滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢

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03 洞窟と剣と宝石と

到着

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 道中雨に降られてちょっと足止めされたのと、徒歩移動に不慣れなせいで、街に着くまで1週間もかかってしまった。

 たまに馬車とか使って来たからやや散財気味だったけれど、異世界感を体験できたし楽しかったのでよしとする。
 

 そして到着したときには晴れていて、鉱山の全部を見下ろすことができた。

「……うん」

 自分の足で歩いてきたから疲労がすごかったけど、同時に成し遂げたんだという達成感もあった。

 登山家って、こんな感じなのだろうか。今回は上りじゃなくて下りだったけど。


 山に囲まれた盆地に位置するこの街は、ズドンと空いた巨大な円筒形の穴の中に作られている。
 
 おかげで場所の割に高度は低いし、その地形から気温が高く、初夏のこの時期ではやや暑い。

 絶壁に張り付くように設置された通路と、わずかに見える坑道の入口が見える。
 今も忙しく人が出入りしていた。


「キース、着いたよ」
「キー……」

 コウモリのくせにというかだからというか、キースは眠そうに頭を上げた。

「キー!」

 そして飛び上がり、パタパタと飛び回る。
 興奮しているようだ。

「まずはギルドに行くから。ほら、あんま飛び回らないでよ。目立つでしょー?」



 鉱山ギルドは、半分岩壁に埋め込まれたような形をしている。

 なんていうか、機能性重視で見た目二の次、増改築を繰り返したような感じだ。

 
 入るとすぐに受付なのはこのギルドも変わらない。
 
 ここの受付の人はお兄さんだった。


「こんにちは」
「お、こんにちは。お使いかな? 可愛いペットだね」

「えと、わたしは冒険者です。宿を紹介してほしくて」


「冒険者?」
「はい。わたし、コムギ村の方から来たんです」

「一人で?」
「一人で……まあ、今はそうです」


 お兄さんは、わたしの照合をとった。

 こうしてギルドで記録することで、自分が訪れた街とかを記録できるし、何かあったときに捜索してもらえる可能性が高くなる。


 それから、お兄さんはわたしが本当に冒険者だと知って驚きながらもわたしに宿を探してくれた。
 
 それから、街の地図を見せてくれて、それらの場所を教えてくれる。


「冒険者ってんなら、この街は初めてか?」
「えと、はい。そうです」

「やっぱりそうか。坑道には行かないな?」
「坑道?」

「金属や宝石を採掘する場所があるんだ。過酷な場所だけどな」


 金属、と聞いてキースがモゾモゾ動き出した。
 
 うん、ちょうどカナリアもいることだし、せっかくだから後で行ってみようかな。

 でもとにかく、今は宿に行って休みたい。
 

「今は大丈夫です。疲れてるので、宿に行きます」

「ああ、そうだな。もし行くんだったら、また声をかけてくれ」


 わたしはギルドを出て、案内された宿に向かった。

 お兄さんに頼んで探してもらった、安いけど個室の宿だ。
 

 この街は、コムギ村とは全然人数の規模が違うので、大部屋相部屋で一緒くたに雑魚寝なんていうのが当たり前。

 でもさすがに疲れた体には堪えるし、お金には余裕があったので、ギルドから少し離れた個室を頼んだ。


「いらっしゃい」

「あの、ギルドの紹介をもらったんですけど。泊めてもらえますか?」


 ギルドからはやや離れているので、周囲も静かでゆっくりできそうだ。

 立地のせいか、他に客はいない。
 

「ギルドの紹介……そうなんだ」

 応対してくれたのは無愛想な少年だった。

 わたしと同じくらいか、一回り年上に見える。少なくともスードルよりは幼い。
 この宿の主人の息子だろうか。
 

「ああ、空室はあるけど。何泊する予定?」
「あぁ……えぇと、とりあえず1週間くらい」

「分かった。7日分ね。銀貨21枚」

 素泊まり一泊3000円か。この世界だと安くはない。
 

「えっと……もう少し安くならない……かな?」
「オレに言われても困るよ。……持ち合わせ、ないの?」

 訝しむというよりは、やや憐れむような感じで聞かれた。

 もしかして、また家出少女だと思われてる?


「ちょっと……微妙かなってところです」

 わたしは曖昧に言った。今は勘違いを解くよりも、とにかくベッドで寝たい。

「なら、7日じゃなくて2日とか3日にしたら? どうせ部屋は埋まらないよ。別の部屋になるかもしれないけど」

 わたしはとりあえず3日分だけ支払って、部屋に入ることにした。


 部屋には、ベッドと鍵付きのクローゼットがあった。

 広さは正直狭いけど、十分落ち着ける。いい部屋だ。
 

「はー、疲れたぁ!」

 移動の疲労がすごくて、わたしはベッドにダイブする。

 お世辞にもいいスプリングというわけではなかったけど、シーツは清潔だ。十分すぎる。
 

 なんていうか、いかにホーンウルフの移動が楽で速かったのか、というのを思い知った旅だった。

 途中天候に恵まれなかったのを差し引いても、自分の足で歩くのはしんどい。


「あーあ、キースがわたしを乗せて飛んでくれればいいのに」
「キー?」

 こんなに小さい体じゃ無理そうだけど。と言ってわたしは笑う。
 

 キースは部屋の中を飛び、天井の梁に逆さま状態で留まった。

「あはは、コウモリみたい」
「キー、キー」

「まあいいや。わたし、疲れたからちょっと寝るね……」
「キー?」

 うつ伏せになって目を閉じると、頭の横に重みを感じた。
 キースも一緒に寝るようだ。


 こういうところはネコみたいだなぁとか考える間もなく、わたしは眠りについた。
 
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