滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢

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09 交流の成果

小動物

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 世界樹の都市にも、同じ青空が広がってるとわたしは思った。

 けれどそれは違う。本物の空は、目が回るほど高く、広く、明るい。


「スズ!」

 甲高い声が聞こえた。なんだかすごく懐かしい。

「会いたかった!」


 眩しさに目を細めるわたしの視界に、白いもふもふが飛び込んできた。

 それはもちろんキースだ。

「キース!」
「スズ!」

 キースはちょっと遠くにいたけれど、タタタっと駆け寄る。
 会いたかったからか、キラキラした笑顔がすごく可愛く見える。コウモリの姿ではなかったみたいだ。

 可愛いなぁってほっこりしながら、わたしは両手を広げた。

「スズー! ……ふばがっ!」

 キースは見えない壁に激しくぶつかり、跳ね返され、無様な悲鳴を上げながら地面に倒れた。


 そういえば、出発前に部屋の壁と床を消してたんだった。うっかりうっかり。


 うつ伏せに倒れたキースは、頭を振りながらゆっくり立ち上がる。
 
「会いたかったよキース、元気だった?」
「元気、だった!」

 顔は泥だらけだったけど、キースは笑顔だった。
 人間の状態で良かった。コウモリだったら噛みつかれてたかもしれない。


「スズは? 怪我、ない? 危ないこと、ない?」
「うん、全然大丈夫。何にもなかったよ」

 ちょっと魔石を取り出すために殺されかけただけだし、うん、四捨五入すれば何もなかった。

 わたしはキースの頭を撫でて、ぎゅっと抱きしめる。
 キースは気持ち良さそうに目を細めた。


「ねえキース、アリスメードさんたちはどこ? キース一人しかいないの?」

「ししょーたちは、すぐ、来る!」
「キース、アリスメードさんのことを師匠って呼んでるの?」
「飛ぶの、うまい。すごく」
「ヒト目に飛行の教えを乞うなんて、翼手目の恥晒しじゃん」


 キースはコウモリのときの癖か、「キー」と一言そう言って、少しキョロキョロし、そのあと部屋を見た。

「スズネ、あっち、何か、ある?」
「あるって?」
「気配、する、たくさん」

 鼻を鳴らし、警戒するキース。
 キラキラした目が細められる。ぼふぼふの外套が風に揺れている。


「あ、あのね、あの人たちは大丈夫だよ。仲間」
「なかま?」
「うん、仲間」

「スズネ!」

 キースに説明しようとしたとき、懐かしい声が聞こえた。


 木立の向こうから、彼はホーンウルフに乗って現れる。
 
 案の定、アリスメードさんだった。


「ああ良かった、本当に心配してたんだ……怪我はないか? 怖い目に遭わなかったか?」
「大丈夫ですよ!」

 怖い目には遭ったけど、正直に言うと余計な誤解を招きそうだ。
 わたしはグッドサインを出しながらアリスメードさんにそう言った。
 

「やっぱり、木の下には世界樹の都市があったんです。わたし、そこで住んでる人たちに出会いました」
「人が住んでたのか!?」
「伝説は本当だったのね……」

 アリスメードさんの後ろから、シアトルさんが出てきた。

「どんな場所だったの?」
「なんていうか、めっちゃ都会って感じで」

「めっちゃとかいってかんじ?」

「あー……えっと、その、それより! わたし、そこに住んでる人たちと一緒に戻ってきたんです!」


 わたしはアリスメードさんに抱き上げられ、肩車される。

「その人たちがちょっと困ってて! 助けてほしいんです!」

 そしてそのアリスメードさんの頭をバシバシ叩きながら、大声で主張した。


「助けるって、何を?」
「詳しくは、その人たちに聞いてほしいんですけど。今、来てるんです」

「来てるって……一緒に登って来たの!?」

 後ろから、話を聞いていたらしいレイスさんがぴょんぴょん跳ねる。
 言動はエフさんと似てるけど、エフさんよりもずっとワイルドだ。


「でもスズネ、どっちにしろこの部屋は通れないわ。解呪専門の魔術師を呼んだけど、まだ来ないのよ」

 シアトルさんはそう言って、首を傾げた。

「部屋越しに解決できるかしら?」
「あ、そのことなんですけど……」


 そのときだった。

 ギュイイイイイイン、という轟音が響き渡る。
 

「ウォンッ、ウォオオンッ!」

 ホーンウルフたちはにわかに騒ぎ、呼応したらしい魔獣が姿を見せないままに遠くの方で雄叫びを上げる。


「なんだ、魔獣か!?」

 音は明らかに部屋から聞こえた。

 アリスメードさんはわたしを頭の上から下ろし、キースを守るように間に立って、弓矢を構える。


 でもわたしには分かった。これは機械音だ。つまり……チェーンソーか何かの。

「待ってください、アリスメードさん! 撃たないで! 仲間です!」

 わたしはアリスメードさんを押し退けて、木の近くへと駆け寄った。


「警戒を怠るな、生命反応が多い」
「先制攻撃しますか!?」
「作戦を忘れるな。あと静かにしろ」

 木の裏側に回ると、そこに穴が空いていた。

 そこからディーさんが鏡を使って様子を伺っている。
 警戒心、すごいなぁ……


「あの、ディーさん?」

「……スズネちゃんか。こっちに来てくれ」


 ディーさんは顔を出さないままに喋った。

 射線を切ってるんだと思うけど、魔法とかあるしあんまり意味はないような気がする。


 ディーさんはわたしに来てほしいみたいだったけど、せっかく日の光の下に出て来たのに、また緊張感たっぷりの暗い場所に行きたくないわたしは、聞こえないフリをすることにした。
 

「どうして小動物みたいに隠れてるんですか? 怖い人はいないから、大丈夫ですよ!」
「こちらに来るんだ、スズネちゃん」

「出てきてくださいってば、悪い人なんかいないですよ!」

「中に来てくれ! 頼むから!」

「……き、聞こえないなー! なんだろなー!」


 三文芝居を繰り広げていると、背後から肩を叩かれた。

「何してるの」

 振り返ると、フェンネルさんがいた。フェンネルさんは剣を持ち、眉間にシワを寄せている。


「あ、フェンネルさん。あの、あの穴の中に人がいるんです。わたしの仲間なんですけど、出て来なくて」

「白玉の木に、傷……!?」
「そうなんですけど、今はそうじゃなくて」

 フェンネルさんが衝撃を受け、ちょっと悔しそうにしている。
 でも今はそれより伝えたいことがあるのだ。

「フェンネルさんは良い人ですよ! 出てきてくださいー!」
「怖がってるの?」
「そうじゃな……い、ことも、ないのかな? えっと……少し、警戒してるんです」
「ふぅん」

 フェンネルさんは鼻を鳴らし、剣を収めた。

「あたしのせい?」
「えっ?」
「あたし、ホーンウルフにも恐れられてたから」

 それはちょっと違うような気もするけど、フェンネルさんは「少し離れてるよ」と歩いて行った。

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