幼なじみ公爵の伝わらない溺愛

柴田

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 よほど全身に力を込めているのか、ヘンリーの首筋に血管が浮いているのを見つけた。ダリアはそれを舌でなぞっていく。するといつか自分がつけたキスマークのそばに辿り着いた。
 これをつけたとき、ヘンリーがとてもうれしそうだったのを思い出す。
 ダリアは汗で湿った肌に、ぢゅ、ときつく吸いついた。

「う、あ……ッ!」

 中でビクンと跳ねた陰茎を、ダリアは意識的に締めつける。
 やっぱりヘンリーは、ダリアにキスマークをつけられるのがたまらなく好きらしい。反応が顕著すぎる。ヘンリーは腿も腹筋も痙攣させて、もう我慢も限界の様子だ。うわ言のように「だめ、だめ」と言われると余計に嗜虐心をくすぐられた。

 ヘンリーの白い肌は、少し吸っただけで色濃く痕が残る。ダリアは腰を揺らめかせながら、そうして首や肩、胸板などにいくつもキスマークをつけていった。

「もう出していい……? ダリアの中に出したい。いいって言って」
「だめよ」
「出る、っ、……も、出る、でる……ッ、出るから、ッく、ふ」
「だめよヘンリー」
「はあ……っ、ちなみに約束破ったら、どうなっちゃうの……?」

 ヘンリーにおそるおそる問われ、ダリアは黙り込む。からかいの延長線上で口にしただけのことだから、我慢をさせる過程を楽しんでいただけだ。約束を破ったあとのことまで特に考えていなかった。

「んー……こうする、とか?」

 ヘンリーの首筋に再び顔を寄せたダリアは、キスマークをつけたそこに、がぶ、と噛みついた。歯型がつくくらい強く。

「~~~~ッ! ぁ、く……っ!」

 その途端、ヘンリーの腰が突き上げられる。
 ガクガクと下半身を震わせて、ヘンリーは射精していた。

 いきなり最奥を力強く貫かれ、子宮の奥をびゅーっびゅーっと熱いものが叩くのを感じ、ダリアもつられて絶頂に押し上げられる。
 ダリアはじんわりと広がる快感に呆けていた。

 長い長い射精が終わると、ヘンリーがのっそりと身体を起こす。獣のような呼吸が耳についた。

「ヘンリー……?」

 腕も使えないというのに、ヘンリーは下半身の結合を解かないまま器用にダリアをシーツに転がした。あっという間に体勢がひっくり返されて、気づけばヘンリーの下敷きになっている。
 腕を背後で縛っているため、ヘンリーは額と肩をシーツにつけてかろうじて身を支えていた。それでもヘンリーの体重がほとんどダリアにのしかかってくる。そのせいで挿入が深くなり、ぐぷぷぷ、と子宮を押し潰されたダリアは声も出せずに空気を噛んだ。

 ヘンリーの陰茎が硬いままだ。むしろ、より大きくなっているような気さえする。
 ダリアは嫌な予感がして、心拍数が上がっていくのをどうにか落ち着けながらヘンリーを横目で見た。ヘンリーもダリアを見つめていて、視線が重なる。
 ヘンリーの表情からは、柔らかい雰囲気がごっそり抜け落ちていた。

 ずるぅっと陰茎が引き出されていく。
 ダリアが「待って」と声を上げようとしたその瞬間、どちゅん! と一気に根本まで突き入れられた。それを皮切りに、手加減が一切なされていない律動がダリアを犯す。

「や、あ、あぁっ……!」
「あー……むり、本当にむり、ごめんねダリア……っ」
「イク、待って、っお願い待って、イったばっかりなのに……っいくいくいく、ん゙う!」
「煽ったダリアが悪いんだよ」
「バカぁ……っ! 怒るわよ!?」
「怒っていいよ。逆にすっごく興奮しちゃうけど、いい?」

 ダリアに噛まれたところがジンジンと熱を持っている。そこから凄まじい熱が全身に広がって、ヘンリーはもうダリアを奪い尽くすことしか考えられなくなった。ダリアを好きになったきっかけが、彼女の泣き顔だったことを不意に思い出した。我ながら最低だと思うけれど、涙目で怒ってバシバシと叩いてくる姿が猛烈に下半身に効く。

 ――ダリアの泣き顔が好きでも、彼女を泣かせるようなことはしたくない。そんなことを言っていたかつての自分を嘲笑うような状況だった。いくらきれいごとを並べようと、結局ヘンリーによって感情を揺さぶられるダリアの姿が一番興奮するのだ。
 いつもならやめてあげられるのに、今日はやめてあげられない。
 そんな余裕は一ミリも残ってなどいなかった。ダリアのせいだ。キスマークだけでも飛び上がるほどうれしかったのに、さらに強い独占欲を刻むようにダリアが噛み痕なんてつけるから、ヘンリーは興奮しすぎて脳が焼き切れそうだった。

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