数値は膨らみ続けている。

いいぞう。
このまま5億ぐらいまで上がってくれれば、きっとみんなビートに夢中になってくれるはずだ。
頑張れ、超頑張れ。

「リリ……ス……」

もう苦しんではいないが、まだ意識を失ったままのビートが、うわ言を小さく呟いた。
本当に微かな声だったので、超絶耳のいい俺以外には聞き取れなかっただろうが、間違いなく奴はリリスと口にしている。

リリスか……ひょっとして、この前のおピンクオーラで。ハートを持ってかれてしまったのだろうか?

だとしたら、やめとけとしか言いようが無い。
あれは真実の愛を求める様なタイプじゃないからな。
魔神だし。

いや待てよ。
よくよく考えたら、あの時のリリスは自分をリリアンヌと名乗っていた。
つまり、ビートは彼女の名前を知らない筈なのだ。

となると……同名の別人か。

「やく……そくを……君の……封印を……」

うわ言はまだ続く。
が、それは唐突に途切れる事となる。
バハムトが、魔法でビートの体を覆う球体を生み出したからだ。

それは気絶しているビートを浮かびあがらせる。

「貴方の魔法で状態は安定した様だけど……念のため、彼を医務室に運んでおくわ」

「それは良いけど。気絶してるからって、ビートに悪戯すんなよ」

「はぁ……貴方じゃあるまいし、そんな真似はしないわ」

冗談で言ったら、呆れたと言わんばかりにバハムトに溜息をつかれてしまった。
なぜこんなに俺の人格面の評価が低いのか……解せぬ。

やっぱ顔のせいだろうか?
イケメン原理主義者の女ってのは、すーぐ顔で人の人格まで否定してきやがるからな。
困ったもんだ。

「私はこのまま欠席させて貰うわ」

バハムトはトラミ達にそう告げ、ビートを連れて教室を出て行く。
その後を、取り巻き達が従う。

欠席という事は、看病でもしてポイント稼ぎでもする気なんだろうが……

ビートにはリリスって名の想い人がいる様だから、無駄乙としか言いようが無い。
まあ人間の気持ちは不変じゃないので、絶対に変えられないとは言わないが、ビジネスライクに能力だけでパートナーを選ぼうとするバハムトでは、まあ難しいだろう。

なんせビートが求めてるのは、乙女漫画の主人公張りの純愛な訳だからな。
気持ち悪い事この上なしである。

バハムト達と入れ替わる様に、壮年の女性講師が教室にやって来た。
さあ、糞詰まらない授業の始まりだ。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

処理中です...