冒涜者 - 悪魔の子は神の使いを穢したい -

Neu(ノイ)

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序章:出逢い

神父見習いの場合 02

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僕は何故だか彼のことが気になって仕方がなかった。
弟に向ける親愛のような情を一方的に抱いていた。


 神父様も彼のことは気に掛けてはいた。
しかし、恐れも抱いているようだった。
彼に拒絶される度に、神父様はこう口にしていたからだ。

「まるで悪魔のようだ」

と。
神父様は顔色を無くして茫然と呟く。
彼を遠目から眺めていただけの僕には、まだその意味が理解出来ずにいた。


 ある日のことだ。
買い物帰りに彼を見掛けた。
道端にしゃがみ込み、頻りに地面を触っている。
僕は彼に近付いた。

「何をしているのですか?」

彼を見下ろす形で声を掛けると、彼の動きが止まった。
ゆっくりと僕を見上げて、彼は笑った。
僕は驚きに息を詰める。
初めてだったのだ、彼の笑顔を見るのが。

「ねえ、どうして殺してはいけないと言いながら、人は生き物を殺すの? 命は大切だと説いたその口で、命を奪っては其を食べるなんてさ、可笑しいとは思わない? 本当に神がいるんだったら、殺し合わずに済む世界を創れば良かったのにね。あんた等の世界は温くて綺麗事ばかりだから大嫌い」

鈴を鳴らしたような可愛らしい声を立てて、彼は笑顔のまま言い切った。
そして、彼は僕に向かい掌を翳す。
其処は黒い点で埋められている。
彼の足元を良く見ると、蟻の行列が並んでおり、黒い物体は蟻だと認識出来た。
僕は言葉を失う。
彼の台詞も行いも、全てがショックだった。
ふと、神父様の言葉が頭を過(よぎ)る。

「まるで悪魔のようだ」

当(まさ)にその通りだ。
無意識に後退る。

「俺は、神なんか要らない。だから、消えてよ。ねえ、お兄さん」

にこり、と彼の唇が弧を画く。
だが、目はちっとも笑っていない。
狂気すら孕んだ眼差しが僕を犯していく。
恐怖で体が震えた。
自然と涙腺が弛む。
目頭が熱くなった。
一体僕は何に恐れを抱いているのだろうか。
そんなことも解らなくなる。
ただ、とても悲しかった。
虚しかった。
彼の世界は、僕のいる所からでは手も届かないのだと、思い知る。
悪魔のようにも感じられるけれど、其はとても儚く脆い彼の心なのだ。
大切な、踏みにじってはならぬ想いなのだ。

「ご、めん……なさい。申し訳ありませっ、ん」

買い物袋が落下する。
どすん、と重たい音を立てた。
僕は地面に膝を着く。
怪訝な顔で僕を見る彼を、未だに掌を天に向けている彼を、必死で抱き締めた。
意味も解らずひたすらに謝罪する。
まだ体格の出来上がっていない華奢な体は抵抗をみせる。
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