やっと冒険に出られます2

渋谷かな

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ポーちゃんママと時代劇

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「お母さん。ご飯は?」
「ダメだ。ゲームに熱中し過ぎて私たちの声が聞こえていない。」
 子供たちが帰ってきたがポーちゃんママはゲーム開発に夢中で何も聞こえない。
「ただの屍だ。出前でも取ろうぜ。」
「やったー! お寿司! 特上を取ろうよ! お母さんのクレジットカード払いだし!」
 子供というのは親がダメ親でも勝手にたくましく育つ。
「うおおおおおー!」
 と、試行錯誤にうなされるポーちゃんママの話であった。

「主人公の名前は何にしよう? 場所の名前は? うおおおおおー!」
 これが物語の始まりである。
「今まではそうでした。アハッ!」
 しかし、今回は違う。
「主人公を旧暦か、史実の武将にしてしまえば名前問題は解決! ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!」
 楽することを覚えた。そしてそれを形にするだけ。
「正にどんな時も使いまわせば楽する集大成だ!」
 結局、設定なるものには限界があり、どんな作品もほぼ同じである。新しいアイデア無しの不滅の刃、作者の初期の作の歴史モノも大して違いはない。ただ世に作品を出せる所にいたかどうかだけ。コネがあったかなかったか、ただそれだけだ。多くのデビューしていない素人作家の作品でも面白いものはたくさんあるだろう。逆にアニメ化されても売れない面白くないコネのある作品の方が多い。

「さあ、配役を始めよう。」
 ポーちゃんママは組閣を始める。

睦月
如月
弥生
卯月
皐月
水無月
文月
葉月
長月
神無月
霜月
師走

「これだけでキャラクターが12人できる。」
 ありがたや。
「名前的にくノ一だな。」
 水無月なんかは月を取れば、水無。神無月は月を除けば、神無。
「師走だけは、ジジイ臭いな。」

ピキーン!

 その時、ポーちゃんママは何かに閃いた。
「師走を師匠にしよう。剣術と忍術の師匠だ。これで師匠の名前も考えなくて済むぞ! アハッ!」
 そうだ。この12人で主要キャストを抑えてしまえばいいのだ!

睦月  冬 仲睦まじく・・・・・・主役! 決定!
如月  冬
弥生  春
卯月  春
皐月  春
水無月 夏 水遁
文月  夏
葉月  夏
長月  秋
神無月 秋 神
霜月  秋 霜、冷気? 下ネタ?
師走  冬 剣術と忍術の師匠 走り回る?

「誰を主役にしようかな?」
 違うな。適当にイメージを当てはめてみよう。
「主役、敵役、妖怪。」
 ネットで調べると妖怪は弱いな。

ピキーン!

 その時、ポーちゃんママは何かを感じる。
「侍忍者に妖怪の召喚もさせればいいんじゃないか?」
 じゃあ、いったい何と戦うんだ?
「破滅の刃を見ても分かるように、世界トレンドは勧善懲悪だ。」
 なら何と戦う?
「人間?」
 悪い人間を懲らしめる物語?
「結局はどんな作品も戦いの繰り返し。」
 違うのは第1話の設定だけ。 

ピキーン!

 その時、ポーちゃんママは何かに気づいた。
「人間が正義ではなく、妖怪が正義でもいいのではないだろうか?」
 そうだな。悪いことをしている人間はいっぱいいるだろうし。
「人間薬使い。人間カラクリロボ。」
 悪い人間を考えるのは面白いかもしれない。

「この世に邪悪な人間が現れた時、正義の妖怪が現れて世界を救う。」
 古い言い伝え、伝説。

「なんて悪い人間だ!? 妖怪よりも悪い奴だ!?」
 妖怪の本音。

酒呑童子の睦月
玉藻前の如月
大嶽丸の弥生
八岐大蛇の卯月
鵺の皐月
崇徳天皇の水無月
雷神文月
風神葉月
火車長月
アマビエ神無月
霜月
師走

「ムムム? 12匹の妖怪を決める方が先か?」
 日本の妖怪って少ないんだな。

ピキーン!

 ポーちゃんママは何かに気づいた。
「時代劇だからだと妖怪に拘る必要がないのか。」
 これも新しい発想。でも剣と魔法はダメ。
「悪い人間と戦う物語。」
 誰が?
「侍? 忍者? 妖怪?」
 敵は最強の剣士? それでも旧暦12人のうちの一人にしとこう。その方が楽。

「悪い人間を倒すために、今日もへっぽこ忍者は戦う。」
 ライト文芸だな。
「酒呑童子は鬼? 剣? 召喚獣?」
 それとも悪い人間が酒呑童子を召喚する方がいいのかな?
「鬼が悪さしている。実は悪い人間が呼び出して命令をきかせていた。」
 悪い人間が妖怪を呼び出す? 雇う?

ピキーン!

 その時、ポーちゃんママは何かに気づいた。
「そうよ! 何も新しいものを生み出すんじゃなくて、ゴットカードの時代劇版を作る感じで気軽に考えればいいんだわ!」
 進まないから方向転換しよう。今時の一般大衆は難しい話は理解できないんだった。未来の猫型ロボット先輩やつぶあんマン先輩みたいに単純な話じゃないと理解してもらえない。共感してもらえない。

睦月
レベル1
全ステータス2
・仲睦まじく

「マジか!?」
 マジです。
「こんなレベルでいいんだな。」
 気軽だな。手抜き。

「戦うのが悪い人間?」
 とりあえず織田信長か、サスケ? ああ~ナルトでも忍者か。それなら服部くんも忍者だな。それにるろうに剣心の要素も足せば・・・・・・結局、戦いばっかりで他の作品と同じことの繰り返しだな。
「忍術! 火遁!」
「秘技! 燕返し!」
 忍術と刀術。

酒呑童子
レベル1
全ステータス2
・最強の鬼

「キャラ数。忍術。必殺技は完成。問題はストーリーだけ。」
 オリジナルさえ求めなければ睦月たちが鬼と戦うだけで良い。
「疲れた。もうそれでいいや。」
 猫型ロボット先輩! 万歳! つぶあんマン先輩! 万歳! 同じことの繰り返し! 万々歳!

「確か昔の設定が旧暦家だったな。」
 旧暦忍者! 睦月ちゃん! 懐かしいな! へっぽこ忍法!
「敵は妖怪、悪代官、悪大名、悪・・・・・・侍?」
 まあ何とでもなるか、と自分に言い聞かせる。
「次は時代背景でもガンガン考えよう。」
 ああ~疲れた。
 つづく。
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