冤罪悪役令嬢はヤンデレ王太子に溺愛監禁される

三日月深和

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ストーカーと冤罪令嬢

いたずらされたお出迎え(2)

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「リリーナ…聴かせて?」

 囁く声がそれを加速させて、いっそ頭が爆発してしまいそうだ。しかしこの感情にまだ名前は付けたくない。

「す」
「す?」

「す、きでも嫌いでもありませんわ! 可も不可もありません!」

 林檎よりも顔を赤くして言うには些か説得力がないようにも思えるが、しかし思ったような返事は得れなかったのかディードリヒからは不満げな返事をされた。

「えー」
「えーもびーもありません! 帰ってきたところで仕事でもあるのでしょう? 早く机に向かって欲しいものですわ!」

 やや突き放すような言い方をするリリーナだが、添えられた言葉に現実を思い出したのかディードリヒは嫌々と言った様子で彼女を膝から降ろす。

「しょうがないなぁ」
「わかればいいのです、わかれば」

 何かほっとしたようなリリーナに、寂しげなディードリヒ。彼の様子に気が付いた彼女はその視線に素直な疑問を返した。

「どうかしまして?」
「…仕事中はリリーナに会えないから、寂しい」
「!」

 ディードリヒの言葉に、彼が城に帰ったあの大雨の日を思い出す。確かに構ってほしいと彼が発言してきたはいいが、“だからどうしろと”、という話題に決着がついていなかった。

「その件については、私はお茶会を提案したでしょう。貴方から何か意見はありませんの?」
「僕のベッドで一緒に寝て…」
「お断りします」
「じゃあ仕事してる間僕の膝に…」
「それでは仕事にならないでしょう」
「えー…意見出したのに」

 不機嫌に頬を膨らませるディードリヒにリリーナはため息が出てしまう。どうして彼が出してくる提案は過度な密着ばかりなのか。

「交流であれば良いのでしょう? なにも直に触れ合う必要があるのかしら?」
「間違ってないけど違うよリリーナ…」
「どういうことです?」
「僕はね、リリーナをもっと近くに感じたいんだ。それこそおはようからおやすみを過ぎてもリリーナを記憶して忘れたくない」
「…」
「でも仕事中はどうしてもそれが叶ってない…夜だってリリーナの睡眠を邪魔したくないし、この二つの案が良いと思う」
「帰って宜しいかしら?」

 世間一般の男性は仕事中に女性を連れ込んだりなどしないし、男性の寝所で夜を明かすなど結婚した夫婦でもないのだから、とそこまで考えてリリーナはディードリヒの発言に呆れた。

「もっと何かありませんの? 散歩に出ようとか、“秘密基地”で軽食を食べても良いですわね」
「そんな平和なことで解決してるなら誘拐と軟禁なんてしないんだよ」
「…貴方の倫理観が一番心配ですわ」

 とは言っても、と少し考える。

 相手も譲りたくないが自分も譲りたくない、では話が平行線になって進まなくなってしまう。ここは何か策を練らなければいけない。

 手持ちに良いカードがあるわけでもないし…と悩ませていると、彼の手がリリーナの頬に触れた。

「『頑張って』って」
「?」
「『頑張って』って言って?」
「…そんなことで宜しいんですの?」
「今は、ね」

 さっきまでの冗談が嘘のように、ディードリヒは寂しげな顔をする。その表情だけで名残り惜しいのだと伝わってきてしまって、“しょうがないな”などと考えてしまった。

 リリーナは頬に触れられた手に自分の手を添えると、ディードリヒと視線を合わせる。

「午後のお仕事が終わったらお茶会にしましょう。それまでやってみせなさい」
「リリーナ…」
「お、応援してますわ。頑張ってくださいな」

 最後は気恥ずかしくて視線が逸れてしまった。しかしそれでも良かったのかディードリヒはリリーナを強く抱きしめる。

「うん! リリーナ愛してるよ!!」

 喜びを隠さない声にさらに気恥ずかしくなる。顔が熱くなって少し慌ててしまった。見られていないのは不幸中の幸いである。

「は、早く行きなさい!」

 そうは言ったもののディードリヒは中々リリーナから離れようとせず、結局執事が迎えに来て引きずられて行った。

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