ハーレム学園に勇者として召喚されたけど、Eランク判定で見事にボッチです~なんか色々絡まれるけど、揉め事は全て暴力で解決~

榊与一

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第54話 完!

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「取り敢えず……」

魔神帝は両手を組んだまま、特に動きを見せない。
逃がす気はなくとも、多少は時間をくれる様だ。
ま、神に祈る時間をくれてやるって感じだろう。

「リリスを回復しとくか」

外見的な損傷はそれほど大きくはない様に見える。
が、見えないだけで大きなダメージをおっていないとも限らない。
回復魔法をかけてやる事にする。
ああ、言うまでもないが……これは気遣いからくる行動じゃないぞ。
こいつにも戦わせるためだ。

「墓地君、頼む」

ビートが抱きしめているリリスに、俺は回復の魔法をかけた。
魔人だから回復魔法で逆にダメージが……
なんて事はなく、リリスの体はきちんと回復する。

「うぅ……ん……」

回復したリリスが、起きそうで起きない微妙に色っぽい呻き声を上げる。
魔神帝の奴が、いつまでものん気に待っていてくれるとは限らないので――

「さっさと起きろぼけ!」

「あぎゃっ!?」

リリスの顔面を勢いよくビンタ――ダメージ通るバージョン――して叩き起こした。

王子様ビートならキスで優しくって感じなのだろうが、こちとら乱暴狼藉らんぼうろうぜきを売りにしてる山賊みたいなもんだからな。
モーニングコールも当然山賊流である。

「ぼ、墓地君!?」

「グースか寝てる場合じゃねぇだろ」

「う……つぅ……いたた……何が……」

効果は抜群!
やはり目覚ましには、暴力こそ至高。
俺はそう確信する。

「大丈夫かい?」

「カモ……ネギ?」

「ああ、僕だ」

「私……貴方に会いたかった。もう一度だけでもって……夢じゃないのね」

意識を取り戻したリリスが、ビートを抱きしめ涙を流す。
普段ならこの状況に水を差すような真似は、流石の俺でもしない。
が、人生ラスト待ったなしの状況で他人のいちゃつきなんざ見たくもないので、横やりを入れて止める。

「夢じゃない所か、悪夢みたいな状況だぞ。なにせお前の親父が復活した上に、超絶パワーアップして御満悦サムズアップ状態だからな」

「――復活っ!?そんな……」

ビートの肩に寄せていたリリスの顔が跳ね上がり、慌てて周囲を見渡す。
そして魔神帝を見つけ、その両手で口元を覆う。

「このまま戦ったら、まあ百パー全員あの世行きだ。三途の川を渡るチャーター便の予約を、もう入れてもいいぐらい確実に」

まあそんな川が本当にあるのかは知らないが。
まあ神様がいるぐらいだから、実際に存在してもおかしくはないだろう。

「という訳で――」

俺はリリスの顔面を右手で鷲掴みにする。
別に鬱憤晴らしに、アイアンクローをかける訳ではない。

「きゃっ!?」

「墓地君何を!?」

「――覚醒させる」

「えっ!?」

俺は覚醒の能力を使い、リリスを覚醒させる。
魔神帝との戦いは、こいつの力次第ではワンちゃん可能性がなくもない。
出来れば、出鱈目に強くなって欲しい物である。

え?
強くしてもまた操られるだけじゃないかって?

まあそん時はそん時だ。
どちらにせよ、今のままじゃ勝ち目の無い勝負だからな。

魔神帝にぶち殺されるか。
魔神帝ウィズリリスのコンビにぶち殺されるか。

その違いでしかない。
極些細な事だ。

だったら、リリスがパワーアップして魔神帝の奴の支配権をはじき返せる位強くなる事に期待して賭けるのは、当然の行動だろ?

「か、体から力が沸き上がって来るわ……」

俺はリリスの顔面から手を離し、その戦闘力を計測する。

5億……6億……

リリスの戦闘力が順調に上がっていく。

鯉のぼりみたいに、天まで上ってくれていいんだぞ?

「やっぱり、僕を覚醒してくれたの墓地君だったのか……」

「おう、大失敗だったがな」

安保解き覚醒とか余計な事をしてなければ、きっと今の事態はきっと防げた事だろう。
ま、過ぎた事である。

「ふむ……」

リリスの戦闘力の上昇が止まる。
その数値は――

「10億か……」

低くはないが、残念ながら俺やビート以下だ。
もう一声二声欲しかった数値だ。

つまり……勝ち目は相変わらず0!

俺は小さく溜息を吐き。
伝説の名台詞。
その真逆の言葉を口にする。

「諦めなくても……どう見ても試合終了です。本当にありがとうございました」

完!








続く
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