10 / 25
出会い編
王子の寝室
しおりを挟む
「こ…こんばんはー?」
夜闇に目が慣れているので、明かりが無くとも室内がよく見える。
敷き詰められた絨毯も、調度品も、一級品であるのがすぐに分かる。
この城の中でも、ランクが高い方の部屋のようだが…?
「…誰かいますかー…?」
こんな夜中に、アポもなく突然外から訪問してしまったら、さぞかし住人を驚かせてしまうに違いない。
ハルはおっかなびっくり声を掛けてみるが…
「誰かいますかーって、ここ俺の部屋だけど」
「わっ!?」
急に後ろから声を掛けられて、飛びずさって驚くハル。
人型に戻ったユキが、そこにいた。
いつの間に着替えたのか、今度は裸では無く、きちんと寝巻きを着ている。
「ハルって、いちいち驚くよね」
「だ、だ、だってお前足音聞こえねえし…!急に後ろに立たれたら、そりゃ誰だって驚くだろ!」
冷めたような視線を向けられ、ムッとするハル。
「足音?聞こえるでしょ、ほら」
ユキは壁際までスタスタと歩き、それからスタスタと戻ってくる。
「聞こえた?足音」
「聞こえるわけねえだろ!」
「ハルが耳が悪いの?それともニンゲンってみんなそうなの?」
「…ヒトの中ではおれはふつーだけど、哺乳類の中ではヒトは耳が悪い部類に入る」
「不便じゃない?」
「不便とは思ってない」
「ふうん…」
ユキは興味があるのか無いのか、気のない返事をして、ベッドへ腰掛けた。
その仕草に、ハルはドキリとする。
(まさかこいつ、自分の部屋に誘って、おれと寝るつもりか…?)
(いや、まさか…!おれの考えすぎだよな)
(出会ったばかりのオメガを、その日のうちにベットに誘うアルファが居てたまるかよ)
「っていうか、おれの部屋に案内して欲しいんだけど」
そう言った瞬間、ユキのモフモフ耳が寂しそうにぱたんと倒れた。
「なんで?一緒に寝ないの?」
「なんでって…友達でも何でもねえだろ」
「友達…ならいいの?」
「あ?」
ハルの服の裾を、ユキがぎゅっと握る。
寂しがり屋の幼子のような仕草に、またハルの心がずくんと疼いた。
「おれ、友達いないんだ」
「あ…マジ?」
「ずっとこの城にいたし…下の街に遊びに行っても、顔も匂いもバレてるから、みんな、王子様、王子様って」
「…そっか」
それは、何となく察せる。使用人や教師、庇護すべき国民はいても、心の友となる誰かがいなかったのだろう。
生まれながらに玉座を約束されている者の宿命なのだろうが…
淋しげに語るユキに、ハルは同情を感じてしまう。
「友達くらいなら、なってやってもいいけど」
「ほんと?」
ぱっと顔を輝かせるユキ。途端にモフモフの尻尾をぶんぶん振り回し、ハルを強引にベッドへ引っ張り込んだ。
「嬉しい!」
「わっ!この…!馬鹿力!!」
成人男性以上の力で抱き締められ、布団でもみくちゃにされ…
逃げようにも、逃げられない。
(ヤバ…!)
気付いた時には、両手首を押さえつけられ、ベッドに組み敷かれていた。
月明かりが窓から差し込む、薄暗い部屋。
ユキの寝巻きの胸元がはだけていて、ゾクリとするほど雄の色気を漂わせている。
獲物を捕捉したワーウルフの金色の眼が、キラリと光った。
「でも俺、欲張りだからさ…友達も、花嫁も欲しいんだよね」
ユキは自分の唇をぺろりと舐め、ハルの乱れた前髪を優しい手付きで直してやった。
肌をなぞるその指先がふいに耳に触れ、ハルは「っ…!」と息を飲む。
頬を上気させ、潤んだ目で見上げる仕草がどれだけ雄の劣情を誘うかーーハルは自覚していない。
蜂蜜のようにトロリとした色気のある声音。
それが甘い匂いを伴って、ハルの心の自由を奪っていく。
ユキの美しい顔には、ただでさえ惹きつけられるのに…男の色気まで出されてしまっては、抵抗のしようもない。
ほだされている内に、服の内側にひんやりした何か侵入してきて、ハルは飛び上がるほど驚いた。
「わ…っ!?」
「ハル、キスされるの嫌みたいだからさ、こっちから攻めようかなと思って」
「え…!?あ、ちょっと…!!」
服の裾から侵入してきたのは、ユキの手だった。
他人との肌との触れ合いに疎いハルは、急速で濃密な展開についていけず…目を白黒させてしまう。
「っん…!!」
「ここ、弱い?」
ひんやりした大きな手が、ハルの脇腹をくすぐり…
へその辺りをゆっくりと撫でる。
それがひどくゾクゾクして…
じゅわり、と股が濡れた。
声を殺し、切なく眉を寄せて耐えているハルは、自分の反応を見てユキが微かに笑っているのに気付かない。ユキには、ハルがまるで愛部を受け入れ、その先を待っているように見えているというのに。
そしてそのまま手は、つつ…と上に滑り…
「…っ、待て……!」
その時、ユキの寝室のドアがバタン!と開いた。
「お二人とも…消灯時間はとうに過ぎております」
執事のセバスチャンだった。
夜闇に目が慣れているので、明かりが無くとも室内がよく見える。
敷き詰められた絨毯も、調度品も、一級品であるのがすぐに分かる。
この城の中でも、ランクが高い方の部屋のようだが…?
「…誰かいますかー…?」
こんな夜中に、アポもなく突然外から訪問してしまったら、さぞかし住人を驚かせてしまうに違いない。
ハルはおっかなびっくり声を掛けてみるが…
「誰かいますかーって、ここ俺の部屋だけど」
「わっ!?」
急に後ろから声を掛けられて、飛びずさって驚くハル。
人型に戻ったユキが、そこにいた。
いつの間に着替えたのか、今度は裸では無く、きちんと寝巻きを着ている。
「ハルって、いちいち驚くよね」
「だ、だ、だってお前足音聞こえねえし…!急に後ろに立たれたら、そりゃ誰だって驚くだろ!」
冷めたような視線を向けられ、ムッとするハル。
「足音?聞こえるでしょ、ほら」
ユキは壁際までスタスタと歩き、それからスタスタと戻ってくる。
「聞こえた?足音」
「聞こえるわけねえだろ!」
「ハルが耳が悪いの?それともニンゲンってみんなそうなの?」
「…ヒトの中ではおれはふつーだけど、哺乳類の中ではヒトは耳が悪い部類に入る」
「不便じゃない?」
「不便とは思ってない」
「ふうん…」
ユキは興味があるのか無いのか、気のない返事をして、ベッドへ腰掛けた。
その仕草に、ハルはドキリとする。
(まさかこいつ、自分の部屋に誘って、おれと寝るつもりか…?)
(いや、まさか…!おれの考えすぎだよな)
(出会ったばかりのオメガを、その日のうちにベットに誘うアルファが居てたまるかよ)
「っていうか、おれの部屋に案内して欲しいんだけど」
そう言った瞬間、ユキのモフモフ耳が寂しそうにぱたんと倒れた。
「なんで?一緒に寝ないの?」
「なんでって…友達でも何でもねえだろ」
「友達…ならいいの?」
「あ?」
ハルの服の裾を、ユキがぎゅっと握る。
寂しがり屋の幼子のような仕草に、またハルの心がずくんと疼いた。
「おれ、友達いないんだ」
「あ…マジ?」
「ずっとこの城にいたし…下の街に遊びに行っても、顔も匂いもバレてるから、みんな、王子様、王子様って」
「…そっか」
それは、何となく察せる。使用人や教師、庇護すべき国民はいても、心の友となる誰かがいなかったのだろう。
生まれながらに玉座を約束されている者の宿命なのだろうが…
淋しげに語るユキに、ハルは同情を感じてしまう。
「友達くらいなら、なってやってもいいけど」
「ほんと?」
ぱっと顔を輝かせるユキ。途端にモフモフの尻尾をぶんぶん振り回し、ハルを強引にベッドへ引っ張り込んだ。
「嬉しい!」
「わっ!この…!馬鹿力!!」
成人男性以上の力で抱き締められ、布団でもみくちゃにされ…
逃げようにも、逃げられない。
(ヤバ…!)
気付いた時には、両手首を押さえつけられ、ベッドに組み敷かれていた。
月明かりが窓から差し込む、薄暗い部屋。
ユキの寝巻きの胸元がはだけていて、ゾクリとするほど雄の色気を漂わせている。
獲物を捕捉したワーウルフの金色の眼が、キラリと光った。
「でも俺、欲張りだからさ…友達も、花嫁も欲しいんだよね」
ユキは自分の唇をぺろりと舐め、ハルの乱れた前髪を優しい手付きで直してやった。
肌をなぞるその指先がふいに耳に触れ、ハルは「っ…!」と息を飲む。
頬を上気させ、潤んだ目で見上げる仕草がどれだけ雄の劣情を誘うかーーハルは自覚していない。
蜂蜜のようにトロリとした色気のある声音。
それが甘い匂いを伴って、ハルの心の自由を奪っていく。
ユキの美しい顔には、ただでさえ惹きつけられるのに…男の色気まで出されてしまっては、抵抗のしようもない。
ほだされている内に、服の内側にひんやりした何か侵入してきて、ハルは飛び上がるほど驚いた。
「わ…っ!?」
「ハル、キスされるの嫌みたいだからさ、こっちから攻めようかなと思って」
「え…!?あ、ちょっと…!!」
服の裾から侵入してきたのは、ユキの手だった。
他人との肌との触れ合いに疎いハルは、急速で濃密な展開についていけず…目を白黒させてしまう。
「っん…!!」
「ここ、弱い?」
ひんやりした大きな手が、ハルの脇腹をくすぐり…
へその辺りをゆっくりと撫でる。
それがひどくゾクゾクして…
じゅわり、と股が濡れた。
声を殺し、切なく眉を寄せて耐えているハルは、自分の反応を見てユキが微かに笑っているのに気付かない。ユキには、ハルがまるで愛部を受け入れ、その先を待っているように見えているというのに。
そしてそのまま手は、つつ…と上に滑り…
「…っ、待て……!」
その時、ユキの寝室のドアがバタン!と開いた。
「お二人とも…消灯時間はとうに過ぎております」
執事のセバスチャンだった。
0
あなたにおすすめの小説
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
腐男子ってこと旦那にバレないために頑張ります
ゆげゆげ
BL
おっす、俺は一条優希。
苗字かっこいいだって?これは旦那の苗字だ。
両親からの強制お見合いで結婚することとなった優希。
優希には旦那に隠していることがあって…?
美形×平凡です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる