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第一皇子の生誕パーティー(1)
しおりを挟むグウェンダルとの婚約を解消してから、いつの間にか三カ月が経っていた。
今日は、本来なら結婚式を挙げるはずだった日だ。
メリーティアの希望をめいっぱい詰めたウエディングドレスを着て、少し緊張気味のグウェンダルの隣に並び、永遠の愛を誓ったことを今でも鮮明に思い出せる。
メリーティアは現在、思い出の中の清楚な装いとは真逆の、パーティーでとびきり目立つことができる派手なドレス選びに苦心していた。
一週間後に皇宮で開催される、第一皇子の生誕パーティーに参加するためだ。
前回はハネムーン期間で、帝都から離れていたため欠席した。しかしメリーティアの次の標的は第一皇子だ。彼に近づくのにこれほどぴったりの場はないだろう。
ちなみに、以前よりもずっと早いタイミングでグウェンダルが騎士団長に任命された。副騎士団長だったネビルが処分された件で、編成の見直しが成されたのだろう。任命式で、グウェンダルが皇帝に忠誠を誓ったという噂を耳にした。メリーティアとの約束を守ってくれたのだ。
グウェンダルもきっと、第一皇子の生誕パーティーに出席するだろう。
ネビルとのことがあってから、メリーティアはゴシップ誌に『他人の夫を寝取った末に夫婦を破滅に追い込んだ〝稀代の悪女〟』などと銘打たれて騒がれている。またグウェンダルに苦言を呈されるかもしれない。
――あれは苦言というより、わたしを心配しているのよね。
グウェンダルに見つめられるたびに決意が揺らぎそうになるから、もう放っておいてほしかった。この間の「弄びたいなら私を弄べばいい」だなんて、一体どういうつもりなのか。
帝都にいる限り、グウェンダルとは度々顔を合わせることになるだろう。
頬を火照らせたメリーティアは、やがて無言でベッドに突っ伏すのだった。
◇◇◇
第一皇子の生誕記念パーティーが行われる三日前。
ハイゼンベルグ家のタウンハウスには、遥々領地からメリーティアの家族が訪れていた。皇族の生誕祝いにはほとんどの貴族が出席する習わしであり、これには派閥だとかは関係ない。むしろ特別な理由もなく第二皇子派というだけで出席を拒否すれば、余計に皇后からひんしゅくを買うだろう。
そのことをすっかり忘れていたメリーティアは、久々に顔を合わせる家族に対して気まずい気分を味わっていた。
それもそのはず。
いきなりグウェンダルとの婚約を解消するという旨の手紙を送ってきたかと思えば、今度は『稀代の悪女』と噂されているのだから。メリーティアでも、自分の家族がそんなことになっていたら頭を抱えただろう。
どういうつもりなの、と追及する家族の視線から逃れるべく、のらりくらりと躱し続けて第一皇子の生誕記念パーティーの日を迎えた。
皇宮のメインホールが会場となっており、カーテンやじゅうたん、花の一本一本にまでこだわった飾りつけは思わずうなるほど豪華だ。おそらく皇后がすべて取り仕切っているのだろう。少し前に開かれた第二皇子の生誕パーティーとは、規模からして大違いだった。
ハイゼンベルグ家の名が呼ばれ入場した途端、会場内にざわめきが広がる。
近頃ゴシップ誌を騒がせているメリーティアのせいが大半だが、今日のドレスもまたさまざまな意味で注目を集めていた。
細いウエストと豊かなバストを強調するようなコルセットをつけ、スカートをどれだけ膨らませるかが主流の時代において、メリーティアのドレスは異端だった。ぴったりと肌に寄り添うマーメイドラインの真っ赤なドレスである。
大人っぽい雰囲気のドレスはメリーティアをたちまち妖艶に魅せ、しかしひざ下から広がる裾のデザインは一方で上品さも醸し出していた。普段は下ろされていることが多い髪はまとめ上げられ、白くなめらかな背中が惜しげもなく晒されている。
まさしく『稀代の悪女』と呼ばれるに相応しい装いだった。
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