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しおりを挟む「……つまり僕は、クルミを食べてはいけない体で、そしてこの弱った体を治して体を鍛えないと死んでしまうってことかな?」
「正確に言うと体を鍛えてヒロインのマイカちゃんに王子ルートを選んでもらわないといけなくて……」
「あぁ、そうか。その“マイカちゃん”って子に僕をその場で選んでもらえさえすればいいんだね?」
「そ、そうなりますね……?」
今の言い方に多少の引っ掛かりはあったが間違ってはいないと思い頷いた。
選んでもらうこと自体は難しくない。とにかく筋肉をつければいいのだ。まぁ筋肉をつけること自体が大変なのだが。
だが今の状態では絶対にマイカちゃんに選ばれることはないだろう。そうなったら私達は終わりだ。
「殿下には私の運命も託してしまうことになりますし、筋肉をつけるなんて大変だと思いますが、もちろん私ができることならなんだってサポートしますよ!」
「ありがとう。エリシアの運命がかかっているのならがんばるよ」
「私だけじゃなくて殿下の運命もかかっているんですってば!」
「ッハハ、そうだね。ごめんごめん。……でも、王子ルートか……」
殿下はボソッと何かを呟いた後、口元に手を当て深刻そうな表情で考え始めた。
やっぱりこんな話、信じてもらえないだろうか。
少し沈んだ思いになっていると、その様子に気付いた優しい殿下が私の手をフワリと包んでくれた。
「ごめんね、エリシアの話を疑っているわけじゃないよ」
「私のこんな話、信じてくれるんですか……?」
「もちろん。ねぇ、エリシア。早速なんだけどエリシアを頼ってもいいかな?」
「はい!なんなりと!」
「ありがとう。あのね、クルミが原因で倒れたことはわかったけど、やっぱり食事をするのは怖いと思ってしまうんだ」
それはそうだろう。
原因がわかったといっても苦しんだトラウマがすぐに消えるわけではないのだから。
「でも、エリシアと一緒に食事ができたら怖くなくなると思うんだ。だから僕と食事を一緒にしてくれないかな?できたら毎食」
「え……でも……」
「やっぱり嫌……かな?そうだよね。君の前で倒れてしまったし、そんな僕と食事なんてあの時のことを思い出して怖いよね」
「ち、違います!その、私と毎食を共にしたら、私達の仲が良いって思われてマイカちゃんに選ばれたとき、マイカちゃんを傷つけないかなって思って……」
「――――エリシア」
何故だかその声には威圧があった。
ピクッと肩が跳ねた私を見て、赤い瞳が弧を描く。
包まれていた手はいつのまにか指を絡めるように繋がれていた。か弱くて、下手すれば自分よりも細い殿下の手は思いのほか大きく骨ばっていることに気がついた。
「で、殿下……?」
「エリシアは、僕の体を僕より知ってくれているみたいだけど、僕の心まではわからないみたいだね。……安心したよ」
「え?」
「ゆっくり、じっくり、……育てていこうね」
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