ハーレム学園に勇者として召喚されたけど、Eランク判定で見事にボッチです~なんか色々絡まれるけど、揉め事は全て暴力で解決~

榊与一

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第50話 そいつ殺せない!

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「待ってくれ墓地君!リリスは魔神帝に操られているだけなんだ!!だから!!!」

そう叫びながら、ビートが俺と魔神帝との間に割り込んで来る。
何でこいつがリリスや邪神帝の事を知ってるんだ?
後、何でリリスを庇う?

そんな事を思いつつも、俺は自身の行動のため、奴に端的に二言告げる。

「知ってる。邪魔だからどけ」

と。

俺は今から、リリスを殺すつもりだった。
当然即座に蘇生させるつもりなのだが、その事をビートに伝える訳にはいかない。

殺した瞬間、魔神帝がリリスの体から出て行く事を期待しているからだ。
話せば、その目論見が魔神帝にばれてしまう。

ビートに「話がある」とでも言って、こっそり教える事も出来なくはないが……

その場合、魔神帝はきっと何かあると勘繰って来るはず。
そうなると、成功率は間違いなく下がるだろう。
という訳で――

「邪魔する様なら、ぶっ飛ばすぞ」

「墓地君!僕は彼女を愛しているんだ!!だから!!!」

愛?
急に何ってんだこいつ?
気でも狂ったか?

ひょっとして、まさかとは思うけど……俺が勝手に覚醒させたせいじゃないよな?
まさか……ねぇ。

「く……くっくっく。この力の波動。まさか貴様だとはな……」

ビートの狂いっぷりに俺がちょっと焦っていると、背後の魔神帝が楽し気に笑い出す。
まさかビートも、こいつに操られてるって落ちなのか?
いや、流石にそれは無いか。
そんな感じはしないし。

「よもや生きて再び貴様とまみえ様とはな……勇者カモネギよ」

「ラスヴォ―!彼女の体から出て行け!」

俺の方を向いていたビートが半身になって、魔神帝を睨みつける。
そこから放たれる殺気は本物だった。
どうやら、相当お冠の様だ。
善良を地で行くビートにしては珍しい。

「カモネギ……本当にカモネギなの?」

オーラ状態のリリスが口元に手を当て、驚愕に目を見開く。
相当驚いている様だ。

つか……カモネギって、魔神帝と戦って死んだ勇者の名前だよな。
なんでビートがカモネギなんだ?

何が何だか、チンプンカンプンである。

「随分と待たせてしまったね……リリス」

「ああ、そんな……本当にあなたなのね……」

リリスが両手で口元を覆う。
その両目からは、涙っぽい物が――オーラの状態なので実際は涙ではない――零れ落ちた。

カモネギとリリスが恋仲だってのは、さっきの魔神帝と彼女との会話で俺も知っている。
もし本当にビートイ=カモネギなのだとしたら、離れ離れになった恋人同士が数百年の時を超えて再会した事になる。

それは凄く、感動的なシーンなのだろうが……

そんなもん、全裸で鑑賞する趣味はないんだが?

全裸で待機させられるこっちの身にもなって欲しい物だ。
取り敢えず隙だらけなので――

「邪魔だから寝てろ」

「ぐっ……」

ビートの顔面に一発入れる。

再会ごっこは全部終わってからにして貰う。
その時は、邪魔する様な野暮な真似はしないさ。
お前らだって、全裸男の横で感動のシーンとかしたくないだろ?

が――

「墓地君!」

「あれ?」

ビートは覚醒して相当戦闘力が上がっていたので、そこそこ強目に殴ったつもりなのだが、あっさり耐えられてしまった。
慌てて俺は、奴の戦闘力を確認する。

10億?

精々5-6億ぐらいを想定押していたのだが、確認したビートの戦闘力は俺の予想を遥かに超えた物だった。
元値が2千万だった事を考えると、そのパワーアップは約50倍だ。

どこのスーパーな宇宙人だよ!
一気にインフレし過ぎだろうが!

「頼む!彼女を傷つけないでくれ!!」

仕方がない。
ここは勇者らしく――

「ビート!邪魔するってんなら徹底的にぶっとっばす!」

――力で制圧だ!

「やらせない!!」

「なにっ!?」

ビートに、遠慮なくフルパワーの顔面パンチを放つ。
だが奴は俺の手首を掴んでそれを止めてしまう。
仕方がないので逆の手で殴ろうとしたら、それも掌で受け止められてしまった。

「く……どうなってんだ!?」

受け止められた事も驚きだが、掴まれた腕が振り払えない。
戦闘力は此方の方が3割ほど上だってのに、おかしいだろ。
俺は再度、ビートの戦闘力を確認してみた。

すると奴の戦闘力は――

「12億だと!」

――さらに上がっていた。

こういうのを、勇者しゅじんこう補正と言うのだろうか。
俺には絶対ない物だ。
お蔭で面倒臭さ倍増である。

……ビートの癖に生意気な。

「僕はリリスを守る!!」

「ははは!いいぞカモネギ!」

ビートが俺を押さえ込んでいるのを良い事に、魔神帝が調子に乗って背後から攻撃を仕掛けて来る。

「舐めんな!」

「くっ……」

「がぁぁ!」

それを俺は全身からエネルギーを放ち、ビートごと弾き飛ばして防いだ。

「死ね!」

「やらせない!」

今度こそトドメを、と。
魔神帝に向かって攻撃するが、ギリギリのところでビートに割り込まれて妨害されてしまう。

後もうちょっとだったってのに、「お兄ちゃんどいて!」ごっこじゃねーんだぞ。
くそが!

「とことん邪魔する気かよ」

「言った筈だ。リリスは僕が守る」

融通の利かない奴だ。
いやまあ、愛する相手を目の前で殺されそうな状態でする融通って、何だよって言われるとあれだが。

しょうがない。
かなり面倒臭いが、魔神帝の事はこいつをしっかり処理してからだ。
頼むから、もうこれ以上強くなってくれるなよ。

「オラァ!」

「やらせない!!」

俺の本気の拳を、ビートが受け流す。
戦闘力で勝っている俺が終始押すが、ビートは負けじと食らいついて来る。

魔神帝が欲を出して手を出してくれれば、カウンターで殺すチャンスもあるのだが、奴もその辺りを理解してかその場からは全く動こうとしない。
これは本格的に長期戦になりそうだ。

「墓地君、ストップだ」

「あん?」

殴り合いの際中、ビートが急に待ったをかけて来る。
やっと諦める気になったのだろうか?

「もう既に、ここには魔神帝はいない」

「何言ってんだ?」

ビートの背後には、ちゃんと魔神帝がいる。
奴は微動だにせず、此方を睨みつけたままだ。

ん?
あれ?
ひょっとして……

「幻覚か何かか……」

「ああ」

動かないとは思っていたが、まさか幻覚を残して逃げていたとは……
まったく気づけなかった。
どうやらビートと魔神帝に、完全に一杯食わされてしまった様だ。

「あいつが逃げる時間を稼いでたって訳か……」

「すまない墓地君。僕はどうしても、リリスを守りたかったんだ」

こいつ、すまないの一言で済ます気かよ。
ビート本人なら「それなら仕方がないね」とか言って笑顔で許しそうだが、俺はそんなお人好しではない。
取り敢えず、ぶん殴っておくとしよう。

「ぐわっ!?」

まさか殴られると思っていなかったのだろう、ビートの顔面に俺の拳がクリティカルヒットした。

「うっ……つぅ……」

「まあこの一発で許しておいてやる」

あれだけふざけた事をされたにも拘らず、この程度で許してやる俺の寛容さよ。
正に勇者の鑑と言っていいだろう。

「あ、ありがとう」

「で?逃がしちまってどうするつもりだ?魔神帝とか、放っておいたら絶対ろくな事しないぞ」

魔神帝は、俺が今まであった中でダントツ最低の糞野郎だった。
元々この世界を滅ぼそうとしていた事も鑑みて、きっと碌でもない事を始める筈だ。

「放ってはおかないさ。リリスを救うためにも……僕は魔神帝本体を倒す」

リリスに取り付いた奴ではなく、魔神帝本人を倒す。
ビートはそう、俺に力強く宣言した。
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