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国境へ後少しの所まで近づいた頃、太陽は沈み辺りが暗闇に包まれ始めた。
森で野営をする為に私達は馬車を出て準備をしていたのだが、、、
「クローディア様、馬車の中にお戻り下さい!」
「マーク? ・・・・ッ!」
みんなの方を振り向くとマークとドミニクは険しい顔をして辺りを見渡しながら帯刀に手をかけていた。
いけない! 二人の邪魔になってしまう。
ただならぬ雰囲気を感じてコノアと一緒に馬車に戻ろうとすると……
「クローディア様!」
コノアの声が響き、私の目の前に黒ずくめの男達が立ち塞がった。
いつからいたの?まるで音がしなかった。
「クローディア様! 危ない!」
私が呆気にとられていると目の前の男が剣を振りかざす。咄嗟にドミニクが私を横に突き飛ばしてくれたお陰で難を逃れたが、剣はそのままドミニクの腕を切り裂いた。
「ドミニク!」
ドミニクの腕が血に染まる。そんな……私のせいで。
「クローディア様! 走って!」
コノアが私の手を取り森の奥へ逃げ込む。後ろを振り返るとマークとドミニクが黒ずくめの男達と応戦していた。
あぁ二人とも……どうか無事で。
二人の事が心配だけど戻ったらきっと邪魔になる。
今の私に出来ることは逃げることよ。
二人が追っ手を引きつけてくれているのよ。
絶対に逃げなければ!
森の木の根に足を取られながらも必死に前へ走り続ける。息が切れるなかで思い浮かぶのは卒業パーティーでの殿下の顔。私を化け物と罵った殿下の顔だ。
殿下は私を殺したいのだろうか。
追放するだけでは満足できないということ?
私のせいでマークとドミニクが……。
「キャア!」
「コノア! 大丈夫!?」
足を捻ったのだろうか。木の根に足を取られて転んだコノアは苦しそうに顔を歪めている。
「コノア、大丈夫? 歩ける?」
「申し訳ございません。足が……クローディア様はこのままお逃げ下さい。追っ手が来てしまいます」
「そんな! 置いていける訳ないでしょう。捕まったら何をされるか」
「ですが、…………!!」
ふと気配を感じ後ろを振り返ると一人の追っ手の姿が見える。
もう来ている! マークは? ドミニクは? 二人は無事なの? 追っ手はまだ私達に気づいていない。でもこのままじゃ……きっと彼らの目的は私の筈だ……。
「コノア、貴方はここに隠れていて。私が追っ手を引きつけます」
「なっ!? そんなこと駄目です! クローディア様、お願いですから逃げてください」
「大丈夫。追っ手を引きつけながらちゃんと逃げるから」
「だ、駄目です! クローディア様! お戻り下さい」
正直なところ引きつけながら逃げる自信などない。でもこれ以上私のせいでみんなが傷つけられるのは嫌だ。
私は大廻りしながら追っ手から距離のある場所に辿りつき声を上げる。声に気づいた追っ手が私に向かって走り出したのを確認し、私はコノアがいる場所と反対方向に走り出す。
(逃げなければ……浄化の方法を探してお父様に伝えなければ……)
必死に足を動かすが、追っ手の気配はどんどん近づいてくる。
(駄目よ! 諦めては駄目!)
自分を鼓舞し足を動かすが、だんだん息が切れていく。
(駄目……諦めては……絶対に……)
『何処にいるんだ』
ああ、彼だわ。彼が近くにいる!
ここよ! 私はここにいるわ!
『何処だ…分からない…近くに……声を』
「私はここにいるわ!!!!」
『……! 見つけた!』
な、なに!? 音が……。
キィーーンと耳を突き刺すような音が聞こえ、突風が吹き荒れた。辺りに砂嵐が巻き起こり私は咄嗟に目をつぶる。
風が落ち着き始めたころ、恐る恐る目を開けて辺りを確かめると、
………鳥? ……いえ、人間なの?
追っ手が地面に横たわり、その傍には大柄な男が立っていて慈しむような目で私を見つめている。そして彼の背中には………鳶色の大きな翼が生えていた。
森で野営をする為に私達は馬車を出て準備をしていたのだが、、、
「クローディア様、馬車の中にお戻り下さい!」
「マーク? ・・・・ッ!」
みんなの方を振り向くとマークとドミニクは険しい顔をして辺りを見渡しながら帯刀に手をかけていた。
いけない! 二人の邪魔になってしまう。
ただならぬ雰囲気を感じてコノアと一緒に馬車に戻ろうとすると……
「クローディア様!」
コノアの声が響き、私の目の前に黒ずくめの男達が立ち塞がった。
いつからいたの?まるで音がしなかった。
「クローディア様! 危ない!」
私が呆気にとられていると目の前の男が剣を振りかざす。咄嗟にドミニクが私を横に突き飛ばしてくれたお陰で難を逃れたが、剣はそのままドミニクの腕を切り裂いた。
「ドミニク!」
ドミニクの腕が血に染まる。そんな……私のせいで。
「クローディア様! 走って!」
コノアが私の手を取り森の奥へ逃げ込む。後ろを振り返るとマークとドミニクが黒ずくめの男達と応戦していた。
あぁ二人とも……どうか無事で。
二人の事が心配だけど戻ったらきっと邪魔になる。
今の私に出来ることは逃げることよ。
二人が追っ手を引きつけてくれているのよ。
絶対に逃げなければ!
森の木の根に足を取られながらも必死に前へ走り続ける。息が切れるなかで思い浮かぶのは卒業パーティーでの殿下の顔。私を化け物と罵った殿下の顔だ。
殿下は私を殺したいのだろうか。
追放するだけでは満足できないということ?
私のせいでマークとドミニクが……。
「キャア!」
「コノア! 大丈夫!?」
足を捻ったのだろうか。木の根に足を取られて転んだコノアは苦しそうに顔を歪めている。
「コノア、大丈夫? 歩ける?」
「申し訳ございません。足が……クローディア様はこのままお逃げ下さい。追っ手が来てしまいます」
「そんな! 置いていける訳ないでしょう。捕まったら何をされるか」
「ですが、…………!!」
ふと気配を感じ後ろを振り返ると一人の追っ手の姿が見える。
もう来ている! マークは? ドミニクは? 二人は無事なの? 追っ手はまだ私達に気づいていない。でもこのままじゃ……きっと彼らの目的は私の筈だ……。
「コノア、貴方はここに隠れていて。私が追っ手を引きつけます」
「なっ!? そんなこと駄目です! クローディア様、お願いですから逃げてください」
「大丈夫。追っ手を引きつけながらちゃんと逃げるから」
「だ、駄目です! クローディア様! お戻り下さい」
正直なところ引きつけながら逃げる自信などない。でもこれ以上私のせいでみんなが傷つけられるのは嫌だ。
私は大廻りしながら追っ手から距離のある場所に辿りつき声を上げる。声に気づいた追っ手が私に向かって走り出したのを確認し、私はコノアがいる場所と反対方向に走り出す。
(逃げなければ……浄化の方法を探してお父様に伝えなければ……)
必死に足を動かすが、追っ手の気配はどんどん近づいてくる。
(駄目よ! 諦めては駄目!)
自分を鼓舞し足を動かすが、だんだん息が切れていく。
(駄目……諦めては……絶対に……)
『何処にいるんだ』
ああ、彼だわ。彼が近くにいる!
ここよ! 私はここにいるわ!
『何処だ…分からない…近くに……声を』
「私はここにいるわ!!!!」
『……! 見つけた!』
な、なに!? 音が……。
キィーーンと耳を突き刺すような音が聞こえ、突風が吹き荒れた。辺りに砂嵐が巻き起こり私は咄嗟に目をつぶる。
風が落ち着き始めたころ、恐る恐る目を開けて辺りを確かめると、
………鳥? ……いえ、人間なの?
追っ手が地面に横たわり、その傍には大柄な男が立っていて慈しむような目で私を見つめている。そして彼の背中には………鳶色の大きな翼が生えていた。
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