解き放つ ~光と影のあいだで~

青空 蒼空

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 試験が終わり 俺は渉との約束通り 勉強を教えるために病院を訪れた
 
 階段を上りながら 頭の中で今日の勉強予定を再確認する
 試験期間中テスト勉強はせず 渉の受験勉強の予定ばかりを考えていた
 
 今までも順調だったが 少し やり方を変えようと考えている
 渉は 基礎がしっかりと出来ているので 更に幅を広げていこうと思った
 どう教えていこうか考えている時は 楽しくて仕方がなかった
 とても充実していた

 まぁ そのおかげで 自分の試験はボロボロだったことは 言うまでもないが・・・
 
 それでも良かった
 渉は 俺に生きていることを感じさせてくれる

 「渉! 今日から・・・また よろしく・・・」

 あれ? 
 渉が使っていたベッドは 片付けられていた・・・
 
 「退院したのかな・・・?」

 だったら連絡くれれば・・・って 毎日来ていたから 連絡先の交換もしていなかったな・・・

 俺は ナースステーションに渉のことを聞きに行った
 渉の病室はナースステーションから近くなので すぐにたどり着く

 忙しくしているのか? 看護師がいない
 俺は辺りを見回した
 少し離れた病室から出てきた看護師がいたので 俺は 渉のことを聞くために小走りで近づいた

 「失礼します!」 
 看護師を呼び止める
 
 「305号室に入院していた男の子は 退院したのですか?」

 看護師は歩みを止め 俺に視線を向けた
 それから ゆっくり近づき向かいに立つ・・・
 
 そして緊張した面持ちで静かに答えた

 「渉君ですね・・残念ながら・・・ 
 今朝早くに お亡くなりになられました」

 心臓が跳ねた
 今! 今なんて言った⁉

 「えっ・・・?・・・あっ あの・・・渉が ですか?」
 
 「はい 清水渉君のことですよね」 
 と看護師は 冷静かつ柔らかい言葉で そう告げる

 清水って言うんだ・・・と どうでもいいことが 頭に浮かぶ
 清水と名字が同じなんだと 現実逃避をするかのように考える・・・

 看護師は頭を下げて仕事に戻っていった
 
 そういえば今日 清水は試験の最終日なのに休んでいた 
 みんなが「どうしたんだ?」と大騒ぎしていたことを思い出す

 初めて理解した
 渉が時間を惜しんでいたことを・・・

 「そういうことだったのか・・・」
 ぼそっと呟く
 
 俺は・・・馬鹿か?
 気付かなかったなんて・・・
 自分に腹が立つ・・・

 時が止まったように その場から動けなかった・・・

☆☆☆

 「大丈夫ですか?」

 どれぐらい動けなかったのだろう?
 看護師に声を掛けられ我に返る
 俺は それに返事をせずに力なくその場を離れる

 項垂れながら 渉と初めて出会った屋上に行った
 そして フェンスを握りしめ空を見上げた
 
 今日は よく晴れ渡っている
 まるで 最後に見た渉の笑顔のようだ・・・
 
 『巧也は 最高だよ!!』

 「あれが・・・最後だったのかよ・・・」
 俺は その場に俯き崩れ落ちた

 どうしてだよ
 あんなに一生懸命 勉強していたのに・・・
 辰山高校に行きたかったんじゃねえのかよ
 わかんねえ・・・わかんねえよ!

 死ぬって 分かっていたのかよ・・・
 分かってんなら なんで勉強してんだよ!

 「死ぬまで 勉強してんじゃねえよ!」

 俺の目から 次々に大粒の涙が こぼれていく
 コンクリートの床上に 涙のシミが出来る

 俺は 怒っているのか?
 俺は 悲しいのか?
 この気持ち 誰か何とかしてくれよ!

 「俺は 何していたんだよ・・・
 勉強じゃなく もっと楽しいことを・・・
 教えてあげれば・・・」

 楽しいこと?
 楽しいことって なんだ?

 「普通は・・・そう思うよな・・・」
 
 俺の大嫌いな奴の声がした
 いつの間に来ていたのか・・・
 俺のすぐ後ろに立っていた
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