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13.私に出来ることは?

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あれから本当にアルフレッド様は授業の合間も私に会いに来てくれた。
そしてとっても目立っていた…。
なぜ会いに来てくれるのか?
理由を聞くタイミングを逃してしまって、そのままアルフレッド様と一緒に庭園でお昼を過ごしている。

「その、リリア嬢は何故西棟にいたんだ?誰かを探していたのか?」

「実は、、えっと、殿下とエリー様を…」

「殿下を?待ってくれ。エリーというのはダグラス子爵家のエリー嬢のことだろうか?あの時の裏庭にいた彼女か?」

「は、はい!その通りでございます。あ、あのエリー様がもしかしたら殿下に会いに行ってるかと思いまして…」

「実は昨日西棟でエリー嬢が殿下に会わせろと騒いでいたらしく……。彼女を止めるために学園の護衛騎士が集まっていて、一時警備が手薄になってしまったんだ。君の一件もその隙をつかれてしまった。」

(エリー様……護衛騎士が集まるほど騒いだって…なんか凄いわ。色々と凄いわ……)

「あの、エリー様は……。どうなったのでしょうか?」

「何故殿下に近づこうとしていたか問い質す必要があるから、一時学園で身柄を預かっていると聞いているが……」

「まさか、不敬罪で処刑ですか!!」

「処刑?いや、流石にそれはないが…。リリア嬢、彼女が何故殿下に近づこうとしたか知ってるのなら教えてくれないだろか。」

「そ、その、実は…」

ここは正直に話してしまおう…。
私はエリー様との一連のやり取りをアルフレッド様に説明した。

「……ヴァネッサ嬢の嫌がらせ。なるほど、確かに静観できる状況では無くなってきてるな。」

「あ、あの、私が余計な事を言ったばっかりに、このような事になってしまったんです。アルフレッド様、お願いでございます。エリー様の処分が重くならないようにお取り計らいして頂けないでしょうか。」

「ああ、殿下には伝えておこう。しかしエリー嬢は考えが足りないな…。私に髪飾りを見られているのに、殿下に訴えにいくとは。………泳がせるか・・・・・

「えっ??」

「あぁ何でもない。エリー嬢のことは任せてくれ。実はリリア嬢に話したいことはヴァネッサ嬢の噂の事なんだ。その、君にこんな事を頼むのは申し訳ないのだが、私と一緒にヴァネッサ嬢の噂を調べてくれないだろうか。」

「わ、私がですか?」

「私が単独で東棟で聞き回れば目立ってしまう。出来れば東棟の者に協力を仰ぎたいのだ。その……私はリリア嬢に手助けをして欲しいと思っている。それにヴァネッサ嬢とは何度か会ったことはあるが、噂のような人物とは違うと思う。殿下もそう思って私に調べるように話をしてきたんだ。」

ヴァネッサ様…。ゲームと同じ人・・・・・・・なら嫌がらせをするなんて考えられない。
でもこの世界は乙女ゲームでは無い?
ではヴァネッサ様も違う人になるの?
分からない…分からないけど……。
もし、ヴァネッサ様の事を調べるのが殿下の願いなら、その手助けをすれば殿下に……。

「……殿下に会える。」

殿下に会えるかもしれない。
会えば分かるかもしれない。
殿下に会って何もイベントが起こらないなら……やっぱりこの世界は乙女ゲームでは無い……似た世界になるんだろうか。

「……殿下に会いたいのか?もしかして中央棟に行っていたのは殿下を探していたのか?」

「えっ?何でそれを?…そうですね。…会いたいです。」

(正確には『攻略対象者に』会いたかったんだけど)

「もしかしてリリア嬢は殿下のことを………」

「えっ?何でしょうか?」

「……そうか。殿下か…。」

「あ、あの?アルフレッド様?」

「……分かった。だが今すぐは難しいだろう。警備の事やヴァネッサ嬢の事で色々立て込んでいるから。……だが、リリア嬢が望むなら必ず会わせると誓うよ。」

「ありがとうございます。あの、お力になれるか分かりませんが、私に出来ることがあればお手伝い致します。」

「ありがとう。助かるよ。…その…リリア嬢が嫌では無ければ、私が君の傍にいることを許してもらえないだろうか。昨日のような危険が起こらないようにリリア嬢を守らせて欲しい。」

「えっ危険ですか?」

「噂を調べる事で何が出てくるか分からない。それに私が君を守りたいんだ。」

そういうとアルフレッド様は熱い眼差しで私を見詰めてくる。

(またその目!でも、どうしよう。甘えてもいいのかしら……)

「あ、あのアルフレッド様の婚約者様は大丈夫なのでしょうか?私の傍にいるなんて、いい気はしないと思いますが。」

「私には婚約者はいないからその点は気にしなくて大丈夫だ。………リリア嬢の護衛は殿下から話をもらっている。だから殿下が誤解する事はないから安心してくれ。」

婚約者がいないと聞いて私の心は少し浮かれ気味になったが、その後のアルフレッド様の発言で一気に目が覚めた。

(殿下が誤解?何のこと?…でも、そうか。私の護衛は『殿下に頼まれた』からなのか…。何を期待したのよ私は。馬鹿ね。)

「……ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせて頂きます」

「お礼を言うのはこちらの方だ。その…言葉も崩してくれて構わない。リリア嬢が話しやすいようにしてくれ。もその方が有難い。………キミが嫌じゃなかったら………その……」

「…?どう致しましたか?」

「あ、いや、その…………そうだな。キミのことをリリアと呼んでもいいだろうか。出来れば……その……俺のこともアルと呼んでくれたら嬉しい。」

(なっなぁーーー!!なに!なんなのいきなり!)

目の前の光景が衝撃的すぎて、自分の顔がカァーーと赤くなっていく。
急に歯切れが悪くなったと思ったら、アルフレッド様が顔を真っ赤にしながら『愛称』で呼んでとお願いしてきた!
何故?いきなり過ぎない?

「……やはり嫌だろうか。」

シュンとしている……。
アルフレッド様がシュンとしている。
何故かその姿に見覚えが……。

(思い出した!ベスだわ!お母さんに怒られてる時の姿に似てる!)

前世の美織が飼ってた愛犬。
お父さんとお母さんには従順なのに、美織のことは子分とでも思っているのか態度が大きかった。
でもとても利口で優しい。美織が泣いていると必ず慰めてくれた。オッドアイのシベリアンハスキー。

(そうか、だからアルフレッド様の目を見た時に懐かしく感じたのか。でも、さすがにベスに似てるって……ふ、フフフ、、いやだ、可笑しい。)

「だ、大丈夫か?」

私が急に笑い出したので、アルフレッド様はとても心配そうにしている。

「あぁいえ。あの…大丈夫です。あの、リリアと呼んで下さい。えっと…その……アル様」

私はそう言いながらとチラリとアルフレッド様の顔を見ると、アルフレッド様はとても嬉しそうに、、、

「ありがとう、リリア」

と私の名前を呼んでくれた。
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