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第十六局 矢倉さんは炊事でも守りが固い
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炊事場で木村先輩がとても張り切っていた。
「さーて、そういう訳で。食事の準備をするよ。みんな準備はいい? まずは全員そろっているか点呼をとります。菊水くん!」
「はーい」
「いちご!」
「はいはい。いますよ」
「矢倉っち」
「はい」
「よし全員揃ったね」
「ちょっとまてぃ」
点呼の声に思わずつっこみを入れる。
「僕がまだよばれていませんよっ」
「おおっと、美濃っちを忘れていた」
「わざとでしょ、わざとっ」
「はっはー。この私がわざと美濃っちを呼ばないなんて事をすると?」
木村先輩が胸をはって答える。なぜこの人はいつも無駄に自信満々なのか。
「木村先輩だからしそうなんです」
「仕方ない。そこまでいうのなら、美濃っちには重大な任務を与えよう。まずは火をおこすのだ。これは重大な役目だぞ」
言いながら薪を指し示す。どうやら今のはそのための前振りだったらしい。
「ええー、火おこしですか」
「着火剤とライターはあるから、簡単簡単。頼んだぞ。我が心の友よ」
「心の友じゃなくて後輩ですけど。まぁ、わかりましたよ」
渋々と立ち上がり薪の方へと向かう。面倒な仕事ではあるけど、こういうのはやっぱり男手の方が向いているかもしれない。
「いちごと矢倉っちは野菜を洗って、適切なサイズに切ってね。私はこっちでお肉の準備をする。菊水くんはお米といでおいてね」
木村先輩はびしびしと仕切っていく。
他のみんなも指示通りに動き始めていく。
もちろん作るのはカレーだ。こういう時はカレーだと相場が決まっている。
ただ木村先輩はとりだした肉を切るのではなく、何か包丁で切れ目をいれたかと思うと、何か金属の棒でがしがしと叩き始めていた。
「木村先輩、それ何しているんですか?」
矢倉さんが木村先輩にたずねていた。ちょっと不思議に思ったのだろう。僕も不思議だ。
「ん? これね。安いお肉だからさー、たぶん煮込むと固くなると思うんだよね。だから筋きって、肉を叩いて柔らかくしてるんだよ」
「そうなんですね。うちだとそんなことしたことなかったです」
矢倉さんが感心して息を吐き出していた。そんな姿も可愛い。
「ヨーグルトやコーラにつけこむとか。そういう手もあるけどね」
「へー。コーラですか」
矢倉さんも話しながら、にんじんの皮をむいている。
矢倉さんの料理姿もいい。いいな。エプロン姿が可愛い。
いちご先輩はたまねぎを切りながら涙を漏らしていた。たまねぎが目にしみるのだろう。いちご先輩は普段はあまり料理はしないのか、少し手がぎこちない。
おっと自分の仕事もこなさねば。
薪をならべて、その間に新聞紙と着火剤を詰めていく。それからライターで火をつける。
しかし案外それだけが燃えてしまって、薪に火がつかない。
「火が、つかない」
これはまずい。女性陣の準備が出来るまでの間に火をおこしていないと、料理が出来ないぞ。なんとか火をつけようとするのだが、なかなか火がおこせない。このままでは着火剤が無くなってしまう。
焦っているところにに菊水先輩がやってきたかと思うと、どこからか拾ってきた松ぼっくりをほうりこんでいく。そしてその上に細かい枝などをならべて、再び火をつけていた。
めきめきと音を立てながら、火が広がっていく。
「松ぼっくりは着火剤の変わりになるんだよ。でもすぐ燃えちゃうから燃えやすい細かい枝とかを並べるといいよ」
「へー、先輩よくしってますね」
菊水先輩のおかげで何とか薪に火もついたようだ。助かった。
「将棋もキャンプもまずは基礎知識だよー。知らなきゃどうしようもないからね」
「なるほど」
確かに知らなければ対応できないことも、知っているだけで何とかなるものだ。僕ももっといろいろ覚えていかないとなと思う。
なんだかんだですぐにカレーも出来上がった。はんごうで炊いたご飯もきっちり炊きあがっている。
将棋部の面々と一緒に食事をとる。
こういうのが部活の結束を固めていくのかもしれない。
そして菊水先輩の基礎知識という言葉も心に残る。確かに僕は知識が足りないのかもしれない。もっともっと力をつけていかねば。
大会で僕も少しは役に立てるように。
カレーを食べながら、心に誓う。
「さーて、そういう訳で。食事の準備をするよ。みんな準備はいい? まずは全員そろっているか点呼をとります。菊水くん!」
「はーい」
「いちご!」
「はいはい。いますよ」
「矢倉っち」
「はい」
「よし全員揃ったね」
「ちょっとまてぃ」
点呼の声に思わずつっこみを入れる。
「僕がまだよばれていませんよっ」
「おおっと、美濃っちを忘れていた」
「わざとでしょ、わざとっ」
「はっはー。この私がわざと美濃っちを呼ばないなんて事をすると?」
木村先輩が胸をはって答える。なぜこの人はいつも無駄に自信満々なのか。
「木村先輩だからしそうなんです」
「仕方ない。そこまでいうのなら、美濃っちには重大な任務を与えよう。まずは火をおこすのだ。これは重大な役目だぞ」
言いながら薪を指し示す。どうやら今のはそのための前振りだったらしい。
「ええー、火おこしですか」
「着火剤とライターはあるから、簡単簡単。頼んだぞ。我が心の友よ」
「心の友じゃなくて後輩ですけど。まぁ、わかりましたよ」
渋々と立ち上がり薪の方へと向かう。面倒な仕事ではあるけど、こういうのはやっぱり男手の方が向いているかもしれない。
「いちごと矢倉っちは野菜を洗って、適切なサイズに切ってね。私はこっちでお肉の準備をする。菊水くんはお米といでおいてね」
木村先輩はびしびしと仕切っていく。
他のみんなも指示通りに動き始めていく。
もちろん作るのはカレーだ。こういう時はカレーだと相場が決まっている。
ただ木村先輩はとりだした肉を切るのではなく、何か包丁で切れ目をいれたかと思うと、何か金属の棒でがしがしと叩き始めていた。
「木村先輩、それ何しているんですか?」
矢倉さんが木村先輩にたずねていた。ちょっと不思議に思ったのだろう。僕も不思議だ。
「ん? これね。安いお肉だからさー、たぶん煮込むと固くなると思うんだよね。だから筋きって、肉を叩いて柔らかくしてるんだよ」
「そうなんですね。うちだとそんなことしたことなかったです」
矢倉さんが感心して息を吐き出していた。そんな姿も可愛い。
「ヨーグルトやコーラにつけこむとか。そういう手もあるけどね」
「へー。コーラですか」
矢倉さんも話しながら、にんじんの皮をむいている。
矢倉さんの料理姿もいい。いいな。エプロン姿が可愛い。
いちご先輩はたまねぎを切りながら涙を漏らしていた。たまねぎが目にしみるのだろう。いちご先輩は普段はあまり料理はしないのか、少し手がぎこちない。
おっと自分の仕事もこなさねば。
薪をならべて、その間に新聞紙と着火剤を詰めていく。それからライターで火をつける。
しかし案外それだけが燃えてしまって、薪に火がつかない。
「火が、つかない」
これはまずい。女性陣の準備が出来るまでの間に火をおこしていないと、料理が出来ないぞ。なんとか火をつけようとするのだが、なかなか火がおこせない。このままでは着火剤が無くなってしまう。
焦っているところにに菊水先輩がやってきたかと思うと、どこからか拾ってきた松ぼっくりをほうりこんでいく。そしてその上に細かい枝などをならべて、再び火をつけていた。
めきめきと音を立てながら、火が広がっていく。
「松ぼっくりは着火剤の変わりになるんだよ。でもすぐ燃えちゃうから燃えやすい細かい枝とかを並べるといいよ」
「へー、先輩よくしってますね」
菊水先輩のおかげで何とか薪に火もついたようだ。助かった。
「将棋もキャンプもまずは基礎知識だよー。知らなきゃどうしようもないからね」
「なるほど」
確かに知らなければ対応できないことも、知っているだけで何とかなるものだ。僕ももっといろいろ覚えていかないとなと思う。
なんだかんだですぐにカレーも出来上がった。はんごうで炊いたご飯もきっちり炊きあがっている。
将棋部の面々と一緒に食事をとる。
こういうのが部活の結束を固めていくのかもしれない。
そして菊水先輩の基礎知識という言葉も心に残る。確かに僕は知識が足りないのかもしれない。もっともっと力をつけていかねば。
大会で僕も少しは役に立てるように。
カレーを食べながら、心に誓う。
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