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第3章 王立魔法学校入学編

155 授業1日目⑤

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召喚学の授業が終わっても、貴族科の生徒から声をかけられることはなかった。ちなみにジャスパー君たちは授業が終わったと同時にすごい勢いで教室を出ていった。レベッカ先生に呼び止められるのが怖かったのかな?

「校長先生にも注意を受けていたし、さっきの事があるから自重したんじゃない?わたしならレベッカ先生のいる前でサラに話しかける勇気はないわ」
「そうなのかな?」
「けど、すっげーこっちを見てるな」

確かにハル君が言う通り、貴族科の生徒がこちら物言いたげに見ている。
な、何だろう?何か言いたいことがあるのかな?

「みんな、声かけられないうちに移動しちゃうよっ」
「「「うんっ」」」「おうっ!」

アミーちゃんの号令でみんなで一斉に教室を出る。
次の授業は詠唱学だ!ハル君とフィン君は一緒だけど、アミーちゃんとキャシーちゃんは礼儀作法の授業なので一旦お別れとなる。

「じゃあ、二人ともまたね」
「また学生寮でね」
「ハル、サラちゃんの事よろしくね」
「おうっ!わかってる」
「頼んだわよ」

廊下の分かれ道でアミーちゃんはハルくんに念押しした後、名残惜しそうなキャシーちゃんの腕を取ると私たちが向かう道とは違う道を歩き出す。

「俺も防波堤くらいにはなれるかなー?」
「二人ともごめんね」
「サラのせいじゃないんだから、気にすんな」

私のせいで毎回余計な気苦労をかける事に、申し訳ない気持ちになる。
一般科の生徒のみんなのように貴族科の生徒も私の存在に早く慣れてくれると良いなぁ。



詠唱学の教室にはいると、「サラちゃ~ん」
と教室にいたエミリちゃんがこちらに向かって大きく手を振っていた。
エミリちゃんは既に席についていたので、三人でエミリちゃんのもとに向かうことにする。

「エミリちゃん、新しく友達になったフィン君だよ」
「よろしく―」
「エミリですぅ。よろしくねぇ」

エミリちゃんにフィン君を紹介し、空いている席にみんなで座る。

「エミリちゃんは召喚学の授業とってた?」
「うん。サラちゃんたちも?」
「うん。大きな教室だったからお互いにどこにいるかわからなかったね」
「本当だねぇ。召喚学の授業はレイラちゃんもうけていたのよぉ」
「そうなんだっ!詠唱学は?」

エミリちゃんの周りにはレイラちゃんの姿は見当たらなかったので聞いてみる。

「宮廷魔術師は無詠唱の使い手の方が採用されやすいらしいのぉ。だから礼儀作法の授業を受けるってぇ」
「そうなんだぁ」
「貴族科の生徒が少ないのもそのせいなのか?」

ハル君が言う通り、教室にいるのは一般科の生徒たちばかりで貴族科の生徒は数人しかいなかった。

「貴族科の生徒は礼儀作法の授業は受けないと思うよー。既に家で習ってるから受ける必要がないって、兄貴が言ってたよー」
「「なるほど」」
「フィン君は詳しいんだねぇ」
「いや、兄貴の受け売りだから」
「フィンの兄貴もこの学校の生徒なんだぜ」
「すごぉいっ」

エミリちゃんに褒められて、フィン君は照れ臭そうに頬をかくと、誤魔化すように話題を変える。

「そ、そう言えば、女の子も少ないねー」
「女子は礼儀作法の方に興味があるんじゃないか?キャシーたちも詠唱学に全然興味がないみたいだったし」
「詠唱って格好いいのにね」
「だよな」
「その通りだよ、諸君!詠唱は素晴らしいのだっ!」
「「「っ!!?」」」

突然、大きな声で話しかけられ、驚きで体が跳ねる。
ばくばくする心臓を押さえながら、声のした方向を見ると、そこには満面の笑みを浮かべた大人の男性がいた。

「おや、驚かせちゃったかな?教室に入ったら君たちが嬉しいことを言ってくれてたから思わず声をかけさせてもらったよ。早めに教室に来るものだね。あっ、僕が詠唱学の担当なんだ!これからよろしく頼むね!」

黄緑色の髪に緑色の瞳の男性はなんと詠唱学の先生だった。
私たちが呆然と先生を見つめるなか、先生は言うだけ言って満足したのか、特に私たちに返事を求めることもなく、その場を立ち去り意気揚々と教壇に立つ。
するとタイミング良く開始のチャイムが鳴った。

「諸君、僕はケリーだよ!さあ、待ちに待った授業を始めようじゃないかっ!」

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