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第2章 王都へ
謁見の裏側で(中)
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一歳半になったフェビラルはラブュの名前を言えるまでに成長していた。嬉しい反面、ラブュにとっては苦痛の日々の始まりだった。
『えっ?今日もフェビラルに会えないの?』
「フェビラルは熱を出してしまいまして、今は私室で安静にしてます」
ラブュの存在は王族以外ではごく少数が知るのみで秘匿されてきた。なので、王子といえども秘密を守れる年齢になるまではラブュとの接触を制限されるのだ。フェビラルがラブュの名前を口に出した瞬間から、ラブュはフェビラルと気軽に会うことができなくなってしまった。ここ数ヵ月ほどフェビラルと全く会えない日々が続き、今日こそはと国王を半ば脅迫し、パウエルが同伴すると言う条件付きで、フェビラルと会える時間をもぎ取ったのだ。しかし、約束の時間に現れたのはパウエルのみだった。
『まぁ⁉️大変じゃないの!すぐに治癒魔法を』
「ラブュ様、フェビラルは軽い風邪ですから。子供のうちはすぐに風邪を引くものです。ラブュ様が治癒魔法をかけるほどのことではありません」
『でも…』
「それに、部屋にはフェビラル以外の人間もおります。フェビラルの風邪がなおったらすぐにお知らせしますから、今日のところは」
『そうね、わかったわ。ちゃんと教えてね』
「はい。もしよろしければ、空いた時間は私が話相手になりましょうか?」
「時間は大丈夫なの?」
「はいっ!」
会えなくてがっかりしたけれど、病気なら仕方がない。諦めてパウエルに話し相手になってもらう。
まさか、これ以降フェビラルに全く会えなくなるなんて、この時のラブュは全く想像すらしていなかった。
「パウエル王太子様、いらっしゃいませんね」
「ぱう?」
「そうです。フェビラル様の兄君のパウエル王太子様です。本日はフェビラル様に会いに来る予定でしたのに。いつ、いらっしゃるのかしら?」
「ごめんっ!遅くなった」
「パウエル王太子様!」
パウエルの登場で、乳母は慌てて礼をとる。
急いできたのだろう、軽く汗をにじませ、肩で息をしている。
「書物に集中していて、気づいたらこんな時間になってしまった」
「そうだったのですか」
「お父様にはあまり勉強に根を詰めすぎるなと言われていたのに恥ずかしいな」
「そんなっ!ご立派なことですわ」
「ありがとう。もし、お父様に聞かれたら、私は最初からフェビラルと遊んでいたって伝えてくれる?お父様を心配させたくないんだ」
「はいっ!お任せください。そうだわ、今お茶をお出ししますね」
「ありがとう」
乳母はパウエルの言葉になんの疑いも持たず、お茶をいれにいく。その姿が見えなくなるまで見送った後、パウエルはフェビラルに近づく。
「今、ラブュ様に会ってきたよ」
「らぶー?」
「私が会いに行ったのに、ラブュ様はお前の話ばっかりだったよ。瞳の色が初代国王と一緒だからって、こうまで対応が違うなんておかしいと思わないか?」
「ふみゃっ」
優しい語り口調ながら、フェビラルを見る目が恐ろしく冷たい。
フェビラルが怯えているのも構わず、パウエルは話し続ける。
「フェビラルには渡さない。王の座も精霊も手にいれるのは私だ」
*****************
『ラブュよ、久しぶりだな』
『お、お久し振りでございます』
モスに声をかけられ、土下座姿のまま挨拶をする。このときのラブュは愛しいフェビラルの姿を見る余裕もなかった。
『そんな所でうずくまって震えてないで、こっちにいらっしゃいな。わたくし、貴女にお話ししたいことが沢山ありますの』
『私たちが城に入ったときから、気づいてたんでしょう?何で挨拶に来なかったのよ。アクアが寂しがってたわよ?』
『も、申し訳ありませんっ!気づいたのが先程で!すぐに謁見の間をご用意させていただきました!』
ガタガタ震えながらもなんとか口にする。先にアクアたちに会うことも考えたが、少女を後回しにしたら恐ろしい事態になる予感がしたのだ。
守役の精霊たちが少女に加護を与えたと言うことは考えられることは一つ。
『あの少女が精霊お『ああ"っ⁉️』ひっ!ごめんなさ~いっ!』
どうやら精霊王様の話は禁句だったらしい。リードのドスの聞いた声に、とっさに逃げだしてしまう。
『あ、逃げたぞっ!』
『わたくしと鬼ごっこでもしたいのかしら?ラブュったら、いつまでたって甘えん坊さんね』
アクアの恐ろしい言葉に足がすくむが、足を止めるわけにはいかない。必死になって城中を逃げ回るけれど、多勢に無勢で結局は捕まってしまう。
『さあ、"お話し"しましょ?』
アクアの満面の笑みに、思わず涙が零れる。でも、こんな時に答える言葉は一つしかない。
『はいっ、喜んで!』
『まずは精霊王様とサラ様の関係をどこまで知っているのかしら?』
『か、風の精霊たちの噂話で精霊王様が条件付きである少女のそばにいると聞きました』
『そう。その事を王族の人間には?』
『誰にも、誰にも言ってません!』
『これからも言わないでおくことね』
王族の人々の命が大切ならば…
アクアの心の声が聞こえた気がした。
『はいっ!』
必死になって首を縦に振ると、アクアは満足そうに頷き、ラブュを解放する。
これで終わりかと喜ぶラブュだが、アクアたちの尋も…、お話はまだ終わらなかった。
---
過去と現在の話をのせているので、読みにくかったらすみません💦
そして後もう一話続きます。
『えっ?今日もフェビラルに会えないの?』
「フェビラルは熱を出してしまいまして、今は私室で安静にしてます」
ラブュの存在は王族以外ではごく少数が知るのみで秘匿されてきた。なので、王子といえども秘密を守れる年齢になるまではラブュとの接触を制限されるのだ。フェビラルがラブュの名前を口に出した瞬間から、ラブュはフェビラルと気軽に会うことができなくなってしまった。ここ数ヵ月ほどフェビラルと全く会えない日々が続き、今日こそはと国王を半ば脅迫し、パウエルが同伴すると言う条件付きで、フェビラルと会える時間をもぎ取ったのだ。しかし、約束の時間に現れたのはパウエルのみだった。
『まぁ⁉️大変じゃないの!すぐに治癒魔法を』
「ラブュ様、フェビラルは軽い風邪ですから。子供のうちはすぐに風邪を引くものです。ラブュ様が治癒魔法をかけるほどのことではありません」
『でも…』
「それに、部屋にはフェビラル以外の人間もおります。フェビラルの風邪がなおったらすぐにお知らせしますから、今日のところは」
『そうね、わかったわ。ちゃんと教えてね』
「はい。もしよろしければ、空いた時間は私が話相手になりましょうか?」
「時間は大丈夫なの?」
「はいっ!」
会えなくてがっかりしたけれど、病気なら仕方がない。諦めてパウエルに話し相手になってもらう。
まさか、これ以降フェビラルに全く会えなくなるなんて、この時のラブュは全く想像すらしていなかった。
「パウエル王太子様、いらっしゃいませんね」
「ぱう?」
「そうです。フェビラル様の兄君のパウエル王太子様です。本日はフェビラル様に会いに来る予定でしたのに。いつ、いらっしゃるのかしら?」
「ごめんっ!遅くなった」
「パウエル王太子様!」
パウエルの登場で、乳母は慌てて礼をとる。
急いできたのだろう、軽く汗をにじませ、肩で息をしている。
「書物に集中していて、気づいたらこんな時間になってしまった」
「そうだったのですか」
「お父様にはあまり勉強に根を詰めすぎるなと言われていたのに恥ずかしいな」
「そんなっ!ご立派なことですわ」
「ありがとう。もし、お父様に聞かれたら、私は最初からフェビラルと遊んでいたって伝えてくれる?お父様を心配させたくないんだ」
「はいっ!お任せください。そうだわ、今お茶をお出ししますね」
「ありがとう」
乳母はパウエルの言葉になんの疑いも持たず、お茶をいれにいく。その姿が見えなくなるまで見送った後、パウエルはフェビラルに近づく。
「今、ラブュ様に会ってきたよ」
「らぶー?」
「私が会いに行ったのに、ラブュ様はお前の話ばっかりだったよ。瞳の色が初代国王と一緒だからって、こうまで対応が違うなんておかしいと思わないか?」
「ふみゃっ」
優しい語り口調ながら、フェビラルを見る目が恐ろしく冷たい。
フェビラルが怯えているのも構わず、パウエルは話し続ける。
「フェビラルには渡さない。王の座も精霊も手にいれるのは私だ」
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『ラブュよ、久しぶりだな』
『お、お久し振りでございます』
モスに声をかけられ、土下座姿のまま挨拶をする。このときのラブュは愛しいフェビラルの姿を見る余裕もなかった。
『そんな所でうずくまって震えてないで、こっちにいらっしゃいな。わたくし、貴女にお話ししたいことが沢山ありますの』
『私たちが城に入ったときから、気づいてたんでしょう?何で挨拶に来なかったのよ。アクアが寂しがってたわよ?』
『も、申し訳ありませんっ!気づいたのが先程で!すぐに謁見の間をご用意させていただきました!』
ガタガタ震えながらもなんとか口にする。先にアクアたちに会うことも考えたが、少女を後回しにしたら恐ろしい事態になる予感がしたのだ。
守役の精霊たちが少女に加護を与えたと言うことは考えられることは一つ。
『あの少女が精霊お『ああ"っ⁉️』ひっ!ごめんなさ~いっ!』
どうやら精霊王様の話は禁句だったらしい。リードのドスの聞いた声に、とっさに逃げだしてしまう。
『あ、逃げたぞっ!』
『わたくしと鬼ごっこでもしたいのかしら?ラブュったら、いつまでたって甘えん坊さんね』
アクアの恐ろしい言葉に足がすくむが、足を止めるわけにはいかない。必死になって城中を逃げ回るけれど、多勢に無勢で結局は捕まってしまう。
『さあ、"お話し"しましょ?』
アクアの満面の笑みに、思わず涙が零れる。でも、こんな時に答える言葉は一つしかない。
『はいっ、喜んで!』
『まずは精霊王様とサラ様の関係をどこまで知っているのかしら?』
『か、風の精霊たちの噂話で精霊王様が条件付きである少女のそばにいると聞きました』
『そう。その事を王族の人間には?』
『誰にも、誰にも言ってません!』
『これからも言わないでおくことね』
王族の人々の命が大切ならば…
アクアの心の声が聞こえた気がした。
『はいっ!』
必死になって首を縦に振ると、アクアは満足そうに頷き、ラブュを解放する。
これで終わりかと喜ぶラブュだが、アクアたちの尋も…、お話はまだ終わらなかった。
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過去と現在の話をのせているので、読みにくかったらすみません💦
そして後もう一話続きます。
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