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2.騎士視点
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この国は疲弊している。無理もない。
もう何年も戦争が続いているからだ。
騎士団に配属されてから何年経っただろう。
平民の俺が騎士団に所属するなんて名誉なことだと思っていたが……。騎士になってから何度も戦に赴き、何人もの敵を殺した。最初は殺した相手に祈りを捧げていたが、そのうち数が増えすぎて祈りを捧げることが馬鹿らしくなった。
もう疲れた。終わりにしたい……。
心の中でいつも自分の最後を願っている。
暗澹とした思いを抱えながら、王都を警邏している時にバルコニーに佇む彼女を見かけた。
最初は遠くから見ているだけだった。
でも彼女の微笑みを見つめていると、どうしても話がしたくなり木を登って彼女に話しかけた。
「な、なに?」
「驚かせてすまない。俺の名前はクロウだ。」
「クロウ?鳥さんはクロウと言うの?」
「鳥?あぁcrowのことか?」
「貴方は烏のクロウなの?」
「……?」
どうも話が合わないと思いながら、彼女の顔を覗き込んで気づいた。
彼女は目が見えてない。
そして何故か俺を『人間と話せる烏』と思い込んでいる。
頭が弱いのだろうか?
まぁ勘違いしているなら、それでもいいか。
そのまま彼女に合わせて話を続けていると、思っていた以上に不思議な娘だった。
彼女が想像する外の世界はとても綺麗で平和だ。
だが実際はどうだ……。
何年も戦争が続き、数えきれない程の人が死んでいる。死者を悼み教会の鐘が何度も鳴り響き、死者に捧げる献花の甘い匂いが辺りを充満している。
彼女に現実を教えるか…。いや、わざわざ彼女の平和な世界を壊す必要もないだろう。
俺は戦から帰ると彼女と話をしたくて木に登る。
彼女は部屋から出たことがないらしく、俺が外の話をするととても喜んでくれた。
俺は喜んだ顔が見たくて色々な話をした。
鳥や花の種類、海や山、雨や雪、時には花をプレゼントした。彼女と話すと彼女の思い描く平和な世界の住人になれた気がする。だから彼女に戦争の話はしなかった…。彼女の夢を壊したくない。
彼女と話していると物事の見方が変わっていく。
何故俺を鳥だと思ったのかも理解できた。
彼女にとって木は高く聳え立つもので、高い木に留まれるのは鳥だけだ。人間が木に登る発想がないのだ。まぁ人が木に登るところを見られないのだから、しょうがないのかもしれない。
彼女は色が分からない。当たり前だ。
色を見たことがないのだから。
『烏は黒色』と言っても黒がどんな色なのか分からない。だから彼女に分かるように説明するのだが、これがなかなか難しい。頭を使って捻り出すように言葉を紡ぐ。すると、彼女はとても嬉しそうにお礼を言ってくれた。
二年程そんな生活をしていた。
彼女と話していると自分の暗澹とした気持ちが薄れていくようでとても心地が良い。
そんな中、西の方で大きな戦争が始まると報せを受けた。
国の命運を掛けた戦争だ。負ければ国が滅ぶ。だが勝てば戦争は終わり、彼女の思い描くような平和な世界が訪れるだろう。
俺は騎士団長として戦争に赴くことになった。
生きて帰れるか分からない。それほどに大きな戦争だ。
「オリヴィア、俺は西の方を旅してくる。……今度は戻るのに時間がかかるかもしれない。」
「え?そうなの…。寂しくなるわ。クロウ、お願いだから必ず帰ってきてね。」
「ああ。絶対に帰ってくる。だから待っていてほしい。」
「もちろんよ!必ず待っているわ。気をつけて行ってきてね。」
「…………旅から帰ったら君に触れてもいいだろうか?」
「えっ?えぇもちろんよ!でも、クロウ大丈夫なの?前に恥ずかしいって言っていたじゃない?」
そういえばそんなこともあったな…。
前にオリヴィアから触れたいと言われた時は、烏ではないことに気づかれてしまうと思い断っていた。
その時にたまたま落ちていた烏の羽を渡したら、嬉しそうに受け取ってくれた。
「あぁ大丈夫だ。……君に……オリヴィアに触れたいんだ。」
「分かったわ!楽しみにしているわね。」
彼女の笑顔を目に焼き付けて別れを告げた。
無事に帰れたらcrowではなく、クロウとして受け入れて欲しい。
そして『白色』のような君に俺の想いを伝えたい………。
もう何年も戦争が続いているからだ。
騎士団に配属されてから何年経っただろう。
平民の俺が騎士団に所属するなんて名誉なことだと思っていたが……。騎士になってから何度も戦に赴き、何人もの敵を殺した。最初は殺した相手に祈りを捧げていたが、そのうち数が増えすぎて祈りを捧げることが馬鹿らしくなった。
もう疲れた。終わりにしたい……。
心の中でいつも自分の最後を願っている。
暗澹とした思いを抱えながら、王都を警邏している時にバルコニーに佇む彼女を見かけた。
最初は遠くから見ているだけだった。
でも彼女の微笑みを見つめていると、どうしても話がしたくなり木を登って彼女に話しかけた。
「な、なに?」
「驚かせてすまない。俺の名前はクロウだ。」
「クロウ?鳥さんはクロウと言うの?」
「鳥?あぁcrowのことか?」
「貴方は烏のクロウなの?」
「……?」
どうも話が合わないと思いながら、彼女の顔を覗き込んで気づいた。
彼女は目が見えてない。
そして何故か俺を『人間と話せる烏』と思い込んでいる。
頭が弱いのだろうか?
まぁ勘違いしているなら、それでもいいか。
そのまま彼女に合わせて話を続けていると、思っていた以上に不思議な娘だった。
彼女が想像する外の世界はとても綺麗で平和だ。
だが実際はどうだ……。
何年も戦争が続き、数えきれない程の人が死んでいる。死者を悼み教会の鐘が何度も鳴り響き、死者に捧げる献花の甘い匂いが辺りを充満している。
彼女に現実を教えるか…。いや、わざわざ彼女の平和な世界を壊す必要もないだろう。
俺は戦から帰ると彼女と話をしたくて木に登る。
彼女は部屋から出たことがないらしく、俺が外の話をするととても喜んでくれた。
俺は喜んだ顔が見たくて色々な話をした。
鳥や花の種類、海や山、雨や雪、時には花をプレゼントした。彼女と話すと彼女の思い描く平和な世界の住人になれた気がする。だから彼女に戦争の話はしなかった…。彼女の夢を壊したくない。
彼女と話していると物事の見方が変わっていく。
何故俺を鳥だと思ったのかも理解できた。
彼女にとって木は高く聳え立つもので、高い木に留まれるのは鳥だけだ。人間が木に登る発想がないのだ。まぁ人が木に登るところを見られないのだから、しょうがないのかもしれない。
彼女は色が分からない。当たり前だ。
色を見たことがないのだから。
『烏は黒色』と言っても黒がどんな色なのか分からない。だから彼女に分かるように説明するのだが、これがなかなか難しい。頭を使って捻り出すように言葉を紡ぐ。すると、彼女はとても嬉しそうにお礼を言ってくれた。
二年程そんな生活をしていた。
彼女と話していると自分の暗澹とした気持ちが薄れていくようでとても心地が良い。
そんな中、西の方で大きな戦争が始まると報せを受けた。
国の命運を掛けた戦争だ。負ければ国が滅ぶ。だが勝てば戦争は終わり、彼女の思い描くような平和な世界が訪れるだろう。
俺は騎士団長として戦争に赴くことになった。
生きて帰れるか分からない。それほどに大きな戦争だ。
「オリヴィア、俺は西の方を旅してくる。……今度は戻るのに時間がかかるかもしれない。」
「え?そうなの…。寂しくなるわ。クロウ、お願いだから必ず帰ってきてね。」
「ああ。絶対に帰ってくる。だから待っていてほしい。」
「もちろんよ!必ず待っているわ。気をつけて行ってきてね。」
「…………旅から帰ったら君に触れてもいいだろうか?」
「えっ?えぇもちろんよ!でも、クロウ大丈夫なの?前に恥ずかしいって言っていたじゃない?」
そういえばそんなこともあったな…。
前にオリヴィアから触れたいと言われた時は、烏ではないことに気づかれてしまうと思い断っていた。
その時にたまたま落ちていた烏の羽を渡したら、嬉しそうに受け取ってくれた。
「あぁ大丈夫だ。……君に……オリヴィアに触れたいんだ。」
「分かったわ!楽しみにしているわね。」
彼女の笑顔を目に焼き付けて別れを告げた。
無事に帰れたらcrowではなく、クロウとして受け入れて欲しい。
そして『白色』のような君に俺の想いを伝えたい………。
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