暴虐皇子のやり直し「同じ失敗は繰り返しません!」

nayaminotake

文字の大きさ
9 / 40
第一章 暴虐皇子のやり直し開始

9話 暴虐皇子は皇帝陛下に謁見する

しおりを挟む
「しまった!」

「!?いかがされました!?」

自室で皇族用の公務服へと着替えさせてもらっている途中で思い立った様に奇声を上げてしまい、驚いた女性侍従はその場で土下座し、部屋の隅で控えていたヒルダが慌てて俺の元へ駆け寄る

「あっ・・・いや何でもない、気にするな・・・」

(やべぇ―――商人ギルドの連中から手土産もらうの忘れた・・・なんて言えないよな、クソッ!あれ結構貴重な俺の小遣いだったんだがな)

侍従2名とヒルダはキョトンとしながらも、俺の支度を急いだ

〇楽園城(ヴァルハラ城)玉座の間前【獅子の回廊】

ヴァルハラ城の最上階・・・白い大理石を用いた美しい階段を登ると広い回廊が目の前に広がる

天井はガラス張りで所々ステンドグラスになっており、差し込む光がステンドグラスを介し足元や白亜の壁を鮮やかに彩る

階段から長く続く回廊には深紅のカーペットが敷かれており、白亜の壁に取り付けられた発光石の照明が鮮やかに照らしている

俺の前をヒルダが頭を軽く下げた状態でゆっくりと進み、背後には俺の肩に掛けた黄金の獅子がレリーフされたマントを二人の侍従が手で持ち続ける

回廊の途中には、槍を手に白銀に輝く鎧を身に纏った近衛兵が4名立っていた

ヒルダと侍従は下げた頭を俺に向けたまま、黙って後ずさりすると、自然と赤いカーペットの端・・・回廊の壁際へと立つ

近衛兵は俺の両脇に2名ずつ分かれ手にした槍を俺の頭上で交差させ、槍のトンネルをつくる

その間を独りで歩き突き当たりにある豪華な装飾が施された両開きのドアの前に立つ・・・

スゥ―――と大きく息を吸い込み

「アーサー=ヴァルハラ!マーリン皇帝陛下との謁見に参りました!!」

ガゴンと重そうな音がして、ギィィと音を立てながら両開きのドアが左右ともにゆっくりと開いて行く・・・

目の前には、回廊と同じく深紅のカーペットが続き、少し段差で高くなった位置に黄金の装飾が幾つもなされた荘厳な椅子「玉座」が置かれ、その玉座には皇家の証となるクラウンを戴き、皇帝衣を身に纏ったヴァルハラ帝国皇帝マーリン=ヴァルハラが鎮座していた

そしてその傍らには憎きあの男・・・ザッハ=ドヴェルが漆黒の法衣を身に纏い控える様に立っていた

俺はゆっくりと陛下の前へと歩み寄り、その3メートル程手前で膝をつき頭を下げた

「陛下、アーサー=ヴァルハラ、勅命により登城致しました」

「うむ・・・ご苦労、面を上げよ」

陛下の命でゆっくり顔を上げ陛下の・・・父と目を合わす

マーリン=ヴァルハラ・・・59歳、早世した前皇帝から若干16歳で帝位を禅譲され40年以上もヴァルハラ帝国を支える、俺と同じ黄金に輝くパーマのかかった長い髪、口の周りと顎には同じく黄金の髭がたくわえられている・・・その顔にはしわが深く刻まれているが、青く鋭い瞳が発する眼光は未だ威厳を感じさせ、年齢による衰えを全く感じさせない

マーリンには、かつて2名の妻がいた。一人目の妻はマーリンが20代の時に娶った隣国、ルト王国の第一王女「アンドロメダ」
これは、若くして皇帝となったマーリンが他国との外交において、強力な後ろ盾を得る為の所謂政略結婚であった・・・だが、マーリンとアンドロメダはそんなきっかけなど関係無いかの様に、仲睦まじかったと言う

ただ一つ不幸だったのは、二人の間に子が出来なかった事だ・・・

世襲制の帝国において、皇帝に子が・・・男子たる子が生まれないというのは国家存亡の危機である
皇帝に近しい者達は、皇帝に側室を持つ事を提案するも、マーリンは頑なに拒否

この時、何故マーリンが頑なに側室を拒んだのか今では本人以外に知るよしもないが、この時に一番つらかったのは他の誰でも無いアンドロメダ皇妃であった。

アンドロメダは国母として、世継ぎを産めない事に責任を感じ、子宝に恵まれる為にありとあらゆる事を試した・・「食べ物」「お祈り」「運動」果ては、子供をたくさん産んだ村娘の母乳まで・・・

しかし、アンドロメダの努力は実を結ばない・・・自責の念に苛まれた彼女は、とある旅人から風の噂で聞いたという「断崖から谷底へ足に紐をつけ飛び降りる事で、神に祈りが通じ子宝に恵まれる」という、誰が聞いても胡散臭い話に縋り・・・実行した・・・そして、そのまま谷底へ

マーリンは悲しんだ、自らの選択が妻である皇后を追い詰めた事に深く後悔をした、そしてルト王国でもマーリン皇帝が子をなせないアンドロメダを意図的に害したと噂する者が現れる・・・これが後に両国間の埋められない溝となり俺の身に降りかかるわけだ

・・・マーリン皇帝が30歳後半となった頃、偶然社交界で見かけた一人の女性を射止める

女性の名はエリス=グレン グレン男爵家の一人娘だ。飾られている肖像画を見る限り面影がどことなく俺に似ている・・・つまり俺の母上だ
エリスは、当時19歳と若く倍以上年の離れたマーリン皇帝にどの様な経緯で皇后として迎えられる事になったのか・・・詳しくは知らされていない・・・が
男爵家という貴族とはいえ最下層の階級の娘を、国母とする事に当時の宮内省からは猛反対が有ったというのは小耳に挟んだ

しかし、今現在は国母として肖像画が残されている程、この国で認知されている。
その理由は「世継ぎとなる男子を産んだから」に尽きる。
母は俺を産んで直ぐにこの世を去った、詳しい記録は残されて無いが産後の肥立ちが悪かったとか、感染症にかかったからとか、元々病弱だったとか言われている中で、「ルト王国の刺客に暗殺された」なんていうゴシップも噂された

いずれにしろ、俺は生まれ、母はこの世を去った・・・父であるマーリン皇帝は3人目を娶る事無く今日に至る
だからこの国で帝位を継げるのは俺をおいて他に居ないのは、臣民に周知の事実

そんな俺がしでかしたミョルニル侯爵令嬢リリスとの婚約破棄という失態について今、こうして御前で釈明する場が設けられた

「アーサーよ、ここに呼ばれた理由は先の書簡でわかっておるな?して、お前の弁明を聞こうか」

1周目の時は、グネビーから聞かされていた嘘を鵜呑みにして陛下の前でリリスの悪行について述べた

『あの女は、侯爵家の威光をかさに自分より爵位の下の者を奴隷の様に扱い、裏では皇后になった暁には、この私を傀儡にしてこの国の実権を握りいずれ我が物にする計画を企てているのです!!』

『あのような女を皇后に据えるなど、ありえません!私は未然に国難を取り除いた迄です!』

・・・・あの時は、俺の言い分に宰相のザッハもミョルニル侯爵の身辺について一度調査すべきでは?と陛下に助言した事で、リリスとの婚約破棄は正式に決まり俺の失態については、1週間の謹慎という軽い罰で済まされる事になった。

思えば俺はあの時からザッハに対し、信頼を寄せていたのかもしれない・・・だとしたら俺の選択は

「陛下、この度のリリス侯爵令嬢との婚約破棄の一件・・・私の気の迷いにより口から出てしまった事、非は私にあります」

(さぁこの選択が吉と出るか凶と出るか・・・宰相に化けた魔族ザッハの出方は・・・)







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました

ララ
恋愛
3話完結です。 大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。 それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。 そこで見たのはまさにゲームの世界。 主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。 そしてゲームは終盤へ。 最後のイベントといえば断罪。 悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。 でもおかしいじゃない? このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。 ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。 納得いかない。 それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

転生者と忘れられた約束

悠十
恋愛
 シュゼットは前世の記憶を持って生まれた転生者である。  シュゼットは前世の最後の瞬間に、幼馴染の少年と約束した。 「もし来世があるのなら、お嫁さんにしてね……」  そして、その記憶を持ってシュゼットは転生した。  しかし、約束した筈の少年には、既に恋人が居て……。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...