嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐

文字の大きさ
33 / 45
私、帝国領で暴れます!

私、オークションで捌きます!

しおりを挟む
エール感謝10本目!

何とか2話目の更新出来ました!
雰囲気を残すため、今回は前書きです。
════════════════

 オークション会場内は、始まる前から白熱した空気感を形成していました。舞台だけが照らされた暗いホールで、椅子に座っている方々がソワソワしているのが分かります。

 そんな独特の空気感に当てられて、私の気持ちもまた、同じように高まります。

「ほわあ~。すっごいですねえ~」

 通された特別席から下を見下ろすと、さらにそのホールの凄さが際立ちます。
 室内は暗いのに、誘導用の小さなライトが光っています。それが足下だけは少し明るくしているのですが、上から見ると、それが帝国の紋のように見えました。

 意味までは覚えていないですけど、剣と、魔を祓う聖なる炎の図柄はよく覚えています。すごくカッコいいですからね。

「ほほほ。気に入っていただけましたかな。セリー様」
「……ああ! はい。すごいと思います。これは、最初からこうやって設計していたんですか?」
「ええ。そうなのです。帝都からは遠いですが、それでも来たい! と思っていただけるように、と考えてこのような形になったのですよ」

 ほえぇ。辺境の都って、その成り立ちからして軍事特化が基本だと思うんですけど、ここはそんな中にあっても、余裕を持つことは忘れなかったんですね。

 辺境都市は国への入り口でもありますから、そこを見ると、その国の豊かさが分かると聞いた事があります。以前は理解できませんでしたが、コレを見ると、なるほどと頷けますね。
 洗練された知恵と技術の結晶です。

 私が会場内に見惚れていると、ニコニコとした二人が戻ってきました。騎士の人や、青髪の人も一緒です。

「弟子。おかえりなさい。さあ、こっちに来てください」
「はい。……ふっ」
「~~~ッッッ!!!」

 私の方に呼ぶと、弟子が素直に返事をして、こちらに向かってきます。偉い子ですね。

「へあっ!?」
「なっ!?」

 あの訓練法をやると、しばらく魔力の出力が大幅に落ちるんですよね。無理に出そうとすると血が出ますし、何よりすごく痛いです。今の弟子の強さは、言ってしまえば孤児だった頃と大して代わりありません。

 要するに、危ないのです。ここでは何かがあった時、全て吹き飛ばしてハイ解決! と言うのは無理ですしね。私が守ってあげないと。

 なので、弟子は私のお膝の上に座らせました。

「しししし、師匠っ!?!? どどっど、どえ!?」
「??? どえ? ……えっと、弟子を守るのは師匠の約目ですよ? 安心してください。何があろうと、弟子だけは私が守りますから」

 そう語りかけるように伝えると、ちゃんと理解してくれたのか、小さく頷いてくれました。
 それと同時に、パンッと弾ける音がして、タキシード姿の男の人が壇上に上がりました。

「レディースアンドジェントルメン! 本日もオークションの時間が~ッ、やってまいりました!!!」

 その掛け声とともに、会場の熱気が高まったのを感じます。ブワッという感じに。

「本日はなんと、目玉商品が二つも入っております!!! 一つは~ッ、エルフの女!!!」
「そしてもう一つッ!!! もう一つはなんとなんと!!! なんとォォォ~ッ、ドラゴンですッッッ!!!」

 そこで、参加者の熱狂が最高潮になりました。叫びこそしないものの、その興奮具合はよくよく伝わってきます。

 ……なんで?

 ただ私は、どうにも盛り上がっている理由が理解出来ません。
 トカゲなんて森を歩けばウヨウヨ出てきますし、何よりマズイです。生ゴミの方がマシなレベルで。

 にも関わらず、ここにいる人たちはそれを求めている。

 私は、食べるなら絶対、さっきの黄金鳥のほうがいいと思うんですけどね。まあ、人の好みは違いますからね。

「ーーそれでは、ジェントルアンドレディー。オークションを存分にお楽しみください!」

 余計な事を考えていたら、いつの間にかタキシードさんのお話が終わっていました。それと同時に、いくつかの品物が運ばれてきます。

 まずは前座、というわけですね。ふふん、いいでしょう。今の私は大金持ち|(金貨80枚程度)ですからね。存分に楽しんでやるとしましょう。


「はい! またまた47番の方がご落札!!! ありがとうございます!」
「ふっ。ちょろいモンです」
「そ、そんなに使っても大丈夫なんでしょうか……?」

 これでもう13品目ですからね。弟子が不安に思うのも無理は無い事でしょう。しかし、私は思うのです。お金は使ってなんぼのモノ、だとね! 欲しいと思ったら即購入ですよ!

「ふふん。安心してください。師匠は金貨を80枚も持ってますからね。弟子も欲しい物があったら言ってくださいね!」
「え、はい」

 それに、トカゲの死体がこんなにも人気になるなら、乱獲してきても良いのです。多分トカゲって、重すぎて一部分しか運べない、っていうのも値段を吊り上げている要因だと思うんですよね。

 つまり、丸々全部持って帰ってくることが出来る私は、最強です。お小遣い稼ぎ感覚で乱獲ですよ!

「さあッ!!! お次はいよいよ本日の目玉の一つ!!! エルフの女の登場ですッッッ!!!!!」

 ああ、もう終わりですか。ここら辺はもう、私には興味無いですからね。多分、女の人を買うのって、男性ですよね。そういう目的で。
 だから女の私には、全く関係ないです。

 エルフってなかなか森から出ないそうですし、きっとヤバい値段が付くんでしょうね。

 ああ、はいはい。すごい熱気ですね。

 まあ確かに、すごいレベルの美人さんではありますけど、値が吊り上がっいるところを見てもあんまり面白くないですね。
 やっぱり、自分と似た境遇奴隷だからでしょうか。すごく萎えます。

「はあ。……せっかく楽しかったのに」

 このまま会場を出ようかと弟子に声をかけようとしたところで、今にも消え入りそうな呟きが聞こえて来ました。

「かあ……さん……。なん……」


 …………そうですか。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

処理中です...