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出会い編
正門前の群衆
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「ワーウルフの王子様には婚約者がいるのか!」
「誰だろうね、きっと絶世の美女に違いない!」
「結婚式とか派手にやるんだろうなぁ」
「また資料が増えてしまいますな、ほっほっほ」
番組が終わると、楽しそうに感想を述べ合う研究室メンバー。
しかし、タチバナだけは腑に落ちていなかった。
ワーウルフの城から帰ってきたばかりのモリキ教授は、ニヤニヤと含み笑いをしてハルを見つめている。
そしてハルは、信じられないものでも見たかのように目を見開き、赤い頬を手で覆っている。
テレビは次の番組に映っている。
ワーウルフの王子が一目惚れした運命の相手って、まさか…?
タチバナは、嫌な予感に突き動かされ…
「おい、ちょっと来い」
「えっ…!?」
モリキ教授と研究室メンバーが、何だどうしたと目を向けるのに背を向け…
ハルの手を引っ張って、研究室を出た。
*
タチバナは焦っていた。
理由は分からない。今自分が掴んでいるオメガの手首が折れそうな程細いことだけは分かる。そして、自分がいつからこのオメガに執着しているのか、考えようとして…
「お、おいタチバナ、なんだよ」
ずんずん先を歩いて進むタチバナに手を引かれ、ハルは小走りである。アルファであるタチバナの方が体格も良く、歩幅も広い。
「どこ行くんだ、昼メシか?抜けるなら皆にちゃんと声掛けてから…」
「そんなんじゃねえ」
「じゃあ何だ、自販機か?あ、おれ財布置いてきちまったけど、お前の奢りっていうんなら…」
「そんなんじゃねえって!!」
タチバナは声を荒げてハルに向き合ったが…
それ以上言葉が出なかった。何を言いたいのか、何を伝えたいのか、タチバナ自身も分からなかった。
ハルは口をぽかんと開けて、タチバナを見上げた。
タチバナとは獣人類文化研究学部のモリキ研究室で何年も顔を合わせているが、こんなに激昂している姿を見るのは初めてだった。
「え……え?」
「俺は…!俺は………!!」
タチバナが何か言い掛けた時、窓の外から黄色い歓声が聞こえた。
*
歓声が上がったのは、大学キャンパスの正門の方からだった。
あの周辺は、授業が始まる前後には登下校する学生やたむろする生徒らで賑わう。今の時刻は講義の真っ最中のはずなので、あんなに人混みはできないはずなのだが…ざっと見ただけでも五十人程集まっている。何かイベントがあったか、それとも芸能人でも現れたか?そのレベルの賑わい方だった。
ハルとタチバナがいるのは研究室棟の三階である。
目を凝らしているうちに、人混みがこちらに近づいて来た。
「うげっ」
ハルは思わず呟いた。
人混みの中心に、一際目立つ長身。つんと尖った三角の耳。整った目鼻立ちは、これだけ距離が離れていても光る玉のように明らかだった。オーラが違う、その一言で全て説明できる。
突如キャンパスに現れた眉目秀麗なワーウルフをきゃあきゃあと追っているのは、ミーハーな女子生徒たち。
その周りを「ワーウルフのコスプレイヤーか?テレビか?芸能人なのか?」と様々な憶測を交わす男子生徒たちが囲っている。
それぞれ手に持ったスマートフォンで写真や動画を好き勝手に撮影しているらしい。
「…あいつまた騒動起こして…!」
「ハル?あれが誰か知ってんの?どっかのモデルか何か?」
タチバナは、まさかついさっきテレビで見たワーウルフの王子が、こんな所に来ているとは梅雨ほども思わず、とりあえずこの騒動に驚いている。
「ええと…」
どこから説明したものか。ハルが視線を窓の外に彷徨わせる……
「ねえ、ハルって子知ってる?」
その頃、正門前広場では、ユキが居合わせた女子生徒たちに絡んでいた。
イケメンが喋った!!!と黄色い歓声を上げながら、女子生徒たちが答える。
「ハル?苗字は?」「何学部?」「何年生?」「写真とかある?」
「獣人類文化研究学部。二年生。写真はこれ」
ユキが出したのは、モリキ教授が派遣調査隊員申告書で城に提出した書類…つまりハルの履歴書写真である。
「ふーん。分かんないけど、ジューブンなら向こうの研究室棟だよ」
「あたしたちが一緒に連れてってあげる!」
イケメンに沸く女子生徒たちを「ううん、だいじょぶ」と断り、ユキは教えられた研究室棟の方へ目を向け……
三階にいた、ハルとばっちり目が合った。
(ッやべ!!!!!)
ハルは瞬時に窓の下に隠れ、廊下に身を潜める。
「ハル?どうした?」
「しーっ!静かにしろ!」
何も知らぬタチバナがハルに声を掛け……
ワーウルフの鋭すぎる聴覚が『ハル』のワードと、ハルの微かな声を聞き逃す訳が無かった。
「…ちょっと退いて」
ユキは周囲にいた女生徒から離れると…
たんっ、と助走無しに地を蹴り、ふわりと宙に躍り出る。
その人間離れした跳躍力に、人混みからあっと声が上がった。
ワーウルフの常人離れした跳躍力を群衆に見せつけたユキは、研究室棟の三階の開いていた窓に手足を掛け…
「ふぇぇ……?」
廊下に隠れるようにへたり込んでいたハルと、再びバッチリと目が合った。
「誰だろうね、きっと絶世の美女に違いない!」
「結婚式とか派手にやるんだろうなぁ」
「また資料が増えてしまいますな、ほっほっほ」
番組が終わると、楽しそうに感想を述べ合う研究室メンバー。
しかし、タチバナだけは腑に落ちていなかった。
ワーウルフの城から帰ってきたばかりのモリキ教授は、ニヤニヤと含み笑いをしてハルを見つめている。
そしてハルは、信じられないものでも見たかのように目を見開き、赤い頬を手で覆っている。
テレビは次の番組に映っている。
ワーウルフの王子が一目惚れした運命の相手って、まさか…?
タチバナは、嫌な予感に突き動かされ…
「おい、ちょっと来い」
「えっ…!?」
モリキ教授と研究室メンバーが、何だどうしたと目を向けるのに背を向け…
ハルの手を引っ張って、研究室を出た。
*
タチバナは焦っていた。
理由は分からない。今自分が掴んでいるオメガの手首が折れそうな程細いことだけは分かる。そして、自分がいつからこのオメガに執着しているのか、考えようとして…
「お、おいタチバナ、なんだよ」
ずんずん先を歩いて進むタチバナに手を引かれ、ハルは小走りである。アルファであるタチバナの方が体格も良く、歩幅も広い。
「どこ行くんだ、昼メシか?抜けるなら皆にちゃんと声掛けてから…」
「そんなんじゃねえ」
「じゃあ何だ、自販機か?あ、おれ財布置いてきちまったけど、お前の奢りっていうんなら…」
「そんなんじゃねえって!!」
タチバナは声を荒げてハルに向き合ったが…
それ以上言葉が出なかった。何を言いたいのか、何を伝えたいのか、タチバナ自身も分からなかった。
ハルは口をぽかんと開けて、タチバナを見上げた。
タチバナとは獣人類文化研究学部のモリキ研究室で何年も顔を合わせているが、こんなに激昂している姿を見るのは初めてだった。
「え……え?」
「俺は…!俺は………!!」
タチバナが何か言い掛けた時、窓の外から黄色い歓声が聞こえた。
*
歓声が上がったのは、大学キャンパスの正門の方からだった。
あの周辺は、授業が始まる前後には登下校する学生やたむろする生徒らで賑わう。今の時刻は講義の真っ最中のはずなので、あんなに人混みはできないはずなのだが…ざっと見ただけでも五十人程集まっている。何かイベントがあったか、それとも芸能人でも現れたか?そのレベルの賑わい方だった。
ハルとタチバナがいるのは研究室棟の三階である。
目を凝らしているうちに、人混みがこちらに近づいて来た。
「うげっ」
ハルは思わず呟いた。
人混みの中心に、一際目立つ長身。つんと尖った三角の耳。整った目鼻立ちは、これだけ距離が離れていても光る玉のように明らかだった。オーラが違う、その一言で全て説明できる。
突如キャンパスに現れた眉目秀麗なワーウルフをきゃあきゃあと追っているのは、ミーハーな女子生徒たち。
その周りを「ワーウルフのコスプレイヤーか?テレビか?芸能人なのか?」と様々な憶測を交わす男子生徒たちが囲っている。
それぞれ手に持ったスマートフォンで写真や動画を好き勝手に撮影しているらしい。
「…あいつまた騒動起こして…!」
「ハル?あれが誰か知ってんの?どっかのモデルか何か?」
タチバナは、まさかついさっきテレビで見たワーウルフの王子が、こんな所に来ているとは梅雨ほども思わず、とりあえずこの騒動に驚いている。
「ええと…」
どこから説明したものか。ハルが視線を窓の外に彷徨わせる……
「ねえ、ハルって子知ってる?」
その頃、正門前広場では、ユキが居合わせた女子生徒たちに絡んでいた。
イケメンが喋った!!!と黄色い歓声を上げながら、女子生徒たちが答える。
「ハル?苗字は?」「何学部?」「何年生?」「写真とかある?」
「獣人類文化研究学部。二年生。写真はこれ」
ユキが出したのは、モリキ教授が派遣調査隊員申告書で城に提出した書類…つまりハルの履歴書写真である。
「ふーん。分かんないけど、ジューブンなら向こうの研究室棟だよ」
「あたしたちが一緒に連れてってあげる!」
イケメンに沸く女子生徒たちを「ううん、だいじょぶ」と断り、ユキは教えられた研究室棟の方へ目を向け……
三階にいた、ハルとばっちり目が合った。
(ッやべ!!!!!)
ハルは瞬時に窓の下に隠れ、廊下に身を潜める。
「ハル?どうした?」
「しーっ!静かにしろ!」
何も知らぬタチバナがハルに声を掛け……
ワーウルフの鋭すぎる聴覚が『ハル』のワードと、ハルの微かな声を聞き逃す訳が無かった。
「…ちょっと退いて」
ユキは周囲にいた女生徒から離れると…
たんっ、と助走無しに地を蹴り、ふわりと宙に躍り出る。
その人間離れした跳躍力に、人混みからあっと声が上がった。
ワーウルフの常人離れした跳躍力を群衆に見せつけたユキは、研究室棟の三階の開いていた窓に手足を掛け…
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廊下に隠れるようにへたり込んでいたハルと、再びバッチリと目が合った。
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