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アップルと10億の邪悪なる人間の魂

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「なんだ? おまえは?」
 クイーンの神の使徒マーチの体内を歩いていると、一人の邪悪なる人間の魂に出会った。
「おまえが食べた神の使徒だよ!」
「ギャア!」
 アップルは、邪悪なる人間の魂の首を絞めて浄化させてしまう。
「ダメだよ!? アップル!? ちゃんと話を聞かないと!? さっきも友好的な邪悪なる人間の魂が握手を求めてきたら、触れた瞬間に浄化させちゃったじゃないか。」
「しまった。純粋種の私って罪な存在ね。」
 清らかな心の持ち主アップルは、邪悪なる人間の魂を浄化することができる。
「アップル様。」
「アップル2?」
「見つけました。邪悪なる人間の魂の本体を。」
「どこにいるの?」
「脳みそです。」
「分かったわ。直ぐに行って懲らしめてやる!」
 アップルは、マーチの脳みそに進んでいった。

「あれが!? マーチ!?」
 アップルは、マーチの脳みそにたどり着いた。
「マーチに何か人間の様なものが、まとわりついている!?」
「まさか!? こいつらが!?」
「10億の邪悪なる人間の魂!?」
 マーチの意志や自由を奪うように、邪悪なる人間の魂が覆いつくしている。
「なんだ? おまえたちは?」
「新しい魂か? おまえも取り込んでやる。」
「お腹空いた。お腹空いた。」
「世界なんか滅びればいいんだ!」
「所詮、人間が可愛いのは自分だけだ!」
「俺の人生は終わったんだ。おまえの人生も終わればいいんだ。」
「私は悪くない。お金! 食べ物! 全てを手に入れてやる! キャッハッハ!」
 10億の邪悪なる人間の魂は崩壊していた。崩壊していたが、それが一つとなりマーチの体を操っている。
「狂ってる!? これが人間なの!?」
「アップル、こいつらは人間じゃないよ。人間なら本当の自分の感情は表に出さないで、じっと心の中に押し込んでしまうだろうから。」
 アップルとジュライは、邪悪なる人間のなれの果ての姿に恐怖する。
「美味しそうな女だな。俺の女にしてやる!」
「抜け駆けは許さないぞ! 食べる時は皆で回そうぜ!」
「ケッケッケ! いただきます!」
 4、5本の邪悪なる人間の魂がアップルを食べようと襲いかかってくる。
「哀れな。」
 アップルは、落ち着きを払い、邪悪なる人間の魂を避けようともしない。
「ギャア!?」
 アップルに触れようとした邪悪なる人間の魂が浄化されるように消滅する。
「な、なんだ!?」
「うわあ!? 俺たちの意志が消された!?」
「一大事だ!? 一大事だ!?」
「人間から邪な気持ちが無くなったら、人間じゃなくなっちまう!?」
 邪悪なる人間の魂たちは、ただでさえ低下した脳みそで混乱する。
「なんなの? 人数が多過ぎて考えがまとまらないのか、それとも腐っているのかしら?」
「おえ、見てたら気持ち悪くなってきちゃったよ。」
 アップルとジュライは、初めて見る邪悪なる人間の魂の集合体が気持ち悪くて、吐き気がした。
「こいつらは!? さっき食べた神の使徒だ!?」
「神の使徒!?」
 邪悪なる人間の魂の一人が、アップルが神の使徒だと気がついた。
「あ、やっと私たちに気づいてくれた。」
「なんだ。神の使徒か。」
「そうか、神の使徒なんだ。」
「またきたか、神の使徒。」
「なんなんだ? こいつらの冷静な態度は!?」
 邪悪なる人間の魂たちは、意外にも落ち着いていた。
「こいつらも食べてしまえ!」
「取り込んでやる!」
「私たちの養分になるがいい!」
「神の使徒だろうが、10臆の人間の意志には勝てないのだ!」
「おまえたちも、こいつみたいにしてくれる!」
「食べられた俺たちの恨みを思い知るがいい!」
 邪悪なる人間の魂たちは、アップルも自分の栄養にするつもりである。
「なんて悍ましい。自分のためなら平気で他人を食い物にする。人間とは、そういう生き物よね。」
「悲しいね。なんだか人間は自分のことばかりで、他人を思いやる人に出会うことが難しいんだけど。」
「やはり人間は滅んだ方がいいのかな? 人間がいるから争いがなくならないんだ。」
「人間がいなくなれば、世界が平和になるのかしら?」
 アップルとジュライは、多くの邪悪なる人間の魂と触れ合う間に、人間を悲しい生き物のように感じてしまう。人間の存在自体が悪の様に感じられてきた。
「違うぞ! それは違うぞ!」
 その時、聞き覚えのある声が響き渡る。
「人間全てが、悪じゃない!」
「どこから声が?」
「ここだ! 私はここにいる!」
「まさか!? マーチ!? あなた生きてるの!?」
 声の主は、邪悪なる人間の魂に体を乗っ取られて、既に死んでしまっていると思っていた、クイーンの神の使徒マーチだった。
「そうだ! 私は生きている! 私は、神様の命令だと何も考えずに、ナイチャの10億人もの人々を食べた。だが、あまりの怨念と欲望の多さに、私の意志は、邪悪なる人間に心の奥底に封じ込められてしまったんだ。」
 壮絶なマーチのナイチャでの出来事が説明される。
「だが、その時、10臆の邪悪なる人間の中に、1臆の純粋な心を持った人間もいたんだ。その純粋な人間の魂たちが、私を助けろ! 神の使徒様を守れ! と私が完全に邪悪なる人間に食べ尽くされることから救ってくれたんだ。」
 マーチの周囲に光が輝きを放つ。
「信じられない!? 純粋な光だわ!?」
「10億の邪悪なる人間の魂の中の、1臆の純粋な人間の光!?」
 アップルとジュライは、人間の闇の中に希望を見つけた。
「だから人間全てが悪い訳じゃない! 本当に食べ尽くさないといけないのは、他人を思いやる心を持たない邪悪な人間たちだ!」
「そうね。神様の創造した人間だもの。全てが悪い訳じゃない。神様が仰ったように、邪悪な人間の数を減らせばいいのよ!」
「手始めに、神の使徒すら食いつくそうとする、ここの邪悪な人間の魂から一掃しよう!」
 アップルとジュライは、純粋な人間の魂に出会い、他人を思いやることの素晴らしさに勇気をもらった。
 つづく。
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