39 / 51
ひとつに蕩けて
「お、部屋。行きましょうよう……」
「寒いか?」
「そんなんじゃ、ないですけど」
謙一さんは玄関先で私を押し倒して、なんだかご満悦顔。ちゅ、ちゅ、と降ってくるキスは、触れては離れてなんだか物足りない。
「君が悪いんだ、あんな顔をするから」
「どんな顔ですかあ」
一応言ってみるけど、謙一さんは笑うだけ。うう、ずるい……。
「け、謙一さんだって!」
一応私も唇を尖らせて反論してみる。
「謙一さんだって、してたじゃないですかぁっ!」
「……ふうん?」
謙一さんは私の顔を覗き込んで、片頬で笑った。
「どんな顔を?」
「ど、どんな顔って」
私は頬を熱くしたまま、ぱくぱくと口を開いては閉じて──何も言えなくなる。
(だ、だって、だって!)
頬どころか、耳まで赤いかも。
(言えないよ、──私のことが好きでたまらないって顔してた、なんて!)
だって、そんなの、なんか自意識過剰な感じだし!
口をモゴモゴさせつつ目線を逸らすと、謙一さんはやっぱり楽しげに目を細めた。
「ちなみに、君がしていた顔は"俺のことが好きです"って顔だ。最高に幸せなことに」
「んんっ、じ、じゃあおんなじ、ですっ……ひゃんっ」
謙一さんが私の首筋に舌を這わせる。反射的にびくんと身体を揺らして、謙一さんの腕を掴む。
「教えてくれ、麻衣。俺はどんな顔をしていた?」
謙一さんが低く笑う。楽しげ……っていうか、愉しげだ! ……自意識過剰ではなかったのはひと安心だけれど。
「ひ、秘密です、んっ」
かぷりと鎖骨を噛まれて変な声が出る。やわやわと、甘噛みで痛くないのに皮膚が噛みちぎられそうな感覚……。
「ひゃ、ぁ」
「食べたくなるくらいに愛おしい、の意味が初めて分かった」
謙一さんが鎖骨から唇を離さずに喋るから……僅かに当たる犬歯がぴりぴりと骨を刺激して。
「食べても?」
真剣な眼差し。きりっとした顔に、よく似合う……。
「っ、あの……」
ちらちらと目線を散らしながら、でも結局目線を重ねて、私は呟くように言う。
「どう、ぞ?」
ていうか、断るわけ、……断れるわけ、ないのに。あの真剣な視線で見つめられて。謙一さんが表情を緩める。
「……が、その前に」
謙一さんはひょいと身体を起こして、それから私を抱き上げる。
「答え合わせをしておこうか」
「答え合わせ?」
にこり、と謙一さんが優しく目尻を緩めた。……この目に弱い、私は。どんな表情であれ──ほんとうに。
「俺の表情、……君が愛おしくてたまらないという顔をしていたと思うのだけれど」
「……っ」
「同じ答えだったか?」
「……はぃ……」
語尾が小声になりつつ、両手で顔を覆う。謙一さんが笑っているのが分かる。ああ、もう。
「覚えておいてくれ。俺は常に君が愛おしくて大好きで食べてしまいたいということを」
「食べ、っ……」
「比喩だぞ?」
「分かってますよう」
自分の声とは思えない、甘ったるくて媚びるような声が出てしまう。
(……こんな女だったかなぁ、私は)
もうすこし大人じゃなかった?
ひとり立ちした、人間じゃなかった? ……伸二に変な形で依存していたとはいえ……こんな風、じゃなかった。
(どろどろに溶けて、作り直されてるみたい)
青虫が、いちど蛹の中で溶けて蕩けて、蝶になるみたいに。
どうせなら、と詮無いことをついでに思う。
(どうせなら──謙一さんと溶けて混じってしまいたい)
離れなくていいように。
ばちり、と謙一さんと目線が絡む。瞳に浮かぶ感情。ちゅ、と額にキスが落ちてくる。求めて、求められて。
ああ、……幸せ、だ。
とさりとベッドに寝かされる。
「……比喩だと言ったけれど」
謙一さんが私の頭の横に手をつきつつ、口を開く。
「溶けてしまいたいとは思う。君と」
ちゅ、ともう今日何度目かわからない、優しいキス。
「ひとつになりたい。ドロドロに溶けてしまってもいい」
「──あの」
謙一さんの首後ろに腕をまわして、抱き寄せながら私も口を開く。
「似たようなことを、私も……思ってます」
謙一さんはすこし驚いたような顔をして、それから目を細めた。
「では」
鼻と鼻をちょこんと合わせて、謙一さんが私の頬に触れた。
「代替行為をしようか」
「代替」
思わず復唱。謙一さんが喉で笑う。大きな手はさらさらと私の服を脱がしだして、抵抗なんてさらさら考えてない私はただされるがままに蕩けていく。
「寒いか?」
「そんなんじゃ、ないですけど」
謙一さんは玄関先で私を押し倒して、なんだかご満悦顔。ちゅ、ちゅ、と降ってくるキスは、触れては離れてなんだか物足りない。
「君が悪いんだ、あんな顔をするから」
「どんな顔ですかあ」
一応言ってみるけど、謙一さんは笑うだけ。うう、ずるい……。
「け、謙一さんだって!」
一応私も唇を尖らせて反論してみる。
「謙一さんだって、してたじゃないですかぁっ!」
「……ふうん?」
謙一さんは私の顔を覗き込んで、片頬で笑った。
「どんな顔を?」
「ど、どんな顔って」
私は頬を熱くしたまま、ぱくぱくと口を開いては閉じて──何も言えなくなる。
(だ、だって、だって!)
頬どころか、耳まで赤いかも。
(言えないよ、──私のことが好きでたまらないって顔してた、なんて!)
だって、そんなの、なんか自意識過剰な感じだし!
口をモゴモゴさせつつ目線を逸らすと、謙一さんはやっぱり楽しげに目を細めた。
「ちなみに、君がしていた顔は"俺のことが好きです"って顔だ。最高に幸せなことに」
「んんっ、じ、じゃあおんなじ、ですっ……ひゃんっ」
謙一さんが私の首筋に舌を這わせる。反射的にびくんと身体を揺らして、謙一さんの腕を掴む。
「教えてくれ、麻衣。俺はどんな顔をしていた?」
謙一さんが低く笑う。楽しげ……っていうか、愉しげだ! ……自意識過剰ではなかったのはひと安心だけれど。
「ひ、秘密です、んっ」
かぷりと鎖骨を噛まれて変な声が出る。やわやわと、甘噛みで痛くないのに皮膚が噛みちぎられそうな感覚……。
「ひゃ、ぁ」
「食べたくなるくらいに愛おしい、の意味が初めて分かった」
謙一さんが鎖骨から唇を離さずに喋るから……僅かに当たる犬歯がぴりぴりと骨を刺激して。
「食べても?」
真剣な眼差し。きりっとした顔に、よく似合う……。
「っ、あの……」
ちらちらと目線を散らしながら、でも結局目線を重ねて、私は呟くように言う。
「どう、ぞ?」
ていうか、断るわけ、……断れるわけ、ないのに。あの真剣な視線で見つめられて。謙一さんが表情を緩める。
「……が、その前に」
謙一さんはひょいと身体を起こして、それから私を抱き上げる。
「答え合わせをしておこうか」
「答え合わせ?」
にこり、と謙一さんが優しく目尻を緩めた。……この目に弱い、私は。どんな表情であれ──ほんとうに。
「俺の表情、……君が愛おしくてたまらないという顔をしていたと思うのだけれど」
「……っ」
「同じ答えだったか?」
「……はぃ……」
語尾が小声になりつつ、両手で顔を覆う。謙一さんが笑っているのが分かる。ああ、もう。
「覚えておいてくれ。俺は常に君が愛おしくて大好きで食べてしまいたいということを」
「食べ、っ……」
「比喩だぞ?」
「分かってますよう」
自分の声とは思えない、甘ったるくて媚びるような声が出てしまう。
(……こんな女だったかなぁ、私は)
もうすこし大人じゃなかった?
ひとり立ちした、人間じゃなかった? ……伸二に変な形で依存していたとはいえ……こんな風、じゃなかった。
(どろどろに溶けて、作り直されてるみたい)
青虫が、いちど蛹の中で溶けて蕩けて、蝶になるみたいに。
どうせなら、と詮無いことをついでに思う。
(どうせなら──謙一さんと溶けて混じってしまいたい)
離れなくていいように。
ばちり、と謙一さんと目線が絡む。瞳に浮かぶ感情。ちゅ、と額にキスが落ちてくる。求めて、求められて。
ああ、……幸せ、だ。
とさりとベッドに寝かされる。
「……比喩だと言ったけれど」
謙一さんが私の頭の横に手をつきつつ、口を開く。
「溶けてしまいたいとは思う。君と」
ちゅ、ともう今日何度目かわからない、優しいキス。
「ひとつになりたい。ドロドロに溶けてしまってもいい」
「──あの」
謙一さんの首後ろに腕をまわして、抱き寄せながら私も口を開く。
「似たようなことを、私も……思ってます」
謙一さんはすこし驚いたような顔をして、それから目を細めた。
「では」
鼻と鼻をちょこんと合わせて、謙一さんが私の頬に触れた。
「代替行為をしようか」
「代替」
思わず復唱。謙一さんが喉で笑う。大きな手はさらさらと私の服を脱がしだして、抵抗なんてさらさら考えてない私はただされるがままに蕩けていく。
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。