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03 洞窟と剣と宝石と
スポナーと洞窟エコーロケーション
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朝、わたしは早く宿を出た。
テウォンは、昨日の夜から忙しかったみたいであまり話せなかったのがちょっと残念だ。
今日はギルドで何か依頼を受けて、彼が喜びそうな土産話の1つでも持って帰ってあげたいと思う。
「お、スズネちゃんか。昨日ぶりだな、採掘は楽しかったか?」
「はい、とっても! 今日は何か依頼を受けようと思うんですけど……」
わたしは、依頼の貼ってある掲示板を見る。
「助かるよ。この時期坑道の中はジメジメするし暑いから、慣れない冒険者には嫌煙されがちでね……その上、今は高原が大変だろ? みんなそっちに行っちまうんだ。ちょっとしたスポナーの破壊でも、時間がかかって仕方ない」
「スポナーってなんですか?」
「そうか、嬢ちゃんはソロだから、ダンジョンの経験もないよな。ちょっと待ってろよ」
ギルドのお兄さんはわざわざカウンターから出てきて案内してくれた。
「これやこれなんかだな。ほら、スポナーの破壊……これは調査。な?」
「あ、なるほど」
「洞窟ってのは閉鎖された空間だろ? だから魔力が溜まりやすくて、小規模のモンスターハウスみたいなのができちまうんだ。サイズはこんなもんでさ」
お兄さんはジェスチャーで箱を作った。
「小さいから、発生した魔物がすぐに外に出るんだ。まあ、サイズがサイズだから強い魔物は出ないんだけど、危ないだろ? ツルハシで何回か叩いたらすぐに壊れるから、それを壊して、その欠片を持って帰ってきてくれ。その欠片を解析すると、どこのスポナーが壊れたか分かるからな」
「鉱夫さんたちはやらないんですか?」
「どうしてもってんならやるけどな。スポナーの情報をギルドで得て、そこは避けるんだ。そっちの方が無難だしな」
つまり、危険だろうがそうでないかにかかわらず、魔物がいるところは避けていく、と。
まあ確かに、危険かそうでないか逐一判断するより確実に安全だし、効率的なのかもしれない。
「分かりました。わたしにもできそうなのってありますか?」
「嬢ちゃんだったら……スライムのスポナーが最近見つかったから、それを潰すのがいいんじゃないか? それと近くに新しいスポナーもあって、その調査の依頼もある。腕に覚えはあるんだな?」
「はい!」
「キー!」
「よし、じゃあ頼むぜ。くれぐれも無理すんなよ」
お兄さんはカウンターに戻り、手続きをしてくれた。
「依頼不履行でもペナルティなしだからな。受けた依頼が他の奴に横取りされる可能性はあるけど、ま、近頃は冒険者は少ないし大丈夫だろ」
わたしは依頼が書いてある紙と、地図、レンタルツルハシ、セットの鉱石を入れる袋と土を入れる箱を受け取った。
あとランタンも貸してもらった。
魔石をセットするか、自分で魔力を込めると光る魔道具の一種だ。
わたしは地図に従い、坑道に入った。
一人で歩くのは結構勇気が必要だったけど、地図があるので多少は安心できた。
「キー」
キースはやはり洞窟が好きらしく、楽しそうに狭い洞窟内を飛び回っている。
白いもふもふとはいえやっぱりコウモリなんだなぁとか考えながら、地図に従いひたすら歩く。
「キー! キー!」
「え、何?」
キースが壁に体当たりしている。
わたしはキースを退かして、その壁を掘ってみた。
「ん?」
チャプ、チャプと音がする。
わたしには聞き覚えがあった。スライムの跳ねる音だ。
「わたしが壊すから、キースはスライムの気を引いてくれる?」
「キー、キキー!」
おう、任せとけ! って感じかな。
ふざけんな、デコイなんて嫌だ! って感じだったかもしれないけど。
まあご主人様はわたしの方だから諦めてもらう他ない。
有無を言わさずわたしは壁を崩した。
ランタンの光が狭い洞窟内を照らす。
そこはスライムの海だった。
壁にも地面にも、スライム、スライム、スライム。
3mくらい先のスライムがぼんやりと光っている。
透き通った身体の向こうに、50cm四方の立方体が見える。
「キー!」
発射された雷撃は、スライムの水溜りに直撃した。
そして何匹かは昇天したらしく、音を立てて消えていく。
残りのスライムは危険を察知したのか、出口に向かって一斉に動き出した……つまり、わたしの方へ。
「うわっ!?」
「キー! キー!」
キースは一生懸命に電撃を撃ちまくっている。
わたしはそのスライムを掻い潜って、スポナーに近づいた。そしてそれに向かって、ツルハシを振り下ろす。
メキッ、という音がした。
振り下ろすたびに音がする。
メキッ、メキッ。
「コート・エレメント・クレイ!」
振り下ろしたツルハシが、スポナーを完全に砕いた。
すると、あれだけいたスライムが嘘のように消えていく。
普通に倒したのとは違う、完全消失。
後には何も残らなかった。
「え、何これ……」
狐に化かされたような、なんていうことがあったけど、まさにそれだ。
キースも困惑して、天井にぶら下がっている。
高原のモンスターハウスにいた魔物は魔石とかが残ってたのに、このスポナーから出てくる魔物は素材も残さずに消失してしまうらしい。
素材が消失するなら利用もできないだろうし、邪魔なんだろうなぁ。
「あ、欠片持って帰らないと」
粉々に割れたと思ったスポナーの中に、1つだけ小さな魔石が残っていた。
スポナーの欠片は、全部小さな立方体だった。
そういえば、モンスターハウスといいスポナーといい、わたしの家といい、よく分からないものは大体立方体なんだけど、これってなんか意味があったり?
「いや、まあ……たまたまか」
立方体なんてよくある形だし。
と、わたしは念のためスライムの生き残りがいないかどうか確認してから、地図のスポナーの位置にバツを書いた。
「次も見つけられそう?」
「キー!」
キースはパタパタ飛んでいく。
わたしは地図を見ながら、キースを追いかける。
テウォンは、昨日の夜から忙しかったみたいであまり話せなかったのがちょっと残念だ。
今日はギルドで何か依頼を受けて、彼が喜びそうな土産話の1つでも持って帰ってあげたいと思う。
「お、スズネちゃんか。昨日ぶりだな、採掘は楽しかったか?」
「はい、とっても! 今日は何か依頼を受けようと思うんですけど……」
わたしは、依頼の貼ってある掲示板を見る。
「助かるよ。この時期坑道の中はジメジメするし暑いから、慣れない冒険者には嫌煙されがちでね……その上、今は高原が大変だろ? みんなそっちに行っちまうんだ。ちょっとしたスポナーの破壊でも、時間がかかって仕方ない」
「スポナーってなんですか?」
「そうか、嬢ちゃんはソロだから、ダンジョンの経験もないよな。ちょっと待ってろよ」
ギルドのお兄さんはわざわざカウンターから出てきて案内してくれた。
「これやこれなんかだな。ほら、スポナーの破壊……これは調査。な?」
「あ、なるほど」
「洞窟ってのは閉鎖された空間だろ? だから魔力が溜まりやすくて、小規模のモンスターハウスみたいなのができちまうんだ。サイズはこんなもんでさ」
お兄さんはジェスチャーで箱を作った。
「小さいから、発生した魔物がすぐに外に出るんだ。まあ、サイズがサイズだから強い魔物は出ないんだけど、危ないだろ? ツルハシで何回か叩いたらすぐに壊れるから、それを壊して、その欠片を持って帰ってきてくれ。その欠片を解析すると、どこのスポナーが壊れたか分かるからな」
「鉱夫さんたちはやらないんですか?」
「どうしてもってんならやるけどな。スポナーの情報をギルドで得て、そこは避けるんだ。そっちの方が無難だしな」
つまり、危険だろうがそうでないかにかかわらず、魔物がいるところは避けていく、と。
まあ確かに、危険かそうでないか逐一判断するより確実に安全だし、効率的なのかもしれない。
「分かりました。わたしにもできそうなのってありますか?」
「嬢ちゃんだったら……スライムのスポナーが最近見つかったから、それを潰すのがいいんじゃないか? それと近くに新しいスポナーもあって、その調査の依頼もある。腕に覚えはあるんだな?」
「はい!」
「キー!」
「よし、じゃあ頼むぜ。くれぐれも無理すんなよ」
お兄さんはカウンターに戻り、手続きをしてくれた。
「依頼不履行でもペナルティなしだからな。受けた依頼が他の奴に横取りされる可能性はあるけど、ま、近頃は冒険者は少ないし大丈夫だろ」
わたしは依頼が書いてある紙と、地図、レンタルツルハシ、セットの鉱石を入れる袋と土を入れる箱を受け取った。
あとランタンも貸してもらった。
魔石をセットするか、自分で魔力を込めると光る魔道具の一種だ。
わたしは地図に従い、坑道に入った。
一人で歩くのは結構勇気が必要だったけど、地図があるので多少は安心できた。
「キー」
キースはやはり洞窟が好きらしく、楽しそうに狭い洞窟内を飛び回っている。
白いもふもふとはいえやっぱりコウモリなんだなぁとか考えながら、地図に従いひたすら歩く。
「キー! キー!」
「え、何?」
キースが壁に体当たりしている。
わたしはキースを退かして、その壁を掘ってみた。
「ん?」
チャプ、チャプと音がする。
わたしには聞き覚えがあった。スライムの跳ねる音だ。
「わたしが壊すから、キースはスライムの気を引いてくれる?」
「キー、キキー!」
おう、任せとけ! って感じかな。
ふざけんな、デコイなんて嫌だ! って感じだったかもしれないけど。
まあご主人様はわたしの方だから諦めてもらう他ない。
有無を言わさずわたしは壁を崩した。
ランタンの光が狭い洞窟内を照らす。
そこはスライムの海だった。
壁にも地面にも、スライム、スライム、スライム。
3mくらい先のスライムがぼんやりと光っている。
透き通った身体の向こうに、50cm四方の立方体が見える。
「キー!」
発射された雷撃は、スライムの水溜りに直撃した。
そして何匹かは昇天したらしく、音を立てて消えていく。
残りのスライムは危険を察知したのか、出口に向かって一斉に動き出した……つまり、わたしの方へ。
「うわっ!?」
「キー! キー!」
キースは一生懸命に電撃を撃ちまくっている。
わたしはそのスライムを掻い潜って、スポナーに近づいた。そしてそれに向かって、ツルハシを振り下ろす。
メキッ、という音がした。
振り下ろすたびに音がする。
メキッ、メキッ。
「コート・エレメント・クレイ!」
振り下ろしたツルハシが、スポナーを完全に砕いた。
すると、あれだけいたスライムが嘘のように消えていく。
普通に倒したのとは違う、完全消失。
後には何も残らなかった。
「え、何これ……」
狐に化かされたような、なんていうことがあったけど、まさにそれだ。
キースも困惑して、天井にぶら下がっている。
高原のモンスターハウスにいた魔物は魔石とかが残ってたのに、このスポナーから出てくる魔物は素材も残さずに消失してしまうらしい。
素材が消失するなら利用もできないだろうし、邪魔なんだろうなぁ。
「あ、欠片持って帰らないと」
粉々に割れたと思ったスポナーの中に、1つだけ小さな魔石が残っていた。
スポナーの欠片は、全部小さな立方体だった。
そういえば、モンスターハウスといいスポナーといい、わたしの家といい、よく分からないものは大体立方体なんだけど、これってなんか意味があったり?
「いや、まあ……たまたまか」
立方体なんてよくある形だし。
と、わたしは念のためスライムの生き残りがいないかどうか確認してから、地図のスポナーの位置にバツを書いた。
「次も見つけられそう?」
「キー!」
キースはパタパタ飛んでいく。
わたしは地図を見ながら、キースを追いかける。
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