18 / 31
第五章
恋人
しおりを挟む
約束の日。
久しぶりに会えた嬉しさで、自分から彼の手をつかみに行った。彼は驚いたんだろう、一瞬目を見開きびくっとしたが、すぐに私の手を強く引いてたくましい腕の中へ迎え入れてくれた。
「そうか、同じ気持ちだったんだな、会いたかったよ、さくら」
私も彼の香りに包まれながら、顔をあげて答えた。
「私も会いたかったです、蓮さん」
人目もあり、彼は私のおでこに軽く唇を乗せて腕の中から解放した。
「さてと、さくら姫」
彼は上から下へと私を見て、にっこりする。まぶしすぎる。
「今日は希望通りスカートで来てくれたようだな。可愛いぞ」
膝より少し短いふわりとしたスカート。夏らしさを意識した水色に花柄だ。
「ええ。蓮王子のご希望とあらばお応えしないといけません。王子は今日も素敵ですね」
彼は恥ずかしそうにしている。なんか、嬉しい。
今日の彼は半そでのブランド綿シャツ。同じブランドの少し短めのパンツ。デッキシューズ。夏らしい装いだ。でも彼は何を着ても似合う。本当にカッコいい。こんな素敵な人とお付き合いなんてまだ信じられない。
花火の前に日が沈むのを一緒に海から見ようというので予定より早めに海へ出た。今日は快晴。きっと素晴らしい夕日が見られるだろうと思った。
甲板は暑いので夕方になるまで下で少し休憩。軽くつまみながら話した。
「さくら。叔父さんはどう?手術するんだろ」
「ええ。来週の予定です」
「何かあれば言ってくれ。力になるよ。お金のことも含めてだぞ」
私の顔を見て言う。もう、嫌になる。
「……それはだめ」
「さくら、治療にお金かかるだろ」
「大丈夫、それは心配しないでください。それより、店のほうの利益を……芹那さんにも言われちゃった。きちんとお支払いしますね」
「芹那って?」
「新しく本部から派遣されて店に入ってくれた人です。フラワーアーティストとして名取の名前も出しながら活躍している人なんです。正直、私より有名人。彼女のお陰でセレブリティのお客様が何人かつきました」
「芹那……名取の推薦だったよな。苗字はなんだ」
「林さんです。林芹那さん。以前こちらに住んでいたこともあるそうです」
彼は少し黙って考えている。なんだろう。
「さくら、叔父さんのことが落ち着いたら色々相談しよう。早めに決めたほうがよさそうだ」
「え?」
「まあ、いい。君はふたつのことをいっぺんにはできないタイプだな。結構目の前のことを一生懸命になってやる。恋愛もそうだろ?僕一筋だ」
「何それ?どういう意味です……」
「ごめん、悪い意味じゃない。とにかく、叔父さんのこともあって叔母さんを支えないといけないだろ。店のことはそのあとだ。そして、それが決まったら両親に会ってもらいたい」
「蓮さん。それは……」
「だから、ひとつずつクリアにしていくから焦らなくていい。目の前のことからやろう。実は僕も色々あって少し忙しくなりそうなんだ」
「蓮さんの忙しいのなんて今にはじまったことじゃないですよね」
「あ、言うなあ。確かにそうだけど、ちょっとね」
「……何かありました?」
彼の表情に含むものがあった。私は嫌な予感がした。
「いや。もうこの話はおしまいだ」
そう言うと、彼は私の手を引いて甲板に出た。日が沈んできていた。海に日の光が映えて綺麗だ。
彼は私を抱き寄せ、私は彼の肩に頭を乗せながらその夕日が落ちていくのを見守った。
「日が落ちる瞬間に願い事をひとつしようか」
「……なにを?」
「俺の願い事はさくらと一緒にいられること。それだけだ」
「それなら私も蓮さんと一緒にいられることをお願いする」
「それならってなんだ?ほかにもあるのか?」
「叔父さんの手術がうまくいきますように……」
彼は私の顔を見てうなずいた。
「それは大丈夫だろ。担当医が名医らしいじゃないか」
「私が蓮さんと一緒にいられることのほうが神様にお願いしないと難しいことなのかな?」
「……さくら。君は僕の一部だ。もう離さない」
私は彼の身体にしがみついた。日が落ちる。
「大丈夫です。私、どんな揺れがきてもこうやってしがみついているから。でも何かあって万が一船から落ちたり、店ごと転覆することがあったら泳いで助けにきてね」
彼は私に覆いかぶさりつぶやいた。
「もちろんだ。さっき言っただろ。君は僕の一部。さくらの救命ロープは僕に繋がってる。すぐに泳いで助けに行く」
そう言うと、キスをして離れられなくなった。彼が私の身体を触り始めた。
「だめだ、君が先に欲しい。今日は最後までもらうよ、いいね」
「あ、蓮……さ……」
船の寝室へ運ばれて上から丁寧にほぐし、愛された。服を取り祓われた。彼が私をじっと見た。
「ああ、綺麗だ、さくら……夢にまで見た……やっとだ」
「ああ!」
彼に私はついていくので精一杯だった。しばらくはお互いしか見えなかった。
ちょうど、バスローブ姿で彼は水を飲んでいたところだった。
バン、パーン!バン、バン、パーン!
外から音がしだした。花火が上がったのだろう、対岸のほうから人の声もする。
「さくらもこれを着て」
私にもバスローブを羽織らせる。そしてふたりで甲板へ出た。すごく綺麗に花火が見える。私達が独り占めしているみたい。
おそらく、今頃ホテルの最上階からロマンチックにここを眺めている人もいる。また、海岸沿いの公園にも人がいっぱいだろう。
「最高だな。これならいい商売になる」
「もう、蓮さんったら、こんなときに……」
彼は私を抱き寄せ、軽く口づける。
「もちろん、初回は姫とふたりきりで満喫させてもらったよ……愛してる、さくら……もう、全部僕がもらった。誰にも渡さないからな」
花火が上がり、彼の顔が見えた。色っぽい彼の顔。初めて見た。男らしいたくましい身体に寄り添った。
「蓮さん、私もあなたが大好き」
「可愛いことを言う。花火よりさくらがまた欲しくなる」
花火の音を聞きながら数回のキス。彼は私のローブの間から手を入れて広げてしまった。お互いに身体の熱が戻り、そのまま抱かれて彼にベッドへ戻された。
「……さくら、かわいい……もっと啼かせてやる。どこにも聞こえない……二人だけだ」
彼の動きが激しくなり、私は彼しか見えなくなった。
結局、ほとんど花火を見ることはできず、その音をバックに私達の音は綺麗にかき消された。
久しぶりに会えた嬉しさで、自分から彼の手をつかみに行った。彼は驚いたんだろう、一瞬目を見開きびくっとしたが、すぐに私の手を強く引いてたくましい腕の中へ迎え入れてくれた。
「そうか、同じ気持ちだったんだな、会いたかったよ、さくら」
私も彼の香りに包まれながら、顔をあげて答えた。
「私も会いたかったです、蓮さん」
人目もあり、彼は私のおでこに軽く唇を乗せて腕の中から解放した。
「さてと、さくら姫」
彼は上から下へと私を見て、にっこりする。まぶしすぎる。
「今日は希望通りスカートで来てくれたようだな。可愛いぞ」
膝より少し短いふわりとしたスカート。夏らしさを意識した水色に花柄だ。
「ええ。蓮王子のご希望とあらばお応えしないといけません。王子は今日も素敵ですね」
彼は恥ずかしそうにしている。なんか、嬉しい。
今日の彼は半そでのブランド綿シャツ。同じブランドの少し短めのパンツ。デッキシューズ。夏らしい装いだ。でも彼は何を着ても似合う。本当にカッコいい。こんな素敵な人とお付き合いなんてまだ信じられない。
花火の前に日が沈むのを一緒に海から見ようというので予定より早めに海へ出た。今日は快晴。きっと素晴らしい夕日が見られるだろうと思った。
甲板は暑いので夕方になるまで下で少し休憩。軽くつまみながら話した。
「さくら。叔父さんはどう?手術するんだろ」
「ええ。来週の予定です」
「何かあれば言ってくれ。力になるよ。お金のことも含めてだぞ」
私の顔を見て言う。もう、嫌になる。
「……それはだめ」
「さくら、治療にお金かかるだろ」
「大丈夫、それは心配しないでください。それより、店のほうの利益を……芹那さんにも言われちゃった。きちんとお支払いしますね」
「芹那って?」
「新しく本部から派遣されて店に入ってくれた人です。フラワーアーティストとして名取の名前も出しながら活躍している人なんです。正直、私より有名人。彼女のお陰でセレブリティのお客様が何人かつきました」
「芹那……名取の推薦だったよな。苗字はなんだ」
「林さんです。林芹那さん。以前こちらに住んでいたこともあるそうです」
彼は少し黙って考えている。なんだろう。
「さくら、叔父さんのことが落ち着いたら色々相談しよう。早めに決めたほうがよさそうだ」
「え?」
「まあ、いい。君はふたつのことをいっぺんにはできないタイプだな。結構目の前のことを一生懸命になってやる。恋愛もそうだろ?僕一筋だ」
「何それ?どういう意味です……」
「ごめん、悪い意味じゃない。とにかく、叔父さんのこともあって叔母さんを支えないといけないだろ。店のことはそのあとだ。そして、それが決まったら両親に会ってもらいたい」
「蓮さん。それは……」
「だから、ひとつずつクリアにしていくから焦らなくていい。目の前のことからやろう。実は僕も色々あって少し忙しくなりそうなんだ」
「蓮さんの忙しいのなんて今にはじまったことじゃないですよね」
「あ、言うなあ。確かにそうだけど、ちょっとね」
「……何かありました?」
彼の表情に含むものがあった。私は嫌な予感がした。
「いや。もうこの話はおしまいだ」
そう言うと、彼は私の手を引いて甲板に出た。日が沈んできていた。海に日の光が映えて綺麗だ。
彼は私を抱き寄せ、私は彼の肩に頭を乗せながらその夕日が落ちていくのを見守った。
「日が落ちる瞬間に願い事をひとつしようか」
「……なにを?」
「俺の願い事はさくらと一緒にいられること。それだけだ」
「それなら私も蓮さんと一緒にいられることをお願いする」
「それならってなんだ?ほかにもあるのか?」
「叔父さんの手術がうまくいきますように……」
彼は私の顔を見てうなずいた。
「それは大丈夫だろ。担当医が名医らしいじゃないか」
「私が蓮さんと一緒にいられることのほうが神様にお願いしないと難しいことなのかな?」
「……さくら。君は僕の一部だ。もう離さない」
私は彼の身体にしがみついた。日が落ちる。
「大丈夫です。私、どんな揺れがきてもこうやってしがみついているから。でも何かあって万が一船から落ちたり、店ごと転覆することがあったら泳いで助けにきてね」
彼は私に覆いかぶさりつぶやいた。
「もちろんだ。さっき言っただろ。君は僕の一部。さくらの救命ロープは僕に繋がってる。すぐに泳いで助けに行く」
そう言うと、キスをして離れられなくなった。彼が私の身体を触り始めた。
「だめだ、君が先に欲しい。今日は最後までもらうよ、いいね」
「あ、蓮……さ……」
船の寝室へ運ばれて上から丁寧にほぐし、愛された。服を取り祓われた。彼が私をじっと見た。
「ああ、綺麗だ、さくら……夢にまで見た……やっとだ」
「ああ!」
彼に私はついていくので精一杯だった。しばらくはお互いしか見えなかった。
ちょうど、バスローブ姿で彼は水を飲んでいたところだった。
バン、パーン!バン、バン、パーン!
外から音がしだした。花火が上がったのだろう、対岸のほうから人の声もする。
「さくらもこれを着て」
私にもバスローブを羽織らせる。そしてふたりで甲板へ出た。すごく綺麗に花火が見える。私達が独り占めしているみたい。
おそらく、今頃ホテルの最上階からロマンチックにここを眺めている人もいる。また、海岸沿いの公園にも人がいっぱいだろう。
「最高だな。これならいい商売になる」
「もう、蓮さんったら、こんなときに……」
彼は私を抱き寄せ、軽く口づける。
「もちろん、初回は姫とふたりきりで満喫させてもらったよ……愛してる、さくら……もう、全部僕がもらった。誰にも渡さないからな」
花火が上がり、彼の顔が見えた。色っぽい彼の顔。初めて見た。男らしいたくましい身体に寄り添った。
「蓮さん、私もあなたが大好き」
「可愛いことを言う。花火よりさくらがまた欲しくなる」
花火の音を聞きながら数回のキス。彼は私のローブの間から手を入れて広げてしまった。お互いに身体の熱が戻り、そのまま抱かれて彼にベッドへ戻された。
「……さくら、かわいい……もっと啼かせてやる。どこにも聞こえない……二人だけだ」
彼の動きが激しくなり、私は彼しか見えなくなった。
結局、ほとんど花火を見ることはできず、その音をバックに私達の音は綺麗にかき消された。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
課長のケーキは甘い包囲網
花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。
えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。
×
沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。
実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。
大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。
面接官だった彼が上司となった。
しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。
彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。
心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡
社長は身代わり婚約者を溺愛する
日下奈緒
恋愛
ある日礼奈は、社長令嬢で友人の芹香から「お見合いを断って欲しい」と頼まれる。
引き受ける礼奈だが、お見合いの相手は、優しくて素敵な人。
そして礼奈は、芹香だと偽りお見合いを受けるのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる