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アップルと正体
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「なんなんだ!? こいつらは!? さっきまでと態度が違う!? 私は仲良しだと信じたから、助けてあげているのに!? だから、自分の正体を言ったのに!?」
ノアの箱舟の船上では、キングの神の使徒ジャニュアリーが、改めて人間という生き物の態度に疑心暗鬼に陥っていた。
「取り囲め! 兵士諸君!」
「はあ!」
「お母さん、私たちは食べられちゃうの?」
「そんなことないよ。大丈夫。大丈夫。きっとアップル様が助けに来てくれるよ。」
アップルの家臣たちや、パンジャの兵士たちや、アリコ人たちは、逃げた船に人食い神の使徒がいたことに驚き絶望を感じていた。
「どうして? 私は人間を助けただけなのに。どうして? 私をいじめようとするの。」
アップル2は、アップルと出会い人間を理解したつもりだったが、アップルは、純粋種なので、能天気で無邪気である。それに比べ、ノアの箱舟に乗っている人間は、他人を攻撃しようという邪悪な人間が多かった。
「いや、やめて、私の中に入って来るな!?」
アップル2は頭が痛くなり叫んで頭を抱え込んでしまう。
「大丈夫? アップル2。」
「アップル様!?」
その時、アップル2の中に存在している、アップルの意志が話しかけてくる。
「どうしてですか!? どうして人間は私をいじめようとするんですか!? 怖い!? 怖過ぎます!? 私は、皆さんと仲良くなれたと思ったのに!?」
アップル2は、初めて触れる人間の手のひら返しに裏切られた悲しみの気持ちに覆われている。
「それが人間なのです。人間は弱い生き物なのです。」
「ええー!? これだけ私を攻撃しようとするのに、それでも弱い生き物なのですか!?」
「弱いから、自分よりも強い者を恐れ、無くしてしまおうとするのです。そんな邪悪な人間は神様の言う通り、後で食べてしまいましょう。」
「いいんですか? するとアップル様の家臣の方々は、ほぼ全滅ですが?」
「マジか!? 通りで私の周りには、良い人間がいないと感じる訳だ。」
「クスクス。」
アップルと会話をしていて、アップル2に笑顔が戻る。
「少しは落ち着いたか?」
「はい。アップル様は、アップル様ですね。さすがは神様の代行者です。私は、アップル様を信じます。」
「ありがとう。アップル2。」
アップル2の動揺は、女王アップルが抑えることに成功した。
「静まれ! 静まれ! 私は女王アップルです!」
ノアの箱舟に女王アップルの大声が響き渡る。
「アップル様だ!? アップル様の声だ!?」
「いったいどこから!?」
「アップルお姉ちゃんだ。」
「ほら、女王様が来てくれたわ。」
女王アップルの登場に、動揺するパンジャの家臣に兵士たちに、安堵するアリコ難民たち。
「私は影武者のアップル2を通して、皆さんに話しかけています。本当の私は、海上で、あなたたちを追いかけています。残念ながら、クイーンに突破されました。」
「ギャア!? やっぱり俺たちは死ぬんだ!?」
「クイーンが来るぞ!? クイーンが来るぞ!?」
再びパニックになるノアの箱舟の人々。
「安心して下さい。私の影武者、アップル2が守ってくれます。」
「ですが、アップル様! その者は、クイーンと同じ神の使徒ですよ!? 我々を食べるつもりです!?」
「ムギュ。」
取り乱す兵士の言葉に、心を痛めるアップル2。
「それがどうしました? 私も神の使徒です。」
「ええー!?」
アップルは、時刻の家臣や兵士たち、アリコの難民に自身の正体を告白する。
「アップル様も神の使徒!?」
「アップル様は、人間を食べるというのか!?」
「通りでおかしいと思ったんだ!? 人間が空を飛ぶなんて!?」
「お母さん、アップル様は人殺しなの!? 私の国を滅ぼした神の使徒なの!?」
「え? え? ええー!? もうなんて言ったらいいか分からない!?」
船上の人々は、アップルが神の使徒だと知り不安が渦巻く。
「ノアの箱舟に乗船している人々に問う! 私はパンジャ国の王女アップルです。」
アップルが女王として、演説を始める。
「選びなさい。私を信じないで、追ってくる神の使徒に殺されるか、私を信じて、無事に生きるか。どちらでも好きな方を選びなさい。」
「む、むむっ!?」
アップルの示した選択に、素直な答えが見つからず、答えが見つからない人々。
「自分の命、大切な娘の命がかかっているのに、私の正体なんか、気にしている場合か!? 家族で生きることを選びなさい!」
アップルの魂の叫びが、ノアの箱舟に響き渡る。
「私、アップル様を信じる!」
アリコの小さな女の子が1番初めにアップルを指示した。
「娘が信じるなら私もアップル様を信じる!」
「お母さん!」
「アップル様が何者でも構いません。私は娘と一緒に平和に暮らしたいだけです。」
泣きながら親子の愛を分かち合う親子。
「俺もアップル様を信じるぞ!」
「そうだ! 死んだら何にもならない!」
「アップル様に助けてもらった命だ! アップル様を信じよう!」
「アップル様についていくぞ!」
「アップル女王様! 万歳! 万歳! 万々歳!」
親子愛に感動したパンジャの家臣や兵士たち、アリコの人々はアップルを支持する。人とは、自分が助かるためなら、相手が何者であろうと従う生き物である。
「さすがアップル様。あっという間に人心を掌握された。まさに神様ですね。」
「いいえ。今回は、あの親子に助けられました。ただの人間の親子なのにね。」
「人間には、私の知らない力があるんでしょうね。」
「神が人間に助けられるとはね。」
人間のアップルも、神の使徒同様に、人間の奥深さを感じるのだった。
「なら死ぬがいい! 人間共!」
そこにクイーンが現れた。
つづく。
ノアの箱舟の船上では、キングの神の使徒ジャニュアリーが、改めて人間という生き物の態度に疑心暗鬼に陥っていた。
「取り囲め! 兵士諸君!」
「はあ!」
「お母さん、私たちは食べられちゃうの?」
「そんなことないよ。大丈夫。大丈夫。きっとアップル様が助けに来てくれるよ。」
アップルの家臣たちや、パンジャの兵士たちや、アリコ人たちは、逃げた船に人食い神の使徒がいたことに驚き絶望を感じていた。
「どうして? 私は人間を助けただけなのに。どうして? 私をいじめようとするの。」
アップル2は、アップルと出会い人間を理解したつもりだったが、アップルは、純粋種なので、能天気で無邪気である。それに比べ、ノアの箱舟に乗っている人間は、他人を攻撃しようという邪悪な人間が多かった。
「いや、やめて、私の中に入って来るな!?」
アップル2は頭が痛くなり叫んで頭を抱え込んでしまう。
「大丈夫? アップル2。」
「アップル様!?」
その時、アップル2の中に存在している、アップルの意志が話しかけてくる。
「どうしてですか!? どうして人間は私をいじめようとするんですか!? 怖い!? 怖過ぎます!? 私は、皆さんと仲良くなれたと思ったのに!?」
アップル2は、初めて触れる人間の手のひら返しに裏切られた悲しみの気持ちに覆われている。
「それが人間なのです。人間は弱い生き物なのです。」
「ええー!? これだけ私を攻撃しようとするのに、それでも弱い生き物なのですか!?」
「弱いから、自分よりも強い者を恐れ、無くしてしまおうとするのです。そんな邪悪な人間は神様の言う通り、後で食べてしまいましょう。」
「いいんですか? するとアップル様の家臣の方々は、ほぼ全滅ですが?」
「マジか!? 通りで私の周りには、良い人間がいないと感じる訳だ。」
「クスクス。」
アップルと会話をしていて、アップル2に笑顔が戻る。
「少しは落ち着いたか?」
「はい。アップル様は、アップル様ですね。さすがは神様の代行者です。私は、アップル様を信じます。」
「ありがとう。アップル2。」
アップル2の動揺は、女王アップルが抑えることに成功した。
「静まれ! 静まれ! 私は女王アップルです!」
ノアの箱舟に女王アップルの大声が響き渡る。
「アップル様だ!? アップル様の声だ!?」
「いったいどこから!?」
「アップルお姉ちゃんだ。」
「ほら、女王様が来てくれたわ。」
女王アップルの登場に、動揺するパンジャの家臣に兵士たちに、安堵するアリコ難民たち。
「私は影武者のアップル2を通して、皆さんに話しかけています。本当の私は、海上で、あなたたちを追いかけています。残念ながら、クイーンに突破されました。」
「ギャア!? やっぱり俺たちは死ぬんだ!?」
「クイーンが来るぞ!? クイーンが来るぞ!?」
再びパニックになるノアの箱舟の人々。
「安心して下さい。私の影武者、アップル2が守ってくれます。」
「ですが、アップル様! その者は、クイーンと同じ神の使徒ですよ!? 我々を食べるつもりです!?」
「ムギュ。」
取り乱す兵士の言葉に、心を痛めるアップル2。
「それがどうしました? 私も神の使徒です。」
「ええー!?」
アップルは、時刻の家臣や兵士たち、アリコの難民に自身の正体を告白する。
「アップル様も神の使徒!?」
「アップル様は、人間を食べるというのか!?」
「通りでおかしいと思ったんだ!? 人間が空を飛ぶなんて!?」
「お母さん、アップル様は人殺しなの!? 私の国を滅ぼした神の使徒なの!?」
「え? え? ええー!? もうなんて言ったらいいか分からない!?」
船上の人々は、アップルが神の使徒だと知り不安が渦巻く。
「ノアの箱舟に乗船している人々に問う! 私はパンジャ国の王女アップルです。」
アップルが女王として、演説を始める。
「選びなさい。私を信じないで、追ってくる神の使徒に殺されるか、私を信じて、無事に生きるか。どちらでも好きな方を選びなさい。」
「む、むむっ!?」
アップルの示した選択に、素直な答えが見つからず、答えが見つからない人々。
「自分の命、大切な娘の命がかかっているのに、私の正体なんか、気にしている場合か!? 家族で生きることを選びなさい!」
アップルの魂の叫びが、ノアの箱舟に響き渡る。
「私、アップル様を信じる!」
アリコの小さな女の子が1番初めにアップルを指示した。
「娘が信じるなら私もアップル様を信じる!」
「お母さん!」
「アップル様が何者でも構いません。私は娘と一緒に平和に暮らしたいだけです。」
泣きながら親子の愛を分かち合う親子。
「俺もアップル様を信じるぞ!」
「そうだ! 死んだら何にもならない!」
「アップル様に助けてもらった命だ! アップル様を信じよう!」
「アップル様についていくぞ!」
「アップル女王様! 万歳! 万歳! 万々歳!」
親子愛に感動したパンジャの家臣や兵士たち、アリコの人々はアップルを支持する。人とは、自分が助かるためなら、相手が何者であろうと従う生き物である。
「さすがアップル様。あっという間に人心を掌握された。まさに神様ですね。」
「いいえ。今回は、あの親子に助けられました。ただの人間の親子なのにね。」
「人間には、私の知らない力があるんでしょうね。」
「神が人間に助けられるとはね。」
人間のアップルも、神の使徒同様に、人間の奥深さを感じるのだった。
「なら死ぬがいい! 人間共!」
そこにクイーンが現れた。
つづく。
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