クワンティエンの夢

多谷昇太

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白峰の巻

梅子の変容…鬼神へと

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「早い話が観音なんて存在しないのよ。この世の音、つまり人々の助けを求める声を聞いて、それを救世する救世観音だなんて、弱い者たちが造り上げた救いへの幻像でしかない。現実の世の中は、人間たちは、自分の都合や欲望だけが本音の存在でしかなく、律法や現実の法律などというものも、この世を力で制した権力者や資産家らの、自らを守る方便でしかないってことよ。その証拠にあんた、雲水さん。あんただって結局は現実から逃げたんでしょ?力あるものたちから、その仕打ちや迫害から、結局はトンコして遊行に逃げただけじゃない。あんたほど見っともなくはなかっただろうけど、(西行庵の方を向いて)そこの西行さん、あの御仁が出家にかこつけて自分の妻子さえも置き去りにして、呑気で優雅な遊行に明け暮れたのと同じだあね…」話が西行法師への軽侮に及ぶに至りついに亜希子が「うーめこっ!僧形のご本人の前で、まして西行法師の祠の前で…もう(話するのを)止めなさいっ!」と一喝する。「まあ、まあ」とばかりその亜希子を手ぶりで制しつつ僧が「うむ、信なくば立たずの見本のような御説法ですな。逆に信あれば徳ありの反証のような気もしますが…とにかく、拙僧へのご断定は甘んじてお受け致します。どうぞ、そのままクワンティエンの寓話へのレクチャーもなさってください」と泰然として先を促す。ところが「何い?信あれば徳ありの反証…?!」と僧の言を小声でつぶやいては梅子の様が‘荒ぶる神’へと、いよいよ変身して行くようだ。かつて配流先の讃岐国へ慰問に来た西行法師に臨んだ、鬼神と化したかの崇徳上皇のごとき様へと。850年後の現在に再びの白峰が展開されるのだろうか?

【うーめこっ!…と怒る亜希子のイメージ(怒っている写真ないもんでこれでご勘弁】


        【梅子と僧の論争図?(上田秋成・白峰之図)】

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