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EP:135 言われたくない言葉

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(髪…伸びたな)

 横目でセスナがフロイを見ていた。
 それにゲイリーが気づいて、目を細めた。
 視線が合ったことにセスナも驚いて。

「‼ つぅか! なんだって手前は裸なんだよ! 囚人服つなぎはどこだ!」

 狼狽えながら言うセスナに、
「…シャワー室なんだから裸に決まってるでしょー」
 ゲイリーも嫌々に応えた。
「囚人服は上にかけててるんだよー」
 指で、それを知らせた。

「それよりもー…もう少し。言うことないのー君はー」

 ゲイリーが唇を突き出して聞いた。
 それに、
「はァ?? 俺様がか?? 何をだよ!?」
 セスナが声を荒げて、
「んなの知らねェよ! いいから着ろよ! んで、この洪水を片付けるぞ!」
 腕まくりをしながら言う。
 そんな彼に、ゲイリーは頬を膨らませて俯いていく。
 ゲイリーの様子に安住も、
「? どうかした? どっか痛いのか?? あ! あの日??」
 ゲイリーに声をかけた。

「「!?」」

 その言葉に。
 セスナとフレディが反応し。
 耳を大きく傾けた。

「終わったよ…4日前に。終わらないとーアズミとーお風呂に入れないしー」

 ゲイリーの言葉に。
 っぐ! と拳にする2人に、フロイも鼻息を吐いた。
 そして、何を思ったのか。

「…ゲイリー。君は髪――短い方がよかったんじゃないの? 似合っていないよ」

 ただ、そんな言葉に異を唱えたのは。
 まさかの――

「んなこたねェよ! 似合ってるよ! 可愛いよ! 股間にクるくらいにな!」

「!? っちょ! セス――ボンゾイさんンんンン?? 何を言ってるんですか?!」
「‼ ぁ゛…や! っだ、だからッッ! っそ、っだ! だから‼ ぁ゛ー~~っつ!」

 セスナのまさかの告白にフレディも慌ててしまう。
 自身だって言いたかったが。
 飲み込んだ言葉だったからだ。

「…似合うってー本当ー?」

 おずおず、とゲイリーがセスナに聞いた。
 上目遣いに。

「‼ ぁ、ああ! 似合ってるよ‼ 本当になぁああ‼」

 その言葉にゲイリーも顔をほこらばせた。
 にっこりと笑顔をセスナに向けた。

「君が伸ばせっていったからーつい、伸ばしちゃったんだー」

 長い髪を指でくるん! とカールをさせた。
「うん! 本当に似合うよ! ゲイリー!」 別人みたいでびっくりしたもん!」
 裸のゲイリーに抱き着いたまま、安住も大きく頷く様子に。

「ありがとー」

 頬を染めて言うゲイリーに、ばさ! と囚人服をセスナが投げた。

「いいから! っと、とと、着ろってんだよ! 馬鹿が! 風邪を引きたいのかよ!?」

「あーうん…だねー」

 安住も身体を離すと。
 襟足をセスナが掴み引っ張った。

「っちょ! 何? 何?? なんなの??」

「着替えんだから! 野郎は出んだよ!」

 そう言うセスナに、安住も頷いたが。
 洪水の中を引きずられてしまい。
(冷たい…尻が…尻が…)
 身体も震える安住だった。

 ◆

 4人は水モップで床を拭き。
 水を吸引し終えた。

「っはー~~つぅか! なんだってこんなことになった? ゲイリー!」

 怒りにセスナがゲイリーに聞いた。
 聞かれたゲイリーはベッドの上に居た。
 どうしてだか。免除されたからだ。

「えー帰って来たらアズミは居ないしーでもー露天風呂も行けないしー折角だからー久しぶりにシャワー室を使おう! って思ったらーこーなっちゃったんだよー~~」

 身体を横たえて左右に振る。

「…どうして。露天風呂に行かなかったの?」

 フロイが水モップの柄に顎を置いて聞く。
 その質問に、
「そぅいや。なんでだよ? 終わったんなら入れんだろ。風呂にゃあ」
 セスナも質問をする。

「監視カメラからー看守さん達に見られたら怖いしーここが死角だからー隠れていようかなーって思ったんだよー」

 看守さん達に見られたら怖い。
 その言葉にセスナの眉間にしわが寄る。

「それだけかよ? おい…」

「あと…ボクー君達に会いたくなかったんだよ…」

 ガランンンッッ‼‼

 ゲイリーの言葉に、セスナは無意識に。
 彼のベッドに飛び上がっていた。

 ギシ! とベッドも軋んだ。

「わ゛!」

 その行為に。そんな行動に。
 思いもしないセスナにゲイリーも声を上げた。

「!? ボンゾイ‼ お前‼」

 獰猛な獣のようなセスナにフレディも走ろうとしたが。
 それをフロイが肩を掴んで止めた。
「君まで行って。殺傷沙汰はご免だよ」
「――~~っつ‼」

「ただ。僕が肩を離したら――刺してもいいよ。目を瞑るから」
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