イケメンマフィアの仰せのままに~断れるはずありません!

氷室ユリ

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第四章 受け入れられたオモイ

30 エメラルドの招き(3)

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 翌朝早くに、ラウルは目を覚ました。隣りでは愛しい人が穏やかな寝息を立てながら眠っている。

「…夢ではなかったようだ」
 呟くと、その唇に触れるだけのキスを落とす。
「ん…」
 反応して声を漏らしたユイに、少しだけ体を離して様子を見る。
――起こしてしまったか?――

 本当は昨夜、どうしてもユイを抱きたかった。すでに朝からラウルの性欲は抑えようもなく高ぶってしまっている。
 ユイの唇が薄く開いて何かを言っている。だが何と言っているのか分からない。
 そっと耳を近づけて聞き取ろうと試みた。その視線が無意識にユイの胸元に向いて、ラウルは寝間着越しにそこへ触れる。

「んん…もっとっ」
 意味ありげな言葉に続き、小振りながら張りのある膨らみの頂がほんの少し反応を示した。それが分かると、ラウルはもう止まれない。
「ユイ…愛しているよ」
 薄く開いたままの唇に、今度は濃厚なキスを贈ってみる。

 ユイの唇を覆うように塞ぐと、端から余すところなく舌で愛撫して行く。その柔らかな感触と得も言われぬ甘さに暴走は止まらず、舌でユイの唇を押し開いて口内に侵入する。
 ここまでされてもユイはまだ夢の中にいる。それでも健気にキスに応えて来る様子に、ラウルは許可をもらった気分になる。

 たちまち胸元のリボンは解かれ、ユイの白い肌が朝日にさらされた。ラウルの大きな手の平で愛おし気に愛撫され、再びユイが判別不能な何かを囁く。

「ずっとお預けだったのだぞ?…私はもう、おまえしか愛さないと決めたのだ」
 胸の頂を口に含んで舌で転がす。さらに手際良くユイの寝間着を取り去ったラウルは、薄いショーツの中に手を忍ばせた。
 その指が陰核に触れた時、高めの声が響いた。
「あんっ。…何…?」
 ようやくユイがまどろみから目覚めた。

「済まない、完全に起こしてしまったな」
「ラウル…」
 ユイの太股に意図せずラウルの精気みなぎる象徴が当たっている。
――パジャマ膨らみすぎ!ヤダ、フォルディス様ったら朝からこんなになって…――
 困惑したユイだったが、昨夜酔っ払って寝てしまった事を思い出し、申し訳ない気持ちになる。

 ユイの戸惑いに気づいて、ラウルは冷静さを取り戻した。
「まだ早い。もっと寝てくれ」身を起こしてユイを解放した。
「いいの、来て、…ラウルの愛、欲しいわ」
 両手をラウルの体に回して、今度はユイの方から引き寄せる。ホッとしたように微笑むラウルを見て、ユイも笑みを返した。

 ユイの手で下の着衣を取り払われると、ラウルの窮屈そうにしていた象徴が勢い良く顔を出した。
――うっ、凄すぎる…朝からこれってどんだけ元気なの?――
 思わず仰け反ったユイだが、こんなにまで自分を欲してくれていると思うと、愛おしさが止まらない。
 そっと象徴に触れると、両手でそれを優しく包み込む。

「…おまえに触れられただけで、さらに元気になってしまった」
「あっ…ええっ?!」
 愛撫していたユイの手はラウルの手に絡め取られて自由を奪われた。
――これはもう限界だ。すぐに入れたい…だが、間違いなくユイが痛がる。来ていいと言ってくれたが本当にいいのか――
 ラウルの中で葛藤が巻き起こる。

「ユイ、かなり久しぶりだから、またおまえのここはガードが固くなっているはず」
「ん…そうかも。でも何か、すでにいっぱい出て来てない?」
 ユイの言い分通り、茂みの奥の入口にはたっぷりの愛液が溢れている。
 ラウルの指がそれを掻き混ぜながら奥へ進む。
「はぁ!あん…気持ちいい…っ、ラウル、大丈夫だから、してみて、早く!」

 思わぬ言い分にラウルが指を止めた。
――早く、とは…これまで言われた事がない。ユイも私をこんなにも求めてくれていたのか――
 ラウルはこう捉えて感激するが、実際は微妙に違う。
――指だけで達してしまいそう。感動の再会後初なのに、それはなんかイヤ!――

「では遠慮なく行くぞ。痛かったら言え」
「ええ。来て、ラウル、愛してる」
「愛してるよ、ユイ。ありがとう」

 答えるや、ラウルの逞しすぎる象徴がユイの中へ押し入ろうとする。
 予想通り入口は狭まっており、初めての夜同様双方に痛みが走る。

「あ、いっ…!痛い!」
「私も痛い」
「ラウ、ル、好きよ。私、拒絶してないからね?」
 涙目で途切れ途切れに訴えるユイに、ラウルは優しく頷く。
「分かっている。ユイ、力を抜け。私に全て委ねてくれ。いいか?」
「もちろん」

 いつぞやの夜に言われた事を思い出すユイ。自分は力を入れ過ぎているのだと。
――お尻の力を抜く、お尻の力を抜く…。ああ!抜けない!――
 しようとすればする程できない。何せ今の自分は全裸で、男の前で大股を開いている。
 やはりこの無防備すぎる状況がどうしても受け入れられない。

――待って。そうじゃない。私はこの人を信じてるんだからいいのよ――
 ユイがこう思い至った瞬間、体の力が抜けて行く。

 目聡くそれを察知したラウルは、一気にユイの中に押し進んだ。愛液で満たされていたそこがラウルの象徴で目一杯に広げられ、最奥まで到達した。

「私を受け入れてくれて、ありがとう、ユイ…愛している」
「ああ…っ、もうダメ!キツイ、キツ~イ!ラウル、おっきすぎる!」
 悲鳴交じりのこんなセリフの数々を撒き散らしながら、ユイは絶頂を迎えた。
――はぁ…入れられただけでこれって、普通なの?分かんない!――
 一瞬で達してしまったユイだが、当然これで終わるはずがない。

 ラウルが律動を始めると、体を揺さぶられたユイからは再び声が漏れる。
 そしてすぐに二度目の絶頂を迎える。
「待っ、待って…、またっ、ああ!…」

――前からだが、ユイは本当に感度がいいようだ。かく言う私も、くっ…。ああ早く中に思う存分出したい――
 ラウルは密かに、今もきっちり避妊していた。

 こんな調子で何度も達せられたユイは、再び気怠い眠りに落ちて行った。

 ラウルの尽きぬ性欲もどうにか満たされ、至福の賢者タイムを経てみれば、ちょうど起床時間を迎えていた。果たしてこれが計算で導かれたかは不明だ。
 ユイをベッドに残し、ラウルは寝室を後にする。身支度を済ませてダイニングに向かった。

「おはようございます、ラウル様。ユイ様は?」
 待機していたダンが不思議そうに尋ねる。いつもは二人揃って食事をしていたためだ。
「おはよう。ユイはまだ休んでいる。起きるまで寝かせてやってくれ」
「はあ…もしや二日酔いですか?昨夜はかなり飲んでおられたようですからなぁ!」
「そうではない」
 間髪を入れずに否定され、それ以上話そうとしない様子に、有能すぎるダンはピンと来る。

――はっ!そうか、そうだよな、俺は何てバカな質問を!――
 目の前にいるラウルを見て確信に至る。その顔は見違えるように輝いている。それは、ユイと初めて夜を共にした翌日の再来のようだ。

「かしこまりました。ではそのように」
 この有能な側近は、決してそれを冷やかそうとはしない。ラウルの幸せは自分の幸せ。ラウルが満たされていれば自分も満たされるのだ。
 大いに満ち足りた気分で、ダンはダイニングを後にした。


 それから数時間が経ってようやくユイが目を覚ます。

「んん~…今何時?」
 気怠さが残る体を起こして時計を見ると、もう昼前だ。
「げっ!11時半…初っ端から寝坊じゃないっ」

 ガバッと起き出して立ち上がるも、あの部分が鈍く痛む。久々の情事は体に堪える。
 だが性液まみれのはずの体は相変わらず不快感ゼロで清々しい。

 再びベッドに腰を下ろして、すでに日が高くなった外の景色に目を向け、無意識にため息が零れた。
「あ~あ。こんな事で、私にラウルの奥様が務まるのかしら…」
 そんな事を考えながら、またもまどろみが襲って来る。
「ま、いっか。もう少し寝よっと…」

 開き直って再び愛の余韻の残るシーツに潜り込んだ時、ノックの音が響いた。
「ユイ様、お加減はいかがですか?」
 声の主はどうやらメイドだ。

「…んもう、起きろって事?」
 仕方なく起き上がり、薄手のガウンを羽織って顔を出す。
「心配かけてごめんなさい、ちょっと疲れが残ってて」
――そういう事にしておいて!――
「あっ…差し出がましい事をして申し訳ございません…お食事を摂られてからお休みになった方がよろしいのではと…」
 ユイの疲れた顔を見た若い女性メイドは、オドオドしながら説明した。
「ラウルに頼まれたの?」
「いいえ、私が勝手に…申し訳ございません!」
「謝らないで。ありがとう、食事、用意してくれる?」

「はい、ただいま!」
 ユイの答えに一転顔をほころばせて、メイドは廊下を走って行った。

「あの人、新しいメイドさんかな?」
 ユイはこう思ったが、彼女はユイが後遺症に苦しんでいた頃から身の回りの世話をしていた者だ。ユイと同年代の地元の娘だ。
 ここフォルディス家では、若いメイドはユイがやって来るまでは雇っていなかった。つまりユイへの配慮で迎えた人材である。


 身支度を軽く整えユイが食事を始めると、メイドと入れ替わりにダンが現れた。

「ユイ様、お目覚めになられましたか」
「はい…済みません、初日から寝坊して」
「いえ。むしろ今日は初日なのですから、ゆっくりなさってください」
 思いがけない返答にユイが目を瞬く。
「どうかされましたか?」
「どうって…何か拍子抜けって言うか!」
「何がですか」
「いつもだったら、ほら、もっと貶されてたから?」
「またまたご冗談を。時期奥方様となられるお方を貶すなど?滅相もございません」

――この澄まし顔がなお怪しいわ。さては何か企んでるわね――
 疑わしい目で探っていたユイだが、ダンは一向に嫌味を言う気配はない。

 軽く肩を竦め、食事を再開する。
「で?何か用?」
「ああ、はい、どうしてもお話しておきたい事がございましたので…お食事が終わられてから出直します」
「いいわよ、今で。あなたも忙しいでしょ」
「お気遣い恐縮です。では。今日はお部屋でゆっくりなさると思いますので、今後の事という事でお聞きいただければ」
「だから何?早く言って」モゴモゴと料理を咀嚼しながら促すユイ。

 その急かし方はどこかラウルを彷彿とさせて、ダンの表情がやや崩れる。
――この言い方、ラウル様に瓜二つ…。物を口に入れながら話される事は絶対にない
が!やはり運命のお二人だ――
 急にニヤケ出したダンに、ユイがギョッとなる。
――何考えてるの?まさか変な事言い出さないよね?――

 そのユイの予感は的中する。

「今後、お一人での外出はお控えください」
「はぁ?何それ。時期奥方様の自由を剥奪する気?」
「ですから、お一人で街中を出歩かれるのは慎んでいただきたいのです」
「それって、一人で出てってまた事故でも起こさないか心配してる?」
 こんなコメントにダンは即答する。
「そうではありません。ユイ様の運転技術は疑っておりません」
「だったら何?それはラウルの命令なの?」
「いえ。私の独断です」
「へえ~、あなたってそんなに偉かったんだ!知らなかったわ」

「何と言われようと考えは変わりません。どうかお願いいたします」
 頑なにそう言い終えるや、スキンヘッドを深く下げたまま返答を待っている。

 食事どころではなくなったユイは、ナプキンをテーブルに置くと立ち上がる。
「ふざけないで。私が何のためにここにいると思ってるの?残念だけど、籠の鳥になるためじゃないのよ」
「ユイ様、ご着席を。まだお食事が途中です」
「食欲なんて失せたわ!」
「やはり出直した方が良かったですね」顔を上げたダンは至って真面目な表情だ。

 意地悪をしている訳ではなさそうだと判断するも、納得が行かない。
――花嫁選定の頃ならまだしも、その座を勝ち取ってさえもこれ?勘弁して!――

「ラウルはどこ?あなたの独断になんて従う義理はないわ。彼に判断してもらいましょうよ」
「かしこまりました。ラウル様は外出中ですので、戻られ次第改めてお伺いいたします」
 そう言うとダンは部屋を出て行った。

「何なの?一段と堅物になったじゃない!何か腹立つっ!」

 憤慨したままユイもラウルの部屋を飛び出す。
 過去に自分用に用意されていた部屋のドアを開けてみると、まだ当時のまま残されていた。
 若干の懐かしさを覚えながら、壁に掛けられた絵画や本棚を見回し、その先のバルコニーに出る。午後のやや強めの日差しが、少しだけ傾き始めていた。

「一服したいけど、ないよね…。で、買いにも行けないって?冗談じゃない!」
 盛大なため息を吐きながら、手すりにもたれ掛かって下を覗く。見知った部下と目が合って、軽く手を振った。
「ユイ様!また射撃の手解きお願いします!」
「ええ、喜んで。そのうち抜き打ちで覗きに行くわ、気を抜かずに練習に励んで」
「はい!待ってます!」

 嬉々とした顔で去った部下の後にも、何人も通りかかった。その全員がユイに気づいて立ち止まり、会釈をしてから去って行くこの礼儀正しさ。
 その中には、幹部と思われる者も含まれていた。ラウルの父の代からここにいる者達とは交流もなく親しい訳でもない。それでも、ユイが正式な婚約者と公表されてから、彼等の態度は一変していた。

「こういう家柄、なのよね…。増々自信喪失!」

 ダンの言い分はもっともなのだ。そんな由緒あるフォルディシュティ家の奥方が街中に護衛も連れず、しょっちゅう一人で現れたとしたら?
 ふと新堂と過ごした日々を思い出す。あの頃にはない窮屈さを感じた。
「あ~あ…。先生、元気かなぁ」
 もし新堂を選んでいたなら、こんな悩みは皆無だった?…いや、そうでもないかもしれない。
 いつでも無茶をするユイを留めさせようと、新堂が外出禁止を言い出す可能性は十分にあるのだから!

「この家って確か、相当歴史ある家柄だったよね…。ラウルは今までどういうプライベート過ごして来たんだろ…聞いた事なかったかも」
 根っからの庶民派には計り知れない世界である。

 また新たな難題が、ユイを待ち受けていた。


 夕方になって、ラウルが出先から戻って来た。

「ユイ。食事をほとんど摂っていないとメイドから聞いた。どこか体調が悪いのか?」
「ラウル。お帰りなさい、そんなんじゃないの」
 ラウルが、――朝に無理をさせすぎたか…――と案じる一方。
――そんな報告までしてるとは!――とユイは呆れていた。
 あれから部屋に戻ると、メイドが配膳の片付けと諸々の清掃を済ませており、室内はまた豪華ホテルの一室へと生まれ変わっていた。

「元気がないな。何かあったか?」
「え~?そう?」おどけて答えるユイだが、その顔色はやはり冴えない。
 心配になったラウルは、ユイを優しく誘導してソファに座らせた。

「ああそうだ、ラウルにお礼言ってなかったわね」
「何の?」
「コルトよ。ずっと大事に保管してくれたのね。それにメンテまで!前よりも輝いてるわ。嬉しかった、本当にありがとう」
 今は手元にはない。ユイがコルトをラウルの部屋に持ち込む事はない。
「別に大した事はしていない。本当は、返すつもりもなかったのだ」
「え?」
「…いや、何でもない。いつも拳銃のメンテナンスは業者にやらせているから、行き届いていたなら良かった」

「え、そうなの?!」
――さすがはお金持ち!こんなんじゃ、先が思いやられそ…――

「運転もそうだったが、久しぶりにすると楽しいものだな」
「楽しかったなら良かったわ」あえてラウルと同じ言い回しで答える。
 だが運転という言葉に反応してしまう。
 ユイの顔が強張っても、ラウルは気づかない。
「今度また二人でドライブしよう。新しい車を新調しようと思っているのだが、何がいい?」
「またって、ラウルとドライブした事なんてないけど?」
「ああ…。あれはドライブとは言わないか」
「あれ?って、まさかアレ!」

 それはラウルが攫われた日だ。追跡したユイの車での帰途、ラウルが能力で運転した事があった。
「あの日の勇姿は絶対に忘れない。おまえが私の敵ではないと認識したきっかけでもあるのだから」
「お恥ずかしながら…。全部打ち明けて、安心して爆睡しちゃうなんてね~」
「随分と度胸のある女だと思ったよ」
「もうっ、そういうのは忘れていいから!」

 ラウルと話していると、不思議と不安が薄れて行くから不思議だ。ついさっきまで悩んでいた事がどうでも良くなる。
――ドライブ、ラウルと二人ならいいのよね。もうそれでいいや。一緒にいられる時間が増えるんだもの――

「ねえ?ラウルは自分の車持ってないよね。一人でどこかドライブしたりとか、趣味とかないの?」
「車は家に何台もある。ヘリもジェット機もクルーザーもある。不自由はしていない」
――おかしな質問だ。何を今さら?まだ記憶が曖昧なのかもしれない…――
「…いやだから、そういう意味じゃなくてっ」
「?」

――…ああ、そうか。私がバカだった――
 目の前の朗らかな笑みを称える品の良い顔に、ユイは悟った。根っからの金持ちの生活というものを。
 そもそも興味のない者にとって、車は単なる移動手段。拳銃のメンテも含め、運転や諸々の日常の些事は自分がやる事には入らないのだ。

 ラウルは微笑んだままユイの次の言葉を待つ。
 それに気づき、ユイは小さく息を吐いてから笑みを向ける。
「えっと、何の話だっけ?」
「車は何が?」
「ああそうだ、ベンツとポルシェ以外なら何でも」
「分かった。私が見繕っておく。楽しみにしていろ」
「うん!」

――もう何もかも、どうにでもなれ!――

 ユイは心の葛藤を無理やり押し留め、今はただこの目の前の大金持ちに身を委ねる事にした。

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