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18 気がついたら羞恥で見悶えていた
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「ブサイクなおまえを、オトモダチにしてあげるって? はっ、ずいぶんお偉いんだな」
桐生さんの瞳が憎悪に染まる。その中に、小さく傷ついたような色があって、自分が、選択も言葉も間違えたことに気が付いた。
「あっ、いやっ。そんなつもりじゃなくて」
彼を傷つけてしまったことに、血の気が引く。
指摘されるまで、上から目線だなんて全然気が付かなかった。
そりゃ、なるべく自由に生きたいし、監禁されるのなんて嫌だから、それを逃れるべく、生意気なことを言ったとは思う。
言葉どおり、普通に顔を合わせて、普通に会話ができるから、私がいいんでしょ、と思ったのもある。
でも、同情でも、ましてや施しでもなかった。
だって、私だよ? 自他ともに平凡で地味な私。
真っ当な世界なら――イケメンが正当に評価される世界なら、私なんて見向きもされないし、なんなら鼻で笑われる。私がどんなに好きなったって、相手にされない地味女。
ましてや顔を合わせた初日に、「俺のものになれ」なんて少女漫画みたいな展開、本来なら起こるわけがない。
結局ここが狂った世界で、私にとってのイケメンがめちゃくちゃ虐げられていて、そんなところで私がまっすぐに彼を見たから、見ることができたから、桐生さんの関心を引いたわけで。
そんなの「おもしれ―女」どころか、「溺れる者は藁をもつかむ」的な感じでしょ。
それにつけこんで、桐生さんとお付き合いするとか、どれだけ自分本位なの、って思うでしょ。
女が希少な世界で逆ハーレムされて「愛されて困っちゃう」とかいう勘違い女そのものでしょ。
そこまで考えて、ようやく気が付いた。
本当に本当に烏滸がましいんだけど、本当に厚かましいにもほどがあると思うんだけど――私が嫌だった。
この狂った世界で、ブサイクにやさしい女だから、なんてどうしようもない理由で選ばれるのが、嫌だった。
私だから好きになってほしい、なんて、そんな図々しいことを考えて、だから「友達ってやつ、やってみませんか(そうして私のことを知って、それから好きになってほしい)」なんて。
私、本当に恥ずかしい人間だ。
羞恥で転がりたくなる。
最低だ、何様なんだろう、私。
「うわ……」
いきなり顔を真っ赤にして、呻き出した私に、桐生さんも意表をつかれたのか、さきほどまで感じていた怒りを忘れたようにして、こちらを見ている。
「……なぁ、なんでいきなり赤くなってんの」
「いや……ちょっと自分の増長ぶりが恥ずかしくて」
「なんで」
掴まれたままだった右手首が離される。ちらっと見ると、彼が掴んでいたところが、真っ赤になっていた。
ひりひりと痛むそこに、彼がそっと指を這わせる。
ゆっくり。
その指の熱と、どこかぞわっとする感覚に、ますます顔が熱くなる。
その間も、彼の視線は一瞬たりとも私の顔から離れないのがわかる。
「なぁ……俺に触られて、赤くなってんの?」
ひえ、顔どころか、声までいい。
いつの間にかその声には愉悦が含まれている。
「誰もが俺を見て吐くのに、長時間見てると失神するのに、おまえは顔を赤くするのかよ」
クッと小さく笑う声が届いた。
指はゆっくりと、何度も私の手首を這う。
何度も、何度も。
そのたびに身体中が熱くなっていく。
彼のもう片方の手が、私の顎に触れ、顔の向きを変えさせる。
優しく、しかし強引に動かされた視線の先に、甘やかに笑う男がいた。
「なぁ、俺のものになれよ」
桐生さんの瞳が憎悪に染まる。その中に、小さく傷ついたような色があって、自分が、選択も言葉も間違えたことに気が付いた。
「あっ、いやっ。そんなつもりじゃなくて」
彼を傷つけてしまったことに、血の気が引く。
指摘されるまで、上から目線だなんて全然気が付かなかった。
そりゃ、なるべく自由に生きたいし、監禁されるのなんて嫌だから、それを逃れるべく、生意気なことを言ったとは思う。
言葉どおり、普通に顔を合わせて、普通に会話ができるから、私がいいんでしょ、と思ったのもある。
でも、同情でも、ましてや施しでもなかった。
だって、私だよ? 自他ともに平凡で地味な私。
真っ当な世界なら――イケメンが正当に評価される世界なら、私なんて見向きもされないし、なんなら鼻で笑われる。私がどんなに好きなったって、相手にされない地味女。
ましてや顔を合わせた初日に、「俺のものになれ」なんて少女漫画みたいな展開、本来なら起こるわけがない。
結局ここが狂った世界で、私にとってのイケメンがめちゃくちゃ虐げられていて、そんなところで私がまっすぐに彼を見たから、見ることができたから、桐生さんの関心を引いたわけで。
そんなの「おもしれ―女」どころか、「溺れる者は藁をもつかむ」的な感じでしょ。
それにつけこんで、桐生さんとお付き合いするとか、どれだけ自分本位なの、って思うでしょ。
女が希少な世界で逆ハーレムされて「愛されて困っちゃう」とかいう勘違い女そのものでしょ。
そこまで考えて、ようやく気が付いた。
本当に本当に烏滸がましいんだけど、本当に厚かましいにもほどがあると思うんだけど――私が嫌だった。
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私だから好きになってほしい、なんて、そんな図々しいことを考えて、だから「友達ってやつ、やってみませんか(そうして私のことを知って、それから好きになってほしい)」なんて。
私、本当に恥ずかしい人間だ。
羞恥で転がりたくなる。
最低だ、何様なんだろう、私。
「うわ……」
いきなり顔を真っ赤にして、呻き出した私に、桐生さんも意表をつかれたのか、さきほどまで感じていた怒りを忘れたようにして、こちらを見ている。
「……なぁ、なんでいきなり赤くなってんの」
「いや……ちょっと自分の増長ぶりが恥ずかしくて」
「なんで」
掴まれたままだった右手首が離される。ちらっと見ると、彼が掴んでいたところが、真っ赤になっていた。
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ゆっくり。
その指の熱と、どこかぞわっとする感覚に、ますます顔が熱くなる。
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「なぁ……俺に触られて、赤くなってんの?」
ひえ、顔どころか、声までいい。
いつの間にかその声には愉悦が含まれている。
「誰もが俺を見て吐くのに、長時間見てると失神するのに、おまえは顔を赤くするのかよ」
クッと小さく笑う声が届いた。
指はゆっくりと、何度も私の手首を這う。
何度も、何度も。
そのたびに身体中が熱くなっていく。
彼のもう片方の手が、私の顎に触れ、顔の向きを変えさせる。
優しく、しかし強引に動かされた視線の先に、甘やかに笑う男がいた。
「なぁ、俺のものになれよ」
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