SとKのEscape

Neu(ノイ)

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二章:悲劇の日から

記憶に取り残された幼馴染 02

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相反しているが、強さと弱さは表裏一体なのだろう。
自分にはないクロの強さに憧れることさえあった。
クロの弱さであれ愛しく思えるのだから、相当頭がイカれているのだろう。
彼が自分を頼ってくることが、何よりも嬉しくて優越感さえ抱く始末だ。
クロには自分しかいない。
ボクだけを頼ればいいのだと、独占欲とも取れる醜い感情ばかりが胸に巣食っている。
この気持ちに名前をつけてしまったら、もうクロとは友達でいられなくなるような気がして、自分がヤケに汚いもののように思えた。


 ボクは、クロを傷付ける人間とは違うのだと、思い込もうとして、奥底にあるドロドロとした醜悪な感情に気付かされる。
クロは、年を追う毎に、彼の母親にも父親にも、どちらにも似ていくのだ。
自分では生きていくことでさえ儘ならないクロを、愛しいと思ったその頭で、憎々しくて堪らないとも思う。
彼女を殺した男の息子など殺してしまえ、と何処かで囁く自分がいる。
高校生のボクは、クロへの複雑な感情に振り回されていた。
あの高校での出来事を境に、ボクの中でクロへの劣情が芽生えてしまったのだ。


* * * * * *


 時刻は既に18時を回り、外は薄暗い。
そんな中でボクは、知り合ってから初めて実家に上げたクロを介抱していた。
溜息を吐き出して、人のベッドで寝ている幼馴染を窺う。
ベッドのすぐ横に置いた椅子に座り、布団に包まれた彼を、ただ見詰めている。
彼は魘(うな)されていた。
苦し気に浅い呼吸を繰り返している。
小さく唇が動き、父さんやめて、と聞こえてきた。
嗚呼、夢を見ているのだと認識して、胸の奥深くにズシリと重りが増える。
ヤダヤダ、と呟きながら首を振るクロの額には、汗が浮かんでいる。
実の父親に、犯されている夢を、見ているのだ。
先程まで誰とも知らぬ男達に犯され、精液に塗れてドロドロになっていたと言うのに、彼はあの男の夢を見ている。
すっ、と腕が伸びる。
涙で濡れている彼の頬を、するりと撫でて、そのまま首元へと移した。


 起きたクロを、どう慰めようか考えていた自分が愚かしくて惨めで、どうしようもなく、怒りが湧いた。
このまま殺してあげた方が、彼も幸せなのではないかと。
身勝手な考えが浮かんで、首元の手が、クロの首を掴んだ。
力を込めようとした時だった。
クロが身動いで、覚醒の兆しをみせる。

「んぅっ……んん?」

ゆっくりと開いていく目蓋に、我に返り慌てて手を離した。
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