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第2章 王都へ
99 盗賊団⑫
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土の囲いがなくなり、ハンクさんたちの姿を見つけた瞬間の盗賊たちの喜び様は凄かった。
「人だ!人がいるぞ」
「た、助けてくれっ!」
「素直にお縄につくからっ!俺たちをあの竜がいない場所に今すぐ連れて行ってくれっ!」
「お願いしますっ!お願いしますっ!」
素直に盗賊たちは捕縛され、一緒に捕まってた馬の背に括りつけられても、文句ひとつ言わない。
そんな盗賊たちの様子を見たハンクさんたちのこちらを見る眼差しに、大声で違うのだと叫びたくなる。
だけど、アランさんたちに盗賊たちに誤解されたままの方がハンクさんたちが連れて行きやすいと諭されて、諦める。
「お前たちっ!もし逃げようと少しでも考えたら、竜で追い回して、もう一度暗闇の中に閉じ込めてやるからなっ!」
「「「「「ヒイイイィッ!!」」」」」
アランさんが盗賊たちに向かって脅すと、盗賊たちは怯え、中には白目を剥いて気絶するものまでいた。
「これぐらい脅しておけば、こいつらも変な真似はしないだろう」
「そうね。では予定通りハンクさんたちに後は任せて、私たちはこのままフィッツ町に向かいましょうか」
「ん」
「じゃあ、ロンさんそう言うことなので、よろしくっ」
「了解」
盗賊たちの様子をはらはらしながら見ている内に、アランさんたちの話し合いは終わったらしい。
ハンクさんに手を振って別れを告げると、私たちはようやくフィッツ町に向かうことになった。
*****************
「フィッツ町が見えてきたよ!町の向こうに海が広がっているのが見えるかい?」
クラウジアさんの指し示す先には、オレンジ色の屋根に白い壁の家がたち並び、今まで見たどの町よりも大きな町並みがあった。
でも、私たちの興味の対象は町ではなく海だ。
「海ってあれのことっ⁉️」
「すげーっ!」
「あんなに大きいなんて知らなかった」
「キラキラ光ってきれいだねっ!」
みんなで海の感想を言い合う。
川の水と違って海は青く煌めいていて、とても綺麗だった。
「早く下に降りて、もっと近くで見てみたいね」
「わたしは町の観光を先にしたいわ!かわいいリボンがあったら買うの」
「あたしはここにしかない食材があったら見てみたいなぁ。父ちゃんに教えてあげるの!でも海も見たいし、悩むなぁ」
「俺は海に入ってみたいな!」
みんなで話してたら、さっきまでのモヤモヤもすっかりどこかに行ってしまった。
誤解されたままなのは悲しいけれど、もう終わったことだし、あの盗賊たちには二度と会うことはないだろうから、あの事は忘れて観光を楽しもう。
「あ。停留所が見えてきたよ」
停留所は意外にも町の規模のわりには小さかった。
マール町と同じ位の広さかな?
「思ったより小さいんだな」
ハル君も私と同じ感想を抱いたみたいで、停留所を見ながら呟いている。
「ここは港があるからね。空からの訪問客は少ないから、必要最低限の設備になっているんだよ。ほら、海にはたくさんの船が停まっているだろ?」
クラウジアさんの言う通り、海には小さいものから大きいものまで、たくさんの船が止まっていた。
「あれが船…」
始めてみる船に興奮が隠せない。
「あたしの町にある渡し船とは全然違うのね」
アミーちゃんは船を見たことがあるみたいだけど、その船とは見た目が違うみたい。
トントントン
「はい」
「アランです。停留所に降りる許可がでたので、これより降下します」
「わかった」
アランさんから声をかけられ、しばらくして、微かな振動を感じる。
ズシン
「遂にあの時間がやって来てしまったわね」
「キャシーちゃん大丈夫?」
心配になって聞くけど、今回のキャシーちゃんはひと味違った。
「今回は秘策があるからっ!」と不適に笑う。
「秘策って、あんまり過信しすぎないでよ」
秘策を教えたアミーちゃんは、逆に自信なさげた。
「なんだか妙に自信があるのよ。だから大丈夫!町で観光するためにも、わたし頑張る!」
そうこうするうちに、竜篭から下りるときがやって来た。
今回はキャシーちゃんたっての希望でキャシーちゃんが一番先に下りることになった。
「じゃあ、行ってくる!」
キャシーちゃんはシーラさんの背中で、椅子の上に足をのせて、顔を手で覆うとそのまま下りていく。
私たちは入り口の前に陣取り、その姿をじっと見つめる。
最後まで梯子を下りきった後、キャシーちゃんが自分の足で椅子から下りるのが見えた。
こちらを振り向きピースサイン。
顔は少しこわばっていたけれど、初めて笑顔が見えた。
「「「やったーっ!」」」
遂にキャシーちゃんは克服したのだ!
みんなで喜び合っていると、クラウジアさんがそんな私たちの姿をまた眩しげに見ていた。
「ルークも病気が治ったら、友達とこんな風に喜んだり、励まし合ったりできるようになるんだ」
クラウジアさんの呟きは私たちの歓声にかき消され、誰の耳にも届くことはなかった。
---
1/11 一部文章を修正しました。
誤:盗賊たちは怯え、中には白目を《向いて》気絶するものまでいた。
正:盗賊たちは怯え、中には白目を《剥いて》気絶するものまでいた。
誤:クラウジアさんの指し《しめす》先には、
正:クラウジアさんの指し《示す》先には、
「人だ!人がいるぞ」
「た、助けてくれっ!」
「素直にお縄につくからっ!俺たちをあの竜がいない場所に今すぐ連れて行ってくれっ!」
「お願いしますっ!お願いしますっ!」
素直に盗賊たちは捕縛され、一緒に捕まってた馬の背に括りつけられても、文句ひとつ言わない。
そんな盗賊たちの様子を見たハンクさんたちのこちらを見る眼差しに、大声で違うのだと叫びたくなる。
だけど、アランさんたちに盗賊たちに誤解されたままの方がハンクさんたちが連れて行きやすいと諭されて、諦める。
「お前たちっ!もし逃げようと少しでも考えたら、竜で追い回して、もう一度暗闇の中に閉じ込めてやるからなっ!」
「「「「「ヒイイイィッ!!」」」」」
アランさんが盗賊たちに向かって脅すと、盗賊たちは怯え、中には白目を剥いて気絶するものまでいた。
「これぐらい脅しておけば、こいつらも変な真似はしないだろう」
「そうね。では予定通りハンクさんたちに後は任せて、私たちはこのままフィッツ町に向かいましょうか」
「ん」
「じゃあ、ロンさんそう言うことなので、よろしくっ」
「了解」
盗賊たちの様子をはらはらしながら見ている内に、アランさんたちの話し合いは終わったらしい。
ハンクさんに手を振って別れを告げると、私たちはようやくフィッツ町に向かうことになった。
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「フィッツ町が見えてきたよ!町の向こうに海が広がっているのが見えるかい?」
クラウジアさんの指し示す先には、オレンジ色の屋根に白い壁の家がたち並び、今まで見たどの町よりも大きな町並みがあった。
でも、私たちの興味の対象は町ではなく海だ。
「海ってあれのことっ⁉️」
「すげーっ!」
「あんなに大きいなんて知らなかった」
「キラキラ光ってきれいだねっ!」
みんなで海の感想を言い合う。
川の水と違って海は青く煌めいていて、とても綺麗だった。
「早く下に降りて、もっと近くで見てみたいね」
「わたしは町の観光を先にしたいわ!かわいいリボンがあったら買うの」
「あたしはここにしかない食材があったら見てみたいなぁ。父ちゃんに教えてあげるの!でも海も見たいし、悩むなぁ」
「俺は海に入ってみたいな!」
みんなで話してたら、さっきまでのモヤモヤもすっかりどこかに行ってしまった。
誤解されたままなのは悲しいけれど、もう終わったことだし、あの盗賊たちには二度と会うことはないだろうから、あの事は忘れて観光を楽しもう。
「あ。停留所が見えてきたよ」
停留所は意外にも町の規模のわりには小さかった。
マール町と同じ位の広さかな?
「思ったより小さいんだな」
ハル君も私と同じ感想を抱いたみたいで、停留所を見ながら呟いている。
「ここは港があるからね。空からの訪問客は少ないから、必要最低限の設備になっているんだよ。ほら、海にはたくさんの船が停まっているだろ?」
クラウジアさんの言う通り、海には小さいものから大きいものまで、たくさんの船が止まっていた。
「あれが船…」
始めてみる船に興奮が隠せない。
「あたしの町にある渡し船とは全然違うのね」
アミーちゃんは船を見たことがあるみたいだけど、その船とは見た目が違うみたい。
トントントン
「はい」
「アランです。停留所に降りる許可がでたので、これより降下します」
「わかった」
アランさんから声をかけられ、しばらくして、微かな振動を感じる。
ズシン
「遂にあの時間がやって来てしまったわね」
「キャシーちゃん大丈夫?」
心配になって聞くけど、今回のキャシーちゃんはひと味違った。
「今回は秘策があるからっ!」と不適に笑う。
「秘策って、あんまり過信しすぎないでよ」
秘策を教えたアミーちゃんは、逆に自信なさげた。
「なんだか妙に自信があるのよ。だから大丈夫!町で観光するためにも、わたし頑張る!」
そうこうするうちに、竜篭から下りるときがやって来た。
今回はキャシーちゃんたっての希望でキャシーちゃんが一番先に下りることになった。
「じゃあ、行ってくる!」
キャシーちゃんはシーラさんの背中で、椅子の上に足をのせて、顔を手で覆うとそのまま下りていく。
私たちは入り口の前に陣取り、その姿をじっと見つめる。
最後まで梯子を下りきった後、キャシーちゃんが自分の足で椅子から下りるのが見えた。
こちらを振り向きピースサイン。
顔は少しこわばっていたけれど、初めて笑顔が見えた。
「「「やったーっ!」」」
遂にキャシーちゃんは克服したのだ!
みんなで喜び合っていると、クラウジアさんがそんな私たちの姿をまた眩しげに見ていた。
「ルークも病気が治ったら、友達とこんな風に喜んだり、励まし合ったりできるようになるんだ」
クラウジアさんの呟きは私たちの歓声にかき消され、誰の耳にも届くことはなかった。
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1/11 一部文章を修正しました。
誤:盗賊たちは怯え、中には白目を《向いて》気絶するものまでいた。
正:盗賊たちは怯え、中には白目を《剥いて》気絶するものまでいた。
誤:クラウジアさんの指し《しめす》先には、
正:クラウジアさんの指し《示す》先には、
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