トリップしたおっさん、18禁乙女ゲームの悪役令嬢を手篭めにする

柴田

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悪役令嬢、おっさんにメンタルケアを要求する。

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「貴様がそんな性悪だから悪いのだ! 貴様のせいで俺の心は移ろいだんだ! 家柄と外見しかいいところがないのに、貞淑気取りめ……!」

 ローゼに掴みかかろうとするのは腕で押さえているものの、罵詈雑言がやまない。唾を飛ばして捲し立てる王子はただただ醜かった。

「あの女を愛しているなら仕方ないと、あのような罵倒も大目に見ようと思っていたのに……わたくしにはあなたが理解できないわ。それとあなたが下半身でしかものが考えられなかったのを、わたくしの責任にしないでもらえるかしら」
「……っ貴様のような女を誰が抱きたいと思う!? その苛烈な性格では、男は皆萎れてしまうだろうな! 貴様曰く性欲が有り余っている俺ですら、裸で迫られようと勃たないぞ! あぁなんてことだ。貴様がもし弟の妻になったら、世継ぎは生まれずこの国は終いだなぁ!」

 そのあまりにひどい物言いは、当事者ではない晴信でも腹に据えかねた。
 それにいくら王子に対してもう気持ちがなかろうと、ローゼが傷ついていないはずがない。
 彼女の腰を抱く晴信の手に、震える細指が重なっていた。

「おまえ、いい加減にしろよっ」

 晴信は渾身の力を振り絞って王子を突き飛ばした。
 尻もちをついた王子が尚も食って掛かろうとすると、その眼前に剣先が迫る。――ペーテルが抜き身の剣を突きつけていた。

「貴族家への不法侵入、貴族に対する侮辱、平民がこれらの罪を犯した場合は手首を切られるんだ。最悪即刻死刑だってあり得るぞ。よく覚えておくといい。これから役立つ情報だろう」

 太陽の光が反射して、磨かれた剣身がギラリと光る。
 王子はひゅっと息を呑んだ。

「出て行け」
「……っ……助けてくれ……使用人でも、小間使いでもいいから、どうか……どうか……」
「間に合っている。公爵家の使用人が務まる力量もないくせに図々しいな。早く出て行け! 二度と我が妹の視界に入るな!」

 ペーテルが剣を振り上げると、王子は情けない悲鳴を上げて逃げていく。
 よたよたと走っていく姿はひどく惨めだった。乗ってきた馬車は辻馬車だったようで、すでに走り去ったあとだ。

 ペーテルは剣を鞘にしまうと満足げに振り返る。

「フン。情けない男だ。しばらく屋敷の見張りを強化するように言っておかねばな」

 彼は晴信とローゼを一瞥すると、わずかなためらいのあと小さくため息をこぼした。しようがない、と言いたげな表情だ。

「第二王子殿下との婚約の話はお断りしていいんだろう?」
「はい。でも……よいのですか?」
「俺にとってはローゼの気持ちがいちばん大事だ。もちろん、父上と母上にとってもな。心配せずとも、この話を蹴ったところで支障もないし、もちろんお咎めもない。我がエスクラ公爵家と縁故になりたかったのはあちらのほうだ。さらに陛下は愚かな息子のせいで、今は我々の顔色を窺わねばならん状況だからな」

 ローゼを安心させるためにペーテルは大げさに威張ってみせた。

「それと――陛下からの手紙にはまだ続きがある。ローゼへの謝罪として、第一王子が所有していた南方の領地を下賜してくださるそうだ。あそこはいいぞ。実り豊かで一年中暖かい。都会すぎず田舎すぎず、長閑で過ごしやすいだろう」
「お兄様……」

 それは、ローゼが口にした望みだった。
 遠回しに晴信との関係を認めてくれていることに気づき、ローゼは兄の優しさに胸を温かくする。

「そば仕えがいなくては不便だろう。そこの男を連れていくといい」

 トントン拍子に話が進んでいくことに、晴信は冷や汗をかいた。

「ちょちょちょーっと待って、僕は同意してないよ。お兄さんもっと反対してよ! 嬢ちゃんの目を覚まさせてあげなきゃだめでしょ!」

 晴信の意見など誰も聞いてくれやしない。

 ペーテルは使用人に馬を引いてこさせると、あぶみに足をかけて軽々と鞍を跨いだ。

「父上と母上もローゼのことを心配していたぞ。お二人にも第一王子の哀れな結末を早く伝えてさしあげなくてはな!」

 国王からの手紙を携え、ペーテルは颯爽と去っていく。

「行っちゃったよ……さっき来たばっかなのに……」

 嵐のような人物だった。
 晴信はやれやれと首の骨を鳴らす。短時間でいろいろなことが起こりすぎて気疲れしていた。

 万事解決――と言いたいところだが、まだ終わっていない。このお嬢様はとても繊細な心の持ち主なのだ。適切なケアをしてあげないと、また闇落ちしてしまいかねない。

「嬢ちゃん、平気……じゃないよな」

 ローゼの顔を覗き込もうとすると、フイと背けられる。

「ドレスが汚れたわ。着替えたいから手伝って」
「……そういうのは侍女に頼んでよ」
「いいからはるのぶがやりなさい。わたくし、きっと今ひどい顔をしているもの」

 どうしても晴信以外には弱っているところを見せたくないらしい。
 晴信は肩を竦めつつ、ローゼのあとをついて屋敷に入っていった。


 ローゼが侍女を下がらせたため、部屋にはほかに誰もいない。
 晴信は彼女の背後で腰をかがめ、あーでもないこーでもないとドレスの構造に四苦八苦した。

「ねぇこれ何枚着てんの? 脱がせても脱がせても布あるよ。この骨組みみたいなの何? これでドレス膨らませてたの? 女の子って大変だね~」
「窮屈だからコルセットも外してちょうだい」
「はいはいっと……こんなのしなくてもじゅうぶん細いのにねぇ」

 ドレスを脱がせ、バッスルを外し、コルセットも取って肌着と下着だけの姿にしたところで、着替えのドレスを用意していないことに気がついた。

「ガウン着て待ってて。ドレス選んでくるから。オジサンのセンスに期待しないでね~……」

 ローゼに背を向けた瞬間、背後から抱き締められる。

「あのー、動けないんだけど」
「はるのぶ、アレをして」


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